著者
土肥 昭夫 篠崎 桃子 寺西 あゆみ 伊澤 雅子
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学総合環境研究 (ISSN:13446258)
巻号頁・発行日
pp.45-57, 2007-08

Leyhausen (1979) observed that feral cats gathered at regular gathering sites and only sat for a long time usually in the evening, and he named this curious cat behavior as "social gathering". Up to date, no one has studied and discussed on the "social gathering", that was considered to play on any role in the social systems of feral cats. We have frequently observed a number of the gatherings and the gathering sites of the feral cats lived in the campus of Nagasaki University. Nine of eleven gathering sites were used by the respective regular membership of the feral cats that shared a common home range regard as a rigid group territory. The spacing patterns of home range and the social systems were so similar with the group territory called the "feeding group", which was organized by the cats have a kin-relation (Izawa et al.1982) However, the "gathering group" in the campus widely differed from the "feeding group" in that the most of the member of a "gathering group" in the campus were originated by non-relation individuals, which sheltered into the campus from the surround urban districts and the high traffic density areas. Consequently, we found that the "social gathering" had filled an important role of accelerating to recognize and to accept each other as the member for the common group territory preservation.
著者
中西 希 伊澤 雅子 寺西 あゆみ 土肥 昭夫
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.39-46, 2010-05-30

1997年から2008年に交通事故に遭遇したツシマヤマネコ42個体(オス21個体、メス21個体)について、歯の萌出・交換状態と体サイズ及びセメント質年輪を用いて年齢査定を行い、交通事故と年齢の関係について分析した。また、栄養状態についても検討を試みた。交通事故遭遇個体の年齢は0歳から9歳であった。全体の70%以上が0歳で、2〜4歳の個体は確認されず、残り30%近くは5〜9歳の個体であった。交通事故の遭遇時期は、5〜9歳のオスでは2〜6月と9月であったのに対し、0歳のオスでは9月から1月に集中していた。0歳メスは11月に集中していた。0歳個体の事故が秋季から冬季に集中していたことから、春に生まれた仔が分散する時期に、新たな生息環境への習熟や経験が浅く、車への警戒が薄いため、事故に遭遇しやすいこと、また、分散の長距離移動の際に道路を横断する機会が増えることが要因と考えられた。栄養状態に問題のない亜成獣や定住個体が交通事故で死亡することは、個体群維持に負の影響を及ぼすと考えられた。
著者
伊澤 雅子 土肥 昭夫 小野 勇一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.373-382, 1982-09-30
被引用文献数
3

IZAWA, Masako, DOI, Teruo & ONO, Yuiti (Dep. Biol., Fac. Sci., Kyushu Univ.). 1982. Grouping patterns of feral cats (Felis catus) living on a small island in Japan. Jap. J. Ecol., 32 : 373-382. Range utilization and social relationship of feral cats (Felis catus) were investigated by direct observation and radio-tracking. The range structure of the feral cat in this study also resembled the pathnetwork systems described by HEDIGER. The range of cat was composed of three characteristic components such as a feeding site, resting sites and paths. Each cat used only one feeding site and did not switch it seasonally. The cats utilizing the same feeding site organized "feeding group". Synchronization of feeding activity and overlapping ranges of the members of the same feeding group were observed. These features of feeding group show the amicable relationship among the members. It was considered to result in the adaptation to clumped distribution of abundant food resource.
著者
馬場 稔 土肥 昭夫 小野 勇一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.189-198, 1982-06-30
被引用文献数
5

Home range and activity studies were carried out by radio-tracking and direct observation on nine giant flying squirrels. The radio-tagged animals utilized their home ranges heterogeneously, and heavily used areas corresponed with the patchy distribution of secondary forests which were the major food resources. Home ranges were considerably overlapped with one another especially at a shrine courtyard where nesting sites were clumped. Mature forest providing tree holes suitable for nesting appeared to be indispensable for their settlement. The range size varied from 0.46 to 5.16 ha. The shape and size of the range are considered to depend on the distributional pattern of food and nesting sites. Further, they occasionally shifted their heavily used areas, which suppsed to be caused by the local shifting of food availability. Their gliding ability directly connected patchily distributed resources by one or a few glidings. Thus, their heterogeneous utilization within their home ranges can be more easily investigated than any terrestrial mammals.
著者
山城 明日香 山城 考 土肥 昭夫 伊澤 雅子 遠藤 晃
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物保護 : Wildlife conservation Japan (ISSN:13418777)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.47-61, 2004-12-27
被引用文献数
1

The food habits of the Kerama deer (Cervus nippon keramae) were investigated on the basis of feeding mark observations in the field, as well as fecal analysis. The feeding mark investigation found 118 plant species were eaten by the Kerama deer: 7 ferns, 23 woody plants, 35 forbs, 42 graminoids (Gramineae, Cyperaceae), and 11 non-graminoid monocots. With graminoids, many feeding marks were found on young leaves and reproductive organs. In the fecal analysis, the proportions of five plant categories (ferns, woody plants, forbs and non-graminoid monocots) dominated throughout the year at forest site, but the proportion of graminoids varied according to season at the marsh site. At marsh sites, the proportion of graminoids began to increase in March and was highest in August. These results suggest that the Kerama deer selectively eat high quality parts of graminoids. On this point, food habits of Kerama deer are quite different from those of Sika deer populations in northern Japan, where the proportion of graminoids increases in winter due to the lack of food. The study concluded that the food habits of the Kerama deer were the concentrate selector (CS) type.
著者
安田 宣紘 阿久沢 正夫 冨宿 誠吾 松元 光春 阪口 法明 伊澤 雅子 岡村 麻生 土肥 昭夫
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.575-578, 1999-09-20

1996年1月~1997年12月にイリオモテヤマネコの死体3例を回収し, 生存2例を保護した. 死亡3例中2例は成獣で交通事故死, 1例は幼獣で他動物による咬傷死であった. 生存保護2例中1例は成獣で交通事故による重傷が治療により順調に回復した.他の1例は前記交通事故死例の子で, 西表野生生物保護センターで飼育, 順調に発育してラジオテレメトリー用電波発信器を装着, 放獣後3カ月に原因不明の死亡が確認された.
著者
安田 宣紘 阿久沢 正夫 冨宿 誠吾 松本 光春 伊澤 雅子 土肥 昭夫 鑪 雅哉
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.18-20, 2000-01-20
被引用文献数
1

1996年9月~1999年1月にツシマヤマネコの死体10例が, 長崎県対馬にある環境庁対馬野生動物保護センターに回収された. 死因は交通事故7例, 咬傷によるもの2例, 原因不明1例であった. 咬傷の原因は1例は不明であったが, 1例は犬によるものであった. 原因不明例には外傷はなく, 消化管内に多数の内部寄生虫が認められた.
著者
中西 希 伊澤 雅子 寺西 あゆみ 土肥 昭夫
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.39-46, 2010-05-30 (Released:2018-02-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

1997年から2008年に交通事故に遭遇したツシマヤマネコ42個体(オス21個体、メス21個体)について、歯の萌出・交換状態と体サイズ及びセメント質年輪を用いて年齢査定を行い、交通事故と年齢の関係について分析した。また、栄養状態についても検討を試みた。交通事故遭遇個体の年齢は0歳から9歳であった。全体の70%以上が0歳で、2〜4歳の個体は確認されず、残り30%近くは5〜9歳の個体であった。交通事故の遭遇時期は、5〜9歳のオスでは2〜6月と9月であったのに対し、0歳のオスでは9月から1月に集中していた。0歳メスは11月に集中していた。0歳個体の事故が秋季から冬季に集中していたことから、春に生まれた仔が分散する時期に、新たな生息環境への習熟や経験が浅く、車への警戒が薄いため、事故に遭遇しやすいこと、また、分散の長距離移動の際に道路を横断する機会が増えることが要因と考えられた。栄養状態に問題のない亜成獣や定住個体が交通事故で死亡することは、個体群維持に負の影響を及ぼすと考えられた。
著者
小野 勇一 伊澤 雅子 岩本 俊孝 土肥 昭夫 NEWSOME Alan KIKKAWA Jiro
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

代表者らのグル-プは,森林に起源を持つといわれている食肉目の社会進化を明らかにするために、これまでネコ科、特に小型種について研究を進めてきた。特に小型ネコ科の社会形態とその維持機構を、様々な環境で野生化したイエネコの研究によって明らかにしてきた。すなわち、小型ネコ科の社会の適応性は生息環境の資源量と強い関連性を持つことが示唆された。この適応性についての試論は国内では野生種の小型ネコ、イリオモテヤマネコとツシマヤマネコの調査によって、すでに検討を始めている。ネコ科の社会進化を論ずる上で、イエネコの人間社会と完全に隔離された自然状態での社会形態と、その起源種である野生種の小型ネコの社会形態と比較することは重要なポイントとなる。しかしながら、わが国において野生化したイエネコの生息域とその中の資源量は、ほとんどの地域で人間生活との関連が深く、完全に自然状態で野生化したイエネコの生息域はない。本研究では、オ-ストラリア大陸内部に人間社会の影響がほとんどない地域で野生化したイエネコを対象にして、その社会生態と環境資源利用の調査を実施した。オ-ストラリアには西洋人の入植以来200年間にイエネコが野生化し、現在では大陸のほとんどの地域に分布している。人間生活の影響をまったく受けない森林地帯・半乾燥地帯・砂漠などに生息している野生化したイエネコは、その始原種であるヤマネコと同様に、ハンティング(狩り)によって生活をしている。一方、この野生化したイエネコは、オ-ストラリア固有の貴重な動物相に重要な影響を及ぼしている。これらの固有種の保護のために、野生化したイエネコの生態学的調査も本研究の重要な課題のひとつである。調査は、ニュ-サウスウェルズ州のヤソン自然保護区で行った。この保護区内に調査地を設け、1988年と1989年の2年間に約12ヶ月間滞在して資料を収集した。調査地内のネコの大部分を補獲し、発信機あるいは耳環を装着して個体識別し、テレメトリ-法と直接観察によって行動が追跡された。この地域の野生化したイエネコは、年中ほとんどの餌を野生化したアナウサギに依存していることが明らかになった。このことから、2年目にはアナウサギの生態学的調査も行った。調査の結果は、完全な自然条件のもとで野生化したイエネコの社会形態の基本型は、小型ネコの野生種とほとんど変わらないこと、また生息地の資源量がその基本型の変異に強い影響を持つことが明らかとなり、研究グル-プの試論が証明される大きな成果が得られた。2年間に渡る継続した資料が得られたことから、調査地内のネコの定住性と分散過程の資料が得られ、哺乳類に頻繁に見られる「雄に偏よった分散」を実証でき、またその分散の要因が、定住雄の繁殖活動によることが観察によって明らかにされた。さらに分散が確められた個体の分散過程の資料も得られた。これらの結果は、ネコ科の社会形態の維持機構解明に重要な手がかりを与えるものである。次にこの地域の野生化したイエネコは年間の餌の大部分をアナウサギに依存していることから、単純な食う=食われる関係のもとに成り立っていた。このことからネコのホ-ムレンジの大きさは、餌資源の季節的な変化に対応して決定されること、またネコの繁殖も餌の利用しやすい時期と同調していることを用いて、食う=食われる関係のシュミレ-ションモデルが導かれた。また、保護区の鳥類相の調査も平行して行い、ネコによる被食の程度は、主な餌であるアナウサギの個体数が最も少なくなる厳冬季にはかなりの程度補食されていることが明かとなった。このことから、小型哺乳類の生息が少ない地域や季節には、野生化したネコのオ-ストラリア固有動相への影響は大きいことが示唆された。本研究で得られた研究結果は各分担者ごとにサブテ-マごとに論文として公表され、また全体的には報告書の形でまとめられた。この研究成果は、特にオ-ストラリアでこれまで大きな問題となっていた野生化したイエネコについて多くの新しい知見を与えるもので野生動物保護管理のうえで貢献するものと期待される。