- 著者
-
池田 恵子
- 出版者
- 静岡大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究は、日本における災害被害の男女差の実態を解明し、防災サイクルをジェンダー分析の手法により検討し、防災サイクルのジェンダー課題に関する情報を整理して提示することである。本年度は、昨年度の調査結果に基づいて、女性のおかれた状況(ライフサイクル、家族構成、ケア従事状況、年齢など)と災害の段階(緊急救援、生話再建・住宅再建、地域復興)の両方を考慮した、災害におけるジェンダー課題に関する分析マトリックスを作成した。それぞれの災害フェーズにおいてとりわけ脆弱性の高い女性はどのような女性であるか、特に重視しなければいけないジェンダー課題は何かを明らかにした。移住女性(非日本語話者)やセクシャルマイノリティーに関しては、情報が少なく、今後の災害におけるジェンダー課題の検討において、見落としがちになる可能性があり、注意を要することが把握された。これらの情報を基に、災害サイクル全体の実際的・戦略的ジェンダー課題を抽出し、ジェンダー課題が改善されるための条件を抽出した。都市部(神戸市)と農村部(長岡市)におけるジェンダー課題(とりわけ戦略的ジェンダー課題)の違いを分析した。これらのジェンダー課題に対処するために、防災行政や防災の自主組織において、どのような対策が取られているかについて、先進事例(大分県、横浜市、富士市など)の取り組みについて、まずは行政や市民団体の法令や行政措置に関する出版物などを収集し、不明な点に関しては担当部署に電話・電子メールにて確認し、災害におけるジェンダー課題に対応するために必要でかつ実行可能性が高い方策について検討した。