137 0 0 0 OA IV.真菌感染症

著者
泉川 公一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.2333-2340, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
7

近年の医療技術・治療の進歩により,深在性真菌症は増加の一途にある.一方で,専門医は少なく,一般的に発熱性疾患で本症の鑑別を行うことは難しいため,診断が遅れ,不幸な転帰を辿ることも予想される.基礎疾患を有しない場合でも発症するクリプトコックス症,輸入真菌症は不明熱の原因疾患として特に重要である.また,深在性真菌症の発症リスク因子についても改めて認識し,不明熱の鑑別疾患として認識しておく必要がある.
著者
田代 将人 泉川 公一
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.J103-J112, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
63
被引用文献数
2 8

肺アスペルギルス症は死亡率が高く,重要な深在性真菌症である.しかし,抗アスペルギルス活性をもつポリエン系,アゾール系,キャンディン系のなかでも,経口投与が可能な抗真菌薬はアゾール系に限られ,日本では慢性肺アスペルギルス症の外来治療には,イトラコナゾール (ITCZ),ボリコナゾール (VRCZ) の2種類のアゾール系薬しか使用できない.したがって,アゾール耐性アスペルギルスの出現は臨床的な脅威となる可能性がある.われわれは,日本においてもアゾール耐性のA. fumigatusが臨床現場において存在すること,その耐性機序はアゾール標的分子の変異が原因であること,ITCZ長期投与によりCYP51AのG54変異が誘導され,ITCZ耐性株が産生されることを明らかとした.現在の日本において,複数のアゾールに耐性を示す株は臨床的にも環境においてもまれであり,アスペルギルス症の初期治療において耐性株の存在を考慮する状況ではない.しかし,アゾール耐性株は世界的な拡がりがみられる問題であり,今後も臨床分離株および環境株の継続的調査が必要である.