著者
坂本 光 今泉 芳孝 新野 大介 竹内 真衣 松井 昂介 蓬莱 真喜子 佐藤 信也 赤澤 祐子 安東 恒史 澤山 靖 波多 智子 大島 孝一 宮﨑 泰司
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.305-311, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
15

Human T-cell leukemia virus type I(HTLV-1)キャリアや成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は免疫不全を来すことが知られているが,Epstein-Barrウイルス陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫発症(EBV陽性DLBCL)との合併の報告は少ない。今回,サイトメガロウイルス網膜炎を発症したHTLV-1キャリアに,網膜炎の治療中に肝臓腫瘍が出現し,生検の結果,ATLとEBV陽性DLBCLのcomposite lymphomaと診断した症例を経験した。化学療法開始前には肺クリプトコッカス症,侵襲性肺アスペルギルス症の合併を認めた。化学療法を行ったが,CMV抗原血症や敗血症の合併を繰り返し,最終的に敗血症で死亡した。日和見感染症を合併したHTLV-1キャリアでは,ATLのみならずEBV陽性DLBCLの発症および感染症の管理にも注意が必要である。
著者
田﨑 典子 鍬塚 大 東 美智子 鍬塚 さやか 鈴木 貴久 波多 智子 宇谷 厚志
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.19-23, 2017

71 歳,男性。2010 年 7月,再発性多発軟骨炎を発症し,内科でプレドニゾロン 20 mg/day の内服治療が開始された。2012 年 3 月,<i>Mycobacterium intracellulare</i> による肺非結核性抗酸菌症を発症し,プレドニゾロンに加え,3 剤併用療法が開始された。2013 年 8 月,発熱と皮疹が出現し皮膚科を紹介された。皮疹は無痛性の 2 cm までの紅色結節で,頚部,上肢,体幹に散在していた。病理組織で真皮浅層から脂肪織にかけ好中球を主体とする密な細胞浸潤を認めた。一般細菌培養,真菌培養,抗酸菌培養はすべて陰性であった。以上より皮疹は Sweet 病と診断した。貧血と血小板減少のために行った骨髄穿刺にて骨髄異形成症候群も同定され,最終的に再発性多発軟骨炎と骨髄異形成症候群を合併した Sweet 病と診断した。 プレドニゾロンを増量,ステロイドミニパルスを行うも効果は一時的で浸潤性紅斑,結節の出没を繰り返し,2014 年 1 月に永眠した。本症例では約 4 カ月の間に臨床的には多彩な皮疹が出現したが,病理組織像はいずれも真皮から脂肪織に至る好中球浸潤であった。このように再発性多発軟骨炎,骨髄異形成症候群,Sweet 病の 3 者を合併する症例は過去にも報告されており,これらの症例につき文献的考察を行った。