著者
河野 肇
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第39回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.37, 2011 (Released:2011-08-20)

自己炎症性症候群CAPS(Cryopyrin-associated periodic syndrome)の責任遺伝子としてNLRP3 (NLR family, pyrin domain containing 3, NALP3, cryopyrin)は同定された。NLRP3はcaspase 1活性化機構である多分子複合体インフラマソームの構成分子の一つであり、機能亢進型変異によりインフラマソーム活性化を通じてIL-1β産生過多を来たし、自己炎症性疾患を引き起こす。またNLRP3インフラマソーム活性化はpyroptosisによる細胞死を導く。最近の研究の進展により、NLRP3インフラマソームはウイルス、細菌、真菌に対する生体防御機構としてIL-1β活性化に重要な役割を果たしていることが判明した。さらに、尿酸結晶やピロリン酸カルシウム結晶に対する急性好中球性炎症に必須であることも明らかとなった。また、βアミロイドによる急性炎症反応にも関与しており、さらには動脈硬化における粥状硬化巣において形成されるコレステロール結晶を認識し、炎症を惹起する機構に関与することや、高血糖によるストレス反応に重要な役割を果たすことなども判明し、動脈硬化や2型糖尿病などの慢性炎症性疾患においてもその病態への関与が示唆されている。このように、自己炎症性症候群CAPSの責任遺伝子NLRP3は、我々の生体に危険が及ぶ際には、外敵のみならず内因性の異常をも覚知しインフラマソーム活性化を通じてIL-1β依存性炎症を惹起する分子であることが明らかとなってきた。