著者
海津 一朗
出版者
和歌山大学教育学部
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 人文科学 = Bulletin of the Faculty of Education, Wakayama University. 和歌山大学教育学部紀要委員会 編 (ISSN:1342582X)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.1-6, 2020-02

1980年代の中世社会史研究が、「近所の儀」「方角衆」など扱い衆による境界領域の裁定をめぐる自力救済慣行の発見に始まることは周知であろう(藤木久志・勝俣鎮夫の研究)。この組織と規範は中人制と概念化されるが、その扱い行為は「異見」「助言」など口入によって仲裁を行う「平和団体」と考えられてきた。このような中人制イメージは、自力救済社会の実像を忘れた現代人の偏見に由来する。ここでは、中世最後の一揆権力といわれる紀州惣国に取材して、地域紛争を解決する中人「噯衆」の組織と活動を明らかにする。それによって、日本中世社会の本質の一端に迫りうると考える。近郷合力の暴力連鎖が支配している過酷な地域社会に対して、惣国「噯衆」はいかに対処したのか。英訳を"共和国の平和維持軍"としたように、その結論はあまりにも意外なものである。
著者
西倉 実季
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 人文科学 (ISSN:1342582X)
巻号頁・発行日
no.71, pp.147-154, 2021-02-08

The purpose of this paper is to explain the problems revealed by the concept of 'lookism'and to explore the significant implications of this concept for studies on discrimination based on appearance. I classify the previous studies on lookism into three groups.The first group raises the issue that appearances are evaluated in situations where appearance should not be evaluated. The second group argues the disproportionate distribution of beauty by social categories such as race, class, and gender and so on. The third group shows that appearances valued in the labor market are organizationally constructed, focusing on 'aesthetic labour,' The results of my paper are as follows;the concept of'lookism'is used quite differently in general society and in academic research.It is therefore necessary to examine which of the above three groups is suitable for the use of 'lookism'in the general public.
著者
海津 一朗
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 人文科学 (ISSN:1342582X)
巻号頁・発行日
no.72, pp.131-139, 2022-02-09

Neither of the medieval hanging bells of Dojoji Temple and Doi Hachimangu Shrine remain on the site.The Dojo Hachimangu bell was moved to Kogenji Temple under the influence of the separation of Shintoism and Buddhism, while the Dojoji bell was transported to Myomanji Temple far away in Kyoto as a "cursed and unlucky bell". Moreover, the two bells were recast without retaining their original medieval form. I would like to explore the truth behind Manjumaru's Shohei Tokusei, or the Dojoji Revival, which was a frame of the Hidaka-gun Namboku-cho Civil War,from the perspective of the fishing bells that suffered a strange fate according to the medieval Dojoji legend. This paper is part of a regional contribution project to academically support Wakayama Prefecture's tourism events in 2021.
著者
海津 一朗
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 人文科学 (ISSN:1342582X)
巻号頁・発行日
no.71, pp.179-186, 2021-02-08

Following Kazuo Osumi's method of linking historical figures with the method of "like", a database of historical figures is created using the classical texts of Japan and China owned by Kodansha Gakujutsu Bunko (Academic Library,Kodansha Ltd.).It elucidates the self-perception of Japanese Japan as a miniature of the Han Empire through the cases of Emperor Temmu, Kiyomori Taira, and Emperor Godaigo who identified themselves as Liu Bang,Wang Mang, and Liu Shu.In addition to this,my paper pointed out the existence of 'like'due to the birth of the causal concept of retribution.This was a global transgender 'like'that transcended national and gender boundaries.The Japanese medievalists lived in such a world.
著者
海津 一朗
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 人文科学 (ISSN:1342582X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.81-86, 2018-01-31

所謂「元寇」「弘安の役」において高野山の住僧集団が博多志賀島に下向して異国降伏祈禱を行なったという南院浪切不動伝説についての言説を史料批判する。高野山には鎌倉幕府の出先機関・金剛三昧院があり、恩賞奉行の安達泰盛勢力はそこを拠点に対元戦争の戦争指導を行っていた。その中心人物こそ高野検校賢隆であり、彼が破格の出世を遂げた背景は、志賀島下向をおいてほかにはないことを論証した。志賀島の神戦は真実であった。
著者
丸山 範高
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 人文科学 (ISSN:1342582X)
巻号頁・発行日
no.72, pp.141-148, 2022-02-09

本研究の目的は、一人称の語り手が語る文学作品世界の臨場性・省察性・他者性を読者が俯瞰的・構造的・重層的に読み解くことの意義を明らかにすることにある。一人称の語り手「僕」が語る『刺繍する少女』は、当事者として出来事当時の感情が語られる世界、その出来事を語る現在において省察した世界、そして、語り手が語り得ていないながらも、ことばの仕組みから立ち上がる語り手の語りを超える世界、の三層によって作品世界が構成されている。そして、その作品世界の重層性を読み合わせると、「僕」と「彼女」と「母」と、登場人物それぞれの思いが交わることなく相互疎外状況にある世界が浮かび上がってくる。『刺繍する少女』は、一人称の語り手の恋愛経験を追想する作品ではなく、その恋愛経験から、登場人物同士の思いがすれ違っていく世界を描き出した作品と読めてくる。こうした文学作品の読みの研究は、読みの多様性ではなく、読みの拡張性を拓く研究として位置づけられる。
著者
丸山 範高
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 人文科学 (ISSN:1342582X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.1-9, 2018-02-23

本研究の目的は、高校国語科教師が教科内容観を拡張するプロセスについて、学校環境の異なる複数の教師間での共通性と個別性をふまえ、経験学習モデルを構築することにある。研究方法は、教師の語りを組織立てて概念化するナラティヴ・アプローチを採用した。教師自身の経験世界に迫るためには、教師の語りを分析対象とすることが適しているからである。分析の結果、教師間の共通性として、①教科内容観の拡張内容、②その拡張を促す内的要因の2点が、また、個別性として、①教師を取り巻く外的環境要因、②生徒が抱える課題、③教科内容観を授業展開する手立て、④授業改善に向けた今後の課題の4点が、それぞれ明らかになり、これらの要因の関係性を、教科内容観の拡張に関わる学習モデルとして構造化した。経験学習に関わる種々の先行研究では、経験の蓄積に伴う"拡張"イメージが具体化されていない、あるいは、個別領域ごとの専門的内容を反映した理念(観)との関係を中心に配置した学習モデルを描き出せていない傾向にある。そうした課題をふまえ、国語科教師の経験学習に関わる内容・方向性を具体化した点に本研究の特徴が見出される。

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著者
坂本 正雄[訳] 坂本 正雄
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 人文科学 (ISSN:1342582X)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.13-20, 2011-02