著者
川名 明彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.2309-2315, 2004-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
8

SARSは新型コロナウイルスによっておこる全身性の感染症である. 2002~2003年の流行では世界で774人が死亡した.本症は主に気道由来の飛沫によって感染し, 2~10日の潜伏期間の後インフルエンザ様症状で発症する.大部分は肺炎を合併し,死亡率は約10%である.有効性の確認された治療法は無い.本症は医療スタッフに感染しやすい特徴があり,その蔓延を阻止するためにも十分な院内感染対策が必要である.
著者
川名 明彦 工藤 宏一郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.429-436, 1999-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

上気道に定着した潜在的病原菌を誤嚥することが細菌性肺炎の主要な原因とされている. われわれは, 上気道からこれらの菌を除去するのにポビドンヨード (Povidone-iodine: PVP-I) 経鼻吸入が有用ではないかと考え検討を行った. 対象として, 気道に通常は常在しない菌, すなわち緑膿菌や腸内細菌科に属する好気性グラム陰性桿菌, およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (以下潜在的病原菌と略す) が無症候性に咽頭から繰り返し検出される外来患者63人を選択した. これらの症例にPVP-I含嗽を2週間施行し, 対象菌を除菌できなかった30例を無作為にPVP-I経鼻吸入・PVP-I含嗽併用群 (以下併用群と略す) とPVP-I含嗽単独群 (以下単独群と略す) とに分け, 2週間の処置の前後で咽頭の細菌学的検索を行った. 併用群は16人で, うち9人 (56%) は慢性的な肺合併症 (気管支拡張症, 慢性気管支炎など) を有していた. 単独群は14人で, うち6人 (43%) は同様の肺合併症を有していた. 治療期間終了時に, 併用群では44%, 単独群では14%で咽頭から潜在的病原菌が消失した. 特に, 肺合併症を有さない患者においては, 併用群では86%で除菌し得た. PVP-I経鼻吸入と関連した有害事象はみられなかった. 上気道から潜在的病原菌を除去するのに, PVP-I経鼻吸入は安全で, 特に肺合併症のない症例において有用な方法と考えられた.
著者
佐々木 寿 宮田 純 西村 匡司 槇 陽平 田上 陽一 濱川 侑介 君塚 善文 林 伸好 藤倉 雄二 川名 明彦
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.3, no.12, pp.e00093, 2019 (Released:2022-10-22)
参考文献数
12

右上葉の肺扁平上皮癌(cT2aN3M1c stage IVB)と診断した60歳男性に対し,1次化学療法としてペムブロリズマブを投与後,全身倦怠感を認めた。血中好酸球増多,血清コルチゾール値・血清ACTH濃度が検出感度以下であり,迅速ACTH負荷試験でコルチゾール低値であり,反応性の低下を認めた。MRIとCTで下垂体と副腎に明らかな異常所見を認めず,ペムブロリズマブによるACTH単独欠損症と診断した。

1 0 0 0 OA 1.抗HIV薬

著者
藤倉 雄二 川名 明彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.1574-1582, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
15

抗HIV薬の進歩は著しいものがあり,これまで抗HIV効果に加え,副作用の軽減,服薬しやすさが追及されてきた.このことにより治療の選択肢が拡がっている.本稿では概ね日本で2005年以降に承認された比較的新しい抗HIV薬に関する知見と,最近の診療ガイドラインの中におけるこれらの位置付けをまとめた.また,新しい機序の抗HIV薬であるインテグラーゼ阻害薬(ラルテグラビル)やCCR5阻害薬(マラビロク)についても言及した.