- 著者
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池田 浩一
野田 亮
大長光 純
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.84, no.4, pp.255-261, 2002-11-16
- 被引用文献数
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9
日林誌84:255〜261,2002 シカ糞の消失と糞の分解消失に及ぼす糞虫の影響を明らかにするため,1996年3月から1999年1月までのほぼ毎月,福岡県犬ヶ岳の森林に冷凍保存した排泄直後の糞を設置し,月ごとの糞の消失率を調べた。同時にシカ糞を入れたピットホールトラップを設置し,糞虫の発生消長を調べた。冷凍した糞と現地で採取した未冷凍糞の消失率の推移に有意差はなく,冷凍糞を用いた本研究の結果は自然状態での糞の消失実態を再現していると考えられた。消失率の推移は糞を設置した季節によって大きく異なリ,春から秋は最初の1ヵ月間で急速に消失したが,冬に設置した糞は緩やかに消失した。糞が急速に消失した季節はオオセンチコガネの,緩やかに消失した季節はチャグロマグソコガネの出現期間とほぼ一致していた。ほとんどの月では糞の消失率の推移に年間の違いはなかったが,3月,9〜11月に設置した糞では有意差がみられた。この違いは,糞虫の出現時期や活動性が気温の影響を受けるためと考えられた。糞虫が入れないようにした糞の消失率は自然状態の糞よりも極端に低かった。以上のことから,糞の分解消失には糞虫の活動が大きく関与していることが明らかになった。