- 著者
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江成 広斗
渡邊 邦夫
常田 邦彦
- 出版者
- 日本哺乳類学会
- 雑誌
- 哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.1, pp.43-52, 2015 (Released:2015-07-04)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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7
2014年5月に鳥獣保護法は改正され,増加傾向にある野生動物の捕獲事業は今後より重視されることとなる.戦後,ニホンザル(Macaca fuscata)は狩猟鳥獣から除外されたものの,農作物被害の軽減を目的に捕獲は増加の一途をたどっており,その数は2010年に2万頭を超えた.捕獲は被害対策のオプションとして以前から各地で採用されてきた一方で,その実態や有効性についてこれまでほとんど検証されてこなかった.そこで,これからのニホンザル捕獲施策の効果的な運用に資することを目的に,本種の捕獲を実施している全国の542市町村を対象に,現行の捕獲事業の実態とその有効性を評価するアンケートを2009年に実施した.回答数は366,回収率は67.5%であった.主な結果として,(1)特定鳥獣保護管理計画の策定割合が高い東日本を含め,多くの市町村で「有害鳥獣捕獲」による駆除が重視されている,(2)捕獲は市町村が主体となり猟友会に一任する構図が全国共通である,(3)曖昧な捕獲数の算定根拠が各地の市町村で散見される,(4)捕獲手法として銃の利用が全国共通で主流である一方,多頭捕獲が可能な中・大型罠による捕獲は近畿・東海・四国に限られる,(5)多くの市町村で捕獲効果の有効性について判定できておらず,その原因としてモニタリング体制の不備,及び捕獲目的の曖昧さが考えられる,(6)多頭捕獲を実施している市町村で被害軽減効果が実感されているケースがある一方で,多くの市町村で捕獲技術が普及していない,などが確認された.これらの結果をもとに,本稿ではニホンザル捕獲という対策オプションの今後の課題について考察した.