著者
橋本 孝太郎 佐藤 一樹 河原 正典 鈴木 雅夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-48, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2

【目的】在宅緩和ケアを受けた終末期独居がん患者の実態と,自宅死亡の関連要因を明らかにすること.【方法】2013年6〜11月末までに在宅特化型診療所17施設の診療を受けたがん患者1032名を対象に診療録調査を実施し独居群・非独居群間で背景や転帰,利用したサービスや医療内容を比較し,独居群の自宅死亡の関連要因を探索した.【結果】独居群は,高齢であり,診療開始時の全身状態が良く,看取りの場所は自宅以外を希望し,社会的問題による入院が多かった.独居群の自宅死亡の関連要因は,別居の家族が自宅死亡を望んでいる(オッズ比(OR)=14.0),診療開始時の全身状態不良(OR=4.0),在宅診療中の入院歴なし(OR=16.6)であった.【結論】終末期独居がん患者の自宅死亡には別居の家族の希望,診療開始時の全身状態,診療中の入院歴が関連していたことが明らかとなった.
著者
諸岡 了介 相澤 出 田代 志門 桐原 健真 藤本 穣彦 板倉 有紀 河原 正典
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究プロジェクトでは、ケア実践との関連において現代日本における死生観の実態を明らかにすべく、各種の質的調査や、思想史的・宗教史的考察、海外事情の研究といった分担研究を集約しながら、在宅ホスピスを利用した患者遺族を対象とした大規模な調査票調査を実施した。調査票調査では、宮城県・福島県における在宅ホスピス診療所6カ所の利用者2223名に依頼状を送付して、663通の回答が得られた。その分析から、在宅療養時の患者や家族の不安感やニーズの詳細とともに、宗教的関心に経済的・社会的関心が絡み合った死生観の具体相が明らかにされた。
著者
河原 正典 岡部 健
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.133-142, 2011 (Released:2011-08-08)
参考文献数
7
被引用文献数
1

アセトアミノフェン(APAP)は, WHO方式がん疼痛治療法の中で非オピオイド鎮痛薬の選択肢の1つに位置づけられているが, わが国において, その有効性や安全性を検討した報告は少ない. われわれは, 当院で非オピオイド鎮痛薬として, 世界標準量のAPAP (1,800~2,400mg/日)を使用した182例(APAP群)と非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を使用した86例(NSAIDs群)を比較することで, オピオイドとの併用も含めたがん疼痛管理における世界標準量APAPの有効性と安全性について後ろ向きに検討した. 疼痛管理状況はAPAP群とNSAIDs群で同等であった. オピオイドなどの併用薬剤についての検討が不足しているものの, がん疼痛治療における非オピオイド鎮痛薬としての世界標準量APAPは, 有効性の点でNSAIDsに劣らない結果が得られた. また, 安全性に関するAPAP群とNSAIDs群の比較では, 嘔気の発現頻度はAPAP群が有意に低く(p<0.01), AST・ALTが基準値の2.5倍を超えた患者の割合は両群同等であった. 有効性と安全性に関する以上の結果から, わが国においても世界標準量APAPは, がん疼痛治療における非オピオイド鎮痛薬の有用な選択肢の1つになると考えられた. Palliat Care Res 2011; 6(2): 133-142