著者
岡部 健一
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.225-228, 2023 (Released:2023-05-01)
参考文献数
3

本稿では一般内科医が行う吃音臨床を紹介する.筆者は自身が吃音者であり思春期以降,発語に対する不安と戦ってきた.自律訓練法や民間の吃音矯正所・連想療法・入院森田療法など思いつく限りの改善策を学生時代に試したが吃音自体を解消するものはなく,吃音の自助団体である全国言友会連絡協議会の活動の中で年月をかけて吃音では困らなくなった.内科医師として勤務しつつ2016年に念願の吃音相談外来を開設した.多くの吃音者と出会い「ありのままの自分を愛して,できないことは受け入れる」姿勢が大事だということを確信した.吃音には自分ではどうしようもない波とぶり返しがある.成人になってからではきわめて改善が困難であることから,小中学生以下ではいかに吃音を悪化させないようにするかに主眼を置くようになった.症状の程度にかかわらず社会的に困っていれば合理的配慮が受けられ,障害者手帳や年金受給も取得できる時代になってきたので,治すことばかりにとらわれず,吃音をもったままで生きていくことを勧めるようにしている.治さない,頑張らないことにシフトするとかえって吃音症状が改善することは多い.本稿を通じて吃音臨床に関心をもつ医師が増え,吃音患者がいつでもどこでも外来受診できる日が来ることを願っている.
著者
岡部 健
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.5-14, 2010-07-16 (Released:2014-02-07)
参考文献数
10
被引用文献数
3

爽秋会岡部医院は1997年の開院以来,WHOの提唱する緩和ケアの理念を達成するべくチームケアのモデル開発を行なってきた.患者・家族の希望を満たしつつ,QOLサポートを進めるなかで,医療・介護・スピリチュアリティ等を支える多職種の専門職集団(医師,看護師,薬剤師,ソーシャル・ワーカー,介護士,作業療法士,鍼灸師,チャプレン・臨床心理士)を形成するに至っている.このチームで現在年間約300名のがん患者を自宅で看取っており,在宅における看取り率も8割を超えている. 本稿では,在宅緩和ケア医としてのこれまでの私の経験をもとに,爽秋会で行ってきたモデル形成を紹介し,そのうえで,現在,在宅緩和ケアが直面している課題を提示することにしたい.結論としては,看取りの問題は医療の再構築だけでは解決することが困難であり,社会システム全般の再構築を必要としており,そのためには社会科学的な観点からの分析が必要不可欠であることを示す.
著者
長島 康之 岡部 健 八田 峰夫 杉村 久雄
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.1562-1567, 1989-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
11

住民検診で発見された胸部腎の1例を報告した. 37歳の家婦で, 自覚症状はない. 胸部X線写真上, 右横隔膜上に半球状の陰影を認め, 造影CTにて右腎を確認した.両腎動脈は正常位から分岐し, 右腎動脈は上方へ直線的に挙上していた. その他の合併奇形は認めなかった. 胸部腎は自覚症や機能異常をともなうことは少なく, 画像検査の発達した今日, 診断は容易ではあるが, 発育異常の観点から合併奇形の検索は不可欠である.
著者
吉田 功 勝枝 嶺雄 大高 成雄 丸山 泰男 岡部 健明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.422-429, 1993-11-25
被引用文献数
13

移動無線用電力増幅器に使用可能な低電圧・高効率のSiパワーMOSFETを開発した.主要な特性改善点は,サブミクロン金属ゲート構造と自己整合ドレーンコンタクト構造との組合せによるオン電圧の低減,遮断周波数の向上,出力容量の低減である.その結果,従来に比べ10%以上の付加効率の向上が図れ,1.5GHzでは出力電力1Wで付加効率60%が得られた.またディジタル変調時の50kHz離調・隣接チャネル漏洩電力50dBc,出力電力0.8Wで付加効率は53%であった.これにより,SiパワーMOSFETがUHF帯において良好な線形電力増幅特性を有することを明らかにした.
著者
河原 正典 岡部 健
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.133-142, 2011 (Released:2011-08-08)
参考文献数
7
被引用文献数
1

アセトアミノフェン(APAP)は, WHO方式がん疼痛治療法の中で非オピオイド鎮痛薬の選択肢の1つに位置づけられているが, わが国において, その有効性や安全性を検討した報告は少ない. われわれは, 当院で非オピオイド鎮痛薬として, 世界標準量のAPAP (1,800~2,400mg/日)を使用した182例(APAP群)と非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を使用した86例(NSAIDs群)を比較することで, オピオイドとの併用も含めたがん疼痛管理における世界標準量APAPの有効性と安全性について後ろ向きに検討した. 疼痛管理状況はAPAP群とNSAIDs群で同等であった. オピオイドなどの併用薬剤についての検討が不足しているものの, がん疼痛治療における非オピオイド鎮痛薬としての世界標準量APAPは, 有効性の点でNSAIDsに劣らない結果が得られた. また, 安全性に関するAPAP群とNSAIDs群の比較では, 嘔気の発現頻度はAPAP群が有意に低く(p<0.01), AST・ALTが基準値の2.5倍を超えた患者の割合は両群同等であった. 有効性と安全性に関する以上の結果から, わが国においても世界標準量APAPは, がん疼痛治療における非オピオイド鎮痛薬の有用な選択肢の1つになると考えられた. Palliat Care Res 2011; 6(2): 133-142
著者
芦田 和男 湯城 豊勝 岡部 健士 藤田 裕一郎 澤井 健二 江頭 進治
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究は河床が低下する傾向にある河川の堤防・護岸の安全性を水理学的観点から明らかにすることを目的として行ったものである。以下、本研究によって得られた知見を要約する。1.河床低下の傾向にある交互砂州河道には、一般に抵水路が形成され、低水路の屈曲部には深掘れが生じる。これは流れの集中によるものであるが、低水路を満杯で流れる条件において、洗掘深は最大になる。2.護岸の被災過程には法勾配及び水潤している法長に応じて明確な差異がある。同一護岸高であれば、1割以上の急な護岸は主に土質力学的過程によって前方に押し出されるように起立して被災し、2割の護岸は目地等の間隙に働く流体力によって浮き上がるようにして被災する。3.低水路の屈曲部の深掘れを軽減するための方法の一つに不透過水制を設置する事が考えられる。この種の水制によって深掘れは著しく緩和されることが判明した。4.低水路を有する河川の弱点を捜し、その安定性を高めるための工法をより一般的に評価することを目的として、工作物の影響や2次流の影響を取り入れた平面2次元流れと河床変動に関するシミュレ-ション法を開発した。