著者
高橋 ひとみ 佐治 伸郎 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.315-325, 2018 (Released:2018-12-17)
参考文献数
39

本研究は,調理の初心者と熟練者の調理行動を分析し,調理操作,調理の段取りの特性を明らかにすることを目的にした。豚肉のしょうが焼き,ほうれん草のお浸しの2品の組み合わせを2回連続して調理させ,1回目調理と2回目調理の差を検討した。 調理操作で初心者と熟練者で有意差がみられた項目は,全調理時間,レシピを見た時間,レシピを見た回数,総移動距離,キャベツせん切り時間とせん切り太さ,ほうれん草の加熱時間,及び仕上がりの硬さであった。 調理の段取りでは,初心者の1回目調理は,レシピの提示順に則った段取りであった。一方,熟練者は時間のかかる操作を先にした効率のよい段取りを導きだすことができた。初心者も2回目調理では,熟練者の段取りに近づいた。 すなわち,段取りの策定に関しては,自ら調理することは,1回の経験でも学習効果が得られることが示された。
著者
林 知子 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.299-305, 2004
被引用文献数
3

動作解析法を用いて,調理技術の習得度の違いにより「輪切り」の包丁の動きにどのような差が生じるのかを検討した. 試料はきゅうり,人参を用い,試料の違いによる包丁の動きの差についてもあわせて検討し,以下の結果を得た. (1) 熟練者群と非熟練者群を比較すると,包丁の持ち方には大きな違いはなく,ほとんどが全握法と卓刃法であったが添え手には大きな違いがあり,熟練者群全員に添え手があるのに対して非熟練者群は半数に添え手がなかった. また明らかに非熟練者群は3切れ分の所要時間が長く,仕上がった輪切りの試料は厚く不均等であった. (2) 非熟練者には包丁の上下,前後方向に細かい動き及び,試料を切って包丁を持ち上げる時に右側に大きく動く動作が認められた. また,まな板平面に対する包丁腹面角度にばらつきが見られ,全体を通して包丁の動きが極めて不規則であった. (3) 試料聞の差を分析した結果,厚さや所要時間に差が見られたが,包丁の最大切り下ろし速度,角度の平均値には差がなかった. ただし,熟練者でも人参では切り下ろす時にギザギザとした動きが見られた.
著者
池谷 真梨子 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.55-65, 2016 (Released:2016-02-20)
参考文献数
33
被引用文献数
2

本研究は手づかみ食べに関連する料理特徴について検討した. 手づかみ食べが最も多くみられる1か月間を後期, その直前2か月間を前期とした. 前期と後期の3か月間を合わせて手づかみ食べ発達時期とし, 前期と後期の料理特徴の差異について分析した. 対象は手づかみ食べ発達時期の乳幼児10名とした. 保育所の昼食時に週2回ビデオ観察を行った. 手づかみ食べ発達時期の手づかみ食べ頻度を料理区分別にみた結果,主菜が53.7±42.2%, 副菜が51.6±45.2%であり, それぞれ主食・汁物より有意に高かった. 次に, 主菜・副菜について前期と後期で手づかみ食べをする料理特徴を分析した. 前期は長さのみ (p<0.05), 後期は主材料の肉類 (p<0.05) ・調味における酢の使用 (p<0.01) ・調理法の揚げる (p<0.05) ・長さ (p<0.05) ・摂取率 (p<0.05) で有意差が認められた. 前期より後期で手づかみ食べに関連する料理特徴が多く認められたことから, 前期は料理特徴にあまり関係なく手づかみ食べをする時期であるのに対し, 後期は料理特徴が関係しやすい時期だと考えられた. さらに, 後期の手づかみ食べに関連する料理要因について二項ロジスティック回帰分析を行った結果, 調味の酢のみp=0.05であり, 手づかみ食べに関連のある要因は料理の要因だけではないことが示唆された.
著者
池谷 真梨子 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.70-79, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
23

We carried out a survey, using a questionnaire, on the approaches being taken by nursery schools to infants' finger-feeding and on nursery school teachers' perspective on the importance of finger-feeding and related factors, in order to obtain basic materials which would assist in the promotion of infants' finger-feeding at nursery schools. The survey targeted nursery school teachers working at 1,627 nursery schools in Tokyo and the response rate was 37.1%.  Approximately 95% of the responding nursery schools are actively promoting finger-feeding. Nursery schools taking proactive approaches are encouraging cooperation among nursery school staff and are also actively providing assistance to infants' families.  Many of the nursery school teachers report that infants active in finger-feeding later become highly-motivated towards eating. The survey suggests that factors relating to finger-feeding include infants' interest in eating, how they are fed at home, forms of meals and infants' individual likes and dislikes.  From the above, we are of the opinion that in order to promote infants' finger-feeding at nursery schools it is critical that cooperation among nursery school staff be encouraged, that infants' interest in eating be fostered, and that cooking staff-including nationally-certified and other nutritionists-provide meals in forms which facilitate finger-feeding. Furthermore, we believe it is necessary for nursery schools to communicate the importance of finger-feeding to infants' families so that an environment at home can be developed where infants' finger-feeding is accelerated.
著者
柳沢 幸江 ヤナギサワ ユキエ Yukie YANAGISAWA
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
no.43, pp.193-202, 2003-03-31

ゴールデンキウイはキウイ特有のプロテーゼ活性が極めて低いことから、従来のグリーンキウイと比較してのゼラチンゼリー形成を検討した。ゴールデンキウイの果実の食味特性は、従来のグリーンキウイと比べてpHと糖度には有意差はなかったものの、甘味と酸味のバランスがよくえぐみが少なかった。ゼリー形成では、グリーンキウイを用いた果汁ゼリーでは果汁濃度1.5%までしかゼリー形成しなかったのに対して、ゴールデンキウイでは、果汁濃度が50%でもゼリー形成が充分可能であり、ゼリー形成に対する作用は双方に約40倍の差が認められた。また、果肉ゼリーの場合でもゴールデンキウイを50%添加してもゼリー形成が可能であった。官能評価の結果、果汁・果肉ゼリーとも30%程度の添加が、テクスチャー・味の両面から好まれた。
著者
高井 郁子 柳沢 幸江 村田 安代 寺元 芳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.307-314, 1993-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
16
被引用文献数
3

鶏肉の水煮における, 加熱開始温度と加熱終了温度の相違が物性, 食味におよぼす影響を明らかにするため, 鶏肉および煮汁の呈味成分の消長, テクスチャー特性について調べた.また官能検査を行い呈味成分, テクスチャーとの関係を考察した.(1) 実験11) 水煮した鶏肉のかたさには, 水から煮ても, 熱湯に入れて煮ても, 加熱開始温度の影響はなかった。2) 本報の実験条件では, 熱湯に入れて煮た方が若干, 肉中, 煮汁中の5'-IMP量が多く, 官能検査の結果も, 熱湯に入れて煮た方が, 肉にうま味があり, 好ましい傾向がみられた.煮汁も熱湯に入れて煮た方が, うま味を多く感じていた.(2) 実験21) 加熱終了温度の違いによる核酸関連物質, 遊離アミノ酸の消長はほとんどみられなかった.しかし, 呈味に関与しているといわれているタウリン, アンセリンは加熱により徐々に煮汁中に溶出した.2) 官能検査の結果, 本報の実験条件では, 加熱終了温度90℃ (23分加熱) の肉がやわらかく, しっとりとして総合的に好ましいという評価を得た.実験1, 2の結果より鶏肉の水煮は, 本実験条件では肉の呈味成分の消長はあまりみられず, 肉のかたさ, パサつきなどの物性面への影響が多いと考えられた.加熱方法としては熱湯に肉を入れ内部温度80~90℃になるまで加熱する方法が望ましいといえる.
著者
柳沢 幸江 田村 厚子 寺元 芳子 赤坂 守人
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.74-84, 1989-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
32
被引用文献数
10

様々な咀嚼機能を持った個々の人間にとって,より好ましい食物物性の在り方を探るために,物性と嚼咀の相互関係を捉えてきた。本研究は咀嚼筋活動量による食物分類を作ることを目的に,まずテクスチュロメーターにより測定した食物物性から咀嚼筋活動量を推定する方法を検討した。咀嚼筋活動量は筋電図による咀嚼筋の活動量から求めた。被検者は正常咬合者である成人男女各10名ずつで,咀嚼開始から嚥下開始までの咀嚼筋活動量を左右の閉口筋3筋について計測した。回帰分析を用いて食物物性値と咀嚼筋活動量の対応性を分析し,その結果をもとに咀嚼筋活動量による食物分類を行った。得られた結果を以下に示す。1)3種のテクスチャーパラメーター即ちかたさ・凝集性・ひずみを用いることによって,高い精度で咀嚼筋活動量を推定することができた。2)テクスチャー測定値を用いた推定方法から,食物物性が既知である144種の食物の咀嚼筋活動量を明らかにした。3)食物を咀嚼筋活動量のレベルにより10ランクに分類することができた。また,「物性による食物分類」に咀嚼筋活動量の尺度を加えることができた。
著者
高橋 ひとみ 柳沢 幸江
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.194, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】調理技能レベルの異なる熟達者と初心者の調理行動を分析し、技能、調理操作、調理の段取りの相違点を明らかにすること、また同じ料理を繰り返し作ることによって起こる調理行動の変化をとらえることを目的とした。さらに、熟達者と初心者の知識獲得の違いから考察を行った。【目的】対象者は、熟練者として栄養士免許等を持つ女性8名と初心者として調理経験が少ない女子大学生8名とし、豚肉のしょうが焼き(つけあわせ・せん切りキャベツ)、ほうれん草のお浸しの2品を2回調理した。調理行動は総移動距離、ゆで時間等の調理操作の時間を求め、できあがった料理の肉、ほうれん草の硬さやキャベツなどの形状を測定した。さらに、対象者に半構造的インタビューを行い、知識・意識の分析を行った。【結果】熟達者と初心者で有意差がみられた項目は、調理時間、レシピを見た時間、総移動距離、キャベツのせん切り時間、キャベツのせん切り太さ、ほうれん草のゆで時間、ほうれん草の硬さの項目であった。キャベツの太さは、熟達者では1回目、2回目調理でほとんど変化がないが、初心者は1回目4.67mm、2回目調理3.96 mmと有意に細くなった。初心者は「気づき」(メタ認知)が起こり、太さに変化が起きたが、せん切りの時間が長くなった者が多く、技能が身についたとは考え難い。お浸しのほうれん草も初心者は、軟らかいという「気づき」はあったものの、ゆで時間など調理操作の変更し、硬さを変えることはなかった。また、調理操作を12ブロックの段取りにまとめ分析した。熟達者は1回目、2回目調理でほとんど変化がなかった。初心者は1回目調理の段取りはレシピに記載の順で行った者が多かったが、2回目調理では、より効率的で、料理がおいしく仕上がる熟達者の段取りに近づいていった。
著者
柳沢 幸江
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.193-202, 2003-03-31

ゴールデンキウイはキウイ特有のプロテーゼ活性が極めて低いことから、従来のグリーンキウイと比較してのゼラチンゼリー形成を検討した。ゴールデンキウイの果実の食味特性は、従来のグリーンキウイと比べてpHと糖度には有意差はなかったものの、甘味と酸味のバランスがよくえぐみが少なかった。ゼリー形成では、グリーンキウイを用いた果汁ゼリーでは果汁濃度1.5%までしかゼリー形成しなかったのに対して、ゴールデンキウイでは、果汁濃度が50%でもゼリー形成が充分可能であり、ゼリー形成に対する作用は双方に約40倍の差が認められた。また、果肉ゼリーの場合でもゴールデンキウイを50%添加してもゼリー形成が可能であった。官能評価の結果、果汁・果肉ゼリーとも30%程度の添加が、テクスチャー・味の両面から好まれた。
著者
渡邊 智子 梶谷 節子 中路 和子 柳沢 幸江 今井 悦子 石井 克枝 大竹 由美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

<b>【</b>目的<b>】</b>『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じて聴き取り調査を行い,昭和35~45年頃までに残されて次世代に伝え継ぎたいと対象者が考えている家庭料理を収集した。ここでは,各地域のおやつについてその特徴を報告する。<br /><b>【方法】</b>千葉県の9地域(利根川流域,北総台地,東京湾奥,九十九里海岸,内房・館山地域,北総台地,房総湾奥部海岸地域,船橋地域)について聴き取り調査研究を行った。各地域のおやつついて,日常のおやつとハレのおやつに区分して検討した。<br /><b>【</b>結果<b>】</b> 日常のおやつは,食材の宝庫である千葉県の特徴を生かした生鮮果実(すいか,いちご,びわ,柿:房州海岸,柿,びわ,すいか:内房・館山地域,柿,りんご,みかん:北総台地),乾果実(柿:房州海岸・館山地域・北総台地)がみられた。幕張はさつまいも栽培が始まった地域であるが,さつまいももふかす,干しイモ,いも餅,芋羊羹として5地域で食べていた。米を用いたおやつには,おにぎり,ぼたもち,あられ,かきもち,すいとん,せんべい,もち草だんご,ポン菓子,性学(せいがく)もち(つきぬき餅:うるち米が原料)として全地域で食べられていた。てんもん糖(しょうが,ふき)は,北総台地や九十九里で食べていた。その他,パン,そばがき,うに,あけび,かき氷など多様なおやつを食べていた。<br /> はれのおやつは,ぼたもちが主で,重箱にごはん,あんこを順番に入れる作り方(北総台地・船橋地域)もあった。たまご寒天(九十九里海岸)は,寒天の中に黄色の卵が入り華やかなお菓子であった。他には,おしるこ,甘酒,赤飯,五目飯,餅菓子も食べた。<br />千葉県のおやつは,千葉県で採れる豊かな食材を家庭で料理したものがほとんどであった。