著者
桐原 健真
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、18世紀末から19世紀中葉にかけて「帝国」ということばを用いた日本知識人における自他認識の転回に光をあてることである。「帝国」は古典的な漢語ではなく、18世紀末に蘭学者が、オランダ語keizerrijkから翻訳した新しいことばである。日本知識人の多くは、「帝国」のステータスを、「王国」や「公侯国」といった他のいかなる君主国よりも優越していると考えた。儒学的教養を身につけたこれら知識人は、「皇帝」が他の君主たちよりも優越していることを知っていたので、彼らは、中国古典に見いだせないこの新奇なことばを、たやすく受け容れることができたのである。彼らにとって幸いであったのは、ヨーロッパにおいて刊行された多くの地理書が、「日本は帝国である」と叙述していたことである。翻訳書を含むこれらの書籍おいて、こうした記載を読んだ日本知識人は、日本の優越性と独立性を確信するようになった。日本排外主義が、海外の書籍によって形成されたことは、まことに皮肉であったと言える。
著者
諸岡 了介 相澤 出 田代 志門 桐原 健真 藤本 穣彦 板倉 有紀 河原 正典
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究プロジェクトでは、ケア実践との関連において現代日本における死生観の実態を明らかにすべく、各種の質的調査や、思想史的・宗教史的考察、海外事情の研究といった分担研究を集約しながら、在宅ホスピスを利用した患者遺族を対象とした大規模な調査票調査を実施した。調査票調査では、宮城県・福島県における在宅ホスピス診療所6カ所の利用者2223名に依頼状を送付して、663通の回答が得られた。その分析から、在宅療養時の患者や家族の不安感やニーズの詳細とともに、宗教的関心に経済的・社会的関心が絡み合った死生観の具体相が明らかにされた。