- 著者
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古野 毅
鈴木 徳行
渡辺 暉夫
- 出版者
- 島根大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1986
化石木の珪化過程と形成について組織構造的に研究を行い, 以下の研究成果を得た.1.珪化過程 有機物分析, SEM観察, EPMA分析, X線回析, 光学・偏光顕微鏡観察から化石木の珪化過程と形成を次のように考察できた.(1)細胞内膣中のシリカ鉱物の種類 まずオパールAが材木中に浸透して, オパールCTが沈澱する. その後地質条件により石英に移転する.(2)細胞壁へのシリカ鉱物の侵入と置換 シリカ鉱物の沈積は初めは細胞内膣のみであり, ある時期に壁にも侵入し, 壁物質として置換する. 最終的には壁物質のほとんど大部分がシリカと置換される.(3)細胞壁に残存する有機炭素 細胞壁の有機炭素の残存には有機物の保存性がよい場合と, 早い段階で壁のシリカ置換が進行し, 有機物が見られない場合がある. 前者でも時間の経過などにより次第に有機炭素は消失する.(4)細胞形態 壁のシリカ置換の進行, 有機炭素の減少とともに細胞の形態は徐々に失われていくが, 細胞の形状は痕跡として残る.(5)樹脂様物質の炭素残存 樹脂細胞・放射柔細胞に存在している樹脂様物質の炭素残存が非常によく, 炭素含有の高い物質として化石化している.2.珪化作用における樹脂様物質の役割 樹脂様物質かコハクと同様にC-C鎖式構造を基幹とした物質であり, 付随しているカルボキシル基とフェノール性OH基が周囲のpHを低下させ, 木材中に侵入したシリカ鉱物はその周辺で沈澱しやすくなり, 周囲の壁のシリカ置換を促進させる効果があることや, 豊富なアルキル構造の疎水性により保存性がよいことがわかった.3.珪化木の人工合成 ヒノキー珪酸溶液の反応系に数ヶ月浸漬すると, 仮道管や放射柔細胞の木材細胞中に長い角柱状あるいは円柱状のシリカ鉱物が形成された.