著者
津村 紀子
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1998年7月27日から9月15日まで北海道日高衝突帯で地震の臨時観測を行いデータを収集した.観測点は衝突域の先端部と考えられる日高主衝上断層付近から北東方向に3〜5kmの間隔で6点配置した.いずれも商用電源のない地域であるため,バッテリで駆動するレコーダで波形データをDATに連続収録した.刻時にはGPSを利用した.また,地震計の設置・保守時に同地点の岩石について簡単な記載も行った.得られたデータはDATからパーソナルコンピュータ(PC)のハードディスク上に再生した.データ再生用の装置には当初自作のPCを用いる予定だったが,既存のPCを改造する方が費用が削減されることがわかったため,そちらを採用した.この観測期間中北海道大学の微小地震観測網により震源決定された地震は1205個である.この震源データをもとに収録された連続波形データから地震波形データを切り出した.データの再生,切り出しの結果,観測網中央部分の1観測点は機器の不良によりデータが収録できなかったことが判明した.しかし他の観測点では概ね良好な記録が得られている.まず,観測網直下で起こった地震11個について解析を行った.まだ,解析は途中であるが,少なくても1観測点では東西と南北の水平動地震計でS波の着信に差がみられる傾向があることがわかった.今後この差を定量的に評価するため,波形の相互相関を取って調べる予定である.得られた11個の地震はいずれも震源が35〜50km前後で深さ方向への広がりに欠けている.しかし,観測期間中に日本の近傍だけでも数個のM5〜6クラスの深発地震が発生している.これらの地震のScS波を用いることにより浅い部分と深6部分の異方性を分離できる可能性がある.