著者
大島 孝一 柳田 恵理子 武藤 礼治
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.114, no.11, pp.1939-1947, 2017-11-05 (Released:2017-11-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

消化管原発悪性リンパ腫は,節外性リンパ腫の最も多くを占め,その大半が非ホジキンリンパ腫で,ホジキンリンパ腫は非常にまれである.また,消化管悪性腫瘍の約1~2%が悪性リンパ腫とされていて,節外リンパ腫の30~40%を占める重要な疾患である.臓器別では胃が最も多く,次いで小腸,大腸の順で,食道のものはまれである.組織型としては,MALTリンパ腫,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫が多い.また,濾胞性リンパ腫が認識されるようになり,増加している.最近,比較的予後のよい低悪性度消化管T細胞性リンパ増殖症や,リンパ腫様胃腸症/NK細胞性腸管症が認識されている.
著者
坂本 光 今泉 芳孝 新野 大介 竹内 真衣 松井 昂介 蓬莱 真喜子 佐藤 信也 赤澤 祐子 安東 恒史 澤山 靖 波多 智子 大島 孝一 宮﨑 泰司
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.305-311, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
15

Human T-cell leukemia virus type I(HTLV-1)キャリアや成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は免疫不全を来すことが知られているが,Epstein-Barrウイルス陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫発症(EBV陽性DLBCL)との合併の報告は少ない。今回,サイトメガロウイルス網膜炎を発症したHTLV-1キャリアに,網膜炎の治療中に肝臓腫瘍が出現し,生検の結果,ATLとEBV陽性DLBCLのcomposite lymphomaと診断した症例を経験した。化学療法開始前には肺クリプトコッカス症,侵襲性肺アスペルギルス症の合併を認めた。化学療法を行ったが,CMV抗原血症や敗血症の合併を繰り返し,最終的に敗血症で死亡した。日和見感染症を合併したHTLV-1キャリアでは,ATLのみならずEBV陽性DLBCLの発症および感染症の管理にも注意が必要である。
著者
武藤 敏孝 高月 浩 萬納寺 聖仁 河村 京子 大藏 尚文 大島 孝一
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.912-916, 2017 (Released:2017-09-05)
参考文献数
15

症例は37歳女性。子宮頸がん検診にて異常を指摘され来院した。子宮頸部生検にて粘膜下にCD20陽性の異常リンパ球が巣状に増殖し,MALTリンパ腫からびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫へのtransformationと診断された。Chlamydia trachomatis(C.trachomatis)による子宮頸管炎を合併しており,除菌治療を施行したところ,4ヶ月後に行った生検ではCD20陽性の異常リンパ球はほとんど認めず,リンパ腫病変は寛解と判断した。その後現在まで無治療にて再燃兆候は認めていない。MALTリンパ腫と感染症の関連については多くの報告があるが,胃以外について定見はない。子宮頸部MALTリンパ腫は稀であり,またC.trachomatisと子宮頸部MALTリンパ腫との関係は現在のところ不明である。検索しえた限りで報告例も確認できなかった。今後同様の症例蓄積と検討が望まれる。
著者
大屋 周期 山崎 嘉孝 中村 剛之 森重 聡 山口 真紀 青山 一利 関 律子 毛利 文彦 大崎 浩一 内藤 嘉紀 大島 孝一 長藤 宏司
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1605-1610, 2020 (Released:2020-12-08)
参考文献数
15

多中心性キャッスルマン病は,リンパ節病理像によって特徴づけられるリンパ増殖性疾患でIL-6高値を特徴としている。症例は17歳の日本人男性,発熱,頭痛,倦怠感,体重減少を伴っていたが,血圧は正常であった。臍下部に可動性良好な腫瘤を触知し,血液検査所見は小球性貧血,低アルブミン血症,IL-6高値,sIL-2R高値,VEGF高値を示した。造影CT検査で55 mm大の骨盤内腫瘤と腸間膜周囲のリンパ節腫大を認め,多中心性キャッスルマン病を疑い骨盤内腫瘍を摘出した。術後,血圧が緩徐に上昇し可逆性後頭葉白質脳症による痙攣を発症した。高血圧の精査で,術前の血中ノルアドレナリン,ノルメタネフリン高値が判明し,摘出標本でIL-6およびクロモグラニンAが陽性であることから,IL-6産生パラガングリオーマと診断した。多中心性キャッスルマン病に類似した発熱,貧血などを来す病態の鑑別診断として,血圧上昇を伴わない症例でもIL-6産生褐色細胞腫・パラガングリオーマを考慮する必要がある。
著者
豊田 康祐 安部 康信 津田 麻理子 土師 正二郎 崔 日承 末廣 陽子 喜安 純一 大島 孝一 鵜池 直邦
出版者
The Japanese Society of Hematology
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.815-819, 2014

Primary effusion lymphoma (PEL)は体腔液中に限局して腫瘍細胞が増殖する稀なB細胞性リンパ腫であり,原則的に明らかな腫瘤形成は認められないとされ,human herpes virus 8 (HHV8)感染が陽性である。しかしながら本邦を中心にHHV8感染が認められないPEL類似の症例も報告されており,これらをPEL-like lymphoma (PEL-LL)とする疾患群も提唱されている。今回我々は胸水貯留で発症したPEL-LLを経験した。心疾患を有する70歳男性であり,リツキシマブ併用経口ソブゾキサン,エトポシド少量療法にて7か月間完全奏効を維持している。PEL-LLはPELと比較し,予後良好であることが報告されており,CD20抗原が陽性であることからリツキシマブの追加効果が期待されている。PEL-LLは高齢者に多い疾患であり,より忍容性のある有効な治療法の開発が期待される。
著者
久野 千津子 中村 稔 真弓 武仁 林田 一洋 加治 良一 長澤 浩平 仁保 喜之 福田 敏郎 恒吉 正澄 大島 孝一
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.256-264, 1995-04-30
被引用文献数
8 3

症例は20歳,女性. 1993年2月,高熱,関節痛,サーモンピンク様皮疹が出現し,白血球増多,脾腫を認め,成人スチル病と診断された. γ-globulin製剤およびprednisolone(PSL)の投与にて症状は改善した.同年9月より全身倦怠感,微熱が出現し,当科に再入院.成人スチル病の再燃を疑われ, PSL 15mg/day投与にて経過観察していたが, 10月2日,高熱と下肢にサーモンピンク様皮疹が出現. 10月7日にはGOT 3,270IU/<i>l</i>, GPT 1,880IU/<i>l</i>, LDH 5,480IU/<i>l</i>と肝障害が出現し,急速に肝不全状態となったため, methylprednisoloneによるpulse療法,血漿交換を開始した. hemophagocytosisが原因と思われる汎血球減少を合併し, VP-16による化学療法も施行.しかしDICが進行し, 11月2日死亡した.剖検所見では,肝臓は組織学的に肝細胞の広範な壊死を認め, histiocyteの浸潤を認めた.本症例はhemophagocytic syndrome(HS)により成人スチル病や急性ウイルス性肝炎と鑑別困難な症状を呈した興味ある症例と考え報告する.