著者
池谷 真梨子 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.55-65, 2016 (Released:2016-02-20)
参考文献数
33
被引用文献数
2

本研究は手づかみ食べに関連する料理特徴について検討した. 手づかみ食べが最も多くみられる1か月間を後期, その直前2か月間を前期とした. 前期と後期の3か月間を合わせて手づかみ食べ発達時期とし, 前期と後期の料理特徴の差異について分析した. 対象は手づかみ食べ発達時期の乳幼児10名とした. 保育所の昼食時に週2回ビデオ観察を行った. 手づかみ食べ発達時期の手づかみ食べ頻度を料理区分別にみた結果,主菜が53.7±42.2%, 副菜が51.6±45.2%であり, それぞれ主食・汁物より有意に高かった. 次に, 主菜・副菜について前期と後期で手づかみ食べをする料理特徴を分析した. 前期は長さのみ (p<0.05), 後期は主材料の肉類 (p<0.05) ・調味における酢の使用 (p<0.01) ・調理法の揚げる (p<0.05) ・長さ (p<0.05) ・摂取率 (p<0.05) で有意差が認められた. 前期より後期で手づかみ食べに関連する料理特徴が多く認められたことから, 前期は料理特徴にあまり関係なく手づかみ食べをする時期であるのに対し, 後期は料理特徴が関係しやすい時期だと考えられた. さらに, 後期の手づかみ食べに関連する料理要因について二項ロジスティック回帰分析を行った結果, 調味の酢のみp=0.05であり, 手づかみ食べに関連のある要因は料理の要因だけではないことが示唆された.
著者
池谷 真 上谷 大介 趙 成珠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

腱・靭帯は再性能に乏しい組織であるため、障害が起こると放置しても治らない。iPS細胞などの幹細胞から腱・靭帯組織を誘導し、損傷部位を補填する方法が1つの手段として考えられるが、これまで腱・靭帯細胞を誘導するロバストな方法は存在しなかった。申請者らは2018年に、世界で初めてヒトiPS細胞から靭帯細胞の前段階の細胞である靱帯節細胞を誘導するプロトコールの開発に成功した。本研究は、この細胞を将来の再生医療に応用するため、目的外細胞の混入、誘導過程での動物由来成分の使用、生体内機能の証明といった課題を、科学的に克服する。
著者
池谷 真梨子 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.70-79, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
23

We carried out a survey, using a questionnaire, on the approaches being taken by nursery schools to infants' finger-feeding and on nursery school teachers' perspective on the importance of finger-feeding and related factors, in order to obtain basic materials which would assist in the promotion of infants' finger-feeding at nursery schools. The survey targeted nursery school teachers working at 1,627 nursery schools in Tokyo and the response rate was 37.1%.  Approximately 95% of the responding nursery schools are actively promoting finger-feeding. Nursery schools taking proactive approaches are encouraging cooperation among nursery school staff and are also actively providing assistance to infants' families.  Many of the nursery school teachers report that infants active in finger-feeding later become highly-motivated towards eating. The survey suggests that factors relating to finger-feeding include infants' interest in eating, how they are fed at home, forms of meals and infants' individual likes and dislikes.  From the above, we are of the opinion that in order to promote infants' finger-feeding at nursery schools it is critical that cooperation among nursery school staff be encouraged, that infants' interest in eating be fostered, and that cooking staff-including nationally-certified and other nutritionists-provide meals in forms which facilitate finger-feeding. Furthermore, we believe it is necessary for nursery schools to communicate the importance of finger-feeding to infants' families so that an environment at home can be developed where infants' finger-feeding is accelerated.
著者
池谷 真 ALEV CANTAS 太田 章 櫻井 英俊 森実 飛鳥 佐藤 貴彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

将来の再生医療や創薬研究に資する安全な間葉系幹細胞をiPS細胞から効率的に得る方法を確立するため、異なる3つの細胞系譜(神経堤細胞と神経細胞と中胚葉細胞)を経由して間葉系幹細胞を誘導するゼノフリーの方法の開発を行った。また、同一ロットの細胞を大量に得るため、中間段階の細胞の拡大培養・凍結保存法の開発を試みた。誘導された間葉系幹細胞の品質は、骨・軟骨・脂肪への分化能で比較・評価した。神経堤細胞と中胚葉細胞を経由した分化誘導法の確立に成功し、神経細胞を経由した分化誘導法の確立には一部成功した。拡大培養については神経細胞について成功し、神経堤細胞、中胚葉細胞、間葉系幹細胞については一部成功した。
著者
池谷 真梨子 Mariko Ikeya
出版者
和洋女子大学
巻号頁・発行日
2016-03-18

近年,保育所に通う乳幼児が増加している。乳幼児期は「食を営む力」の基礎を培う時期であることから保育所での食事提供の意義は大きい。手づかみ食べは「授乳・離乳の支援ガイド」で重要性が示されているが,限られた分野での研究しか見当たらない。 そこで本研究では手づかみ食べに着目し,手づかみ食べの発達過程とその関連要因を検討することを目的とした。保育所に通う乳幼児10名を対象とした週2回(計133回)のビデオ観察調査と給食で提供されている料理の分析,対象児の母親へのインタビュー調査および東京都認可保育所1,627園の保育士への質問紙調査(有効回収率37.1%)により分析を行った。関連要因は,料理および母親の手づかみ食べに対する考え方と食事場面における乳幼児への介助とした。 手づかみ食べの発達過程について,手づかみ食べを最も多くする月を基点とすることで手づかみ食べは約2か月で急激に発達し,その直後1か月で食具食べへ移行したため手づかみ食べは減少する発達過程の特徴が明らかとなった。さらに,手づかみ食べは自分で食べる行動を促す食行動であることが示され,手づかみ食べが乳幼児の食行動の発達の上での重要性が示された。加えて手づかみ食べが最も多くみられた後期1か月の手づかみ食べはその直前の前期2か月より料理による影響が大きいことが示された。後期において主材料の肉類・調味料の酢・調理法の揚げる・食べ物の長さ・摂取率の項目で手づかみ食べをした料理としなかった料理の有意差が認められ,手づかみ食べに料理の大きさや乳幼児自身の嗜好が関連していることが示唆された。 一方,手づかみ食べの発達過程の類型と母親の手づかみ食べに対する考え方および食事場面における乳幼児への介助との関連性を検討した結果,手づかみ食べを多くしている乳幼児の母親は少ない児の母親に比べて手づかみ食べに積極的であり,乳幼児が主体的に食べる食環境を作っていた。これより,手づかみ食べの発達過程の違いの要因として,家庭での食事介助が示唆された。 本研究は保育士の乳幼児や保護者への対応および管理栄養士・栄養士を含めた調理従事者への情報提供への研究展開が期待できる。