著者
浜谷 直人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.85-94, 2012 (Released:2013-01-16)
参考文献数
43
被引用文献数
1 3

特別支援教育に関する最近の研究動向には, 二つのベクトルがあることを指摘した。一方は, 個への支援に力点を置き, 行動レベルで支援の成果を実証することを重視し, それに関わる手法・組織・制度などの整備拡充発展を志向する。発達障害児へのSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)による支援と成果の研究などが代表的であり, 論文数が多い。もう一方は, 学級内における関係性, 子どもの自己・人格の発達などに注目し, 今日的状況における学校や授業のあり方や教員の同僚関係などを再構築することを志向する。教育心理学会での発表論文を通覧すると, 通常学級での発達障害児への教育をテーマとするものが多く, その視点からの重要な論文(支援対象児への個別対応と集団・学級の経営について, 通常学級への外部の専門家からの支援, コーディネーターに関する研究, 移行に関する研究, ニューカマーへの支援)を概観した。今後の展望として, 通常学級での特別支援教育の発展のためには, 教育実践の現場から学ぶというスタイルの研究が生まれること, また, 論文において, 著者が, 教育実践における価値をどう考えるかを, 明確に示すことへの期待を述べた。
著者
浜谷 直人
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 教育学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-27, 1999-03-10
著者
芦澤 清音 浜谷 直人 田中 浩司
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.252-263, 2008
被引用文献数
2

本研究は,ある自治体における発達臨床コンサルテーション理論(浜谷,2005)に基づいて行った巡回相談を対象として,幼稚園への巡回相談の支援機能と構造を明らかにし,支援モデルを提示することを目的とした。その際,保育園への巡回相談を参照しながら,幼稚園と保育園の支援ニーズの違いによって,支援機能にどのような違いがあるかを明らかにし,その違いによる支援のあり方を考察した。研究1で,教諭らへのインタビューによる巡回相談の評価をもとに33項目からなる質問紙を作成した。教諭等の巡回相談に対する評価を因子分析した結果(N=110),「保育方針」「関心意欲」「対象児理解」「保護者理解」「協力」の5つの支援機能が見出され,幼稚園独自の機能と保育園と共通の機能が明らかになった。研究2で,典型的な一事例に関して,担任らと園長に対して行ったグループインタビューを分析し,対象児理解に基づく関心意欲の高まり,及び,園内協力体制の形成が幼稚園巡回相談の支援構造の中核をなし,それを支援する相談員の専門性が考察された。
著者
浜谷 直人
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.484-494, 2013

巡回相談員として保育実践に関わってきた経験から,最近,保育現場では,子どもの生きづらさと育てにくさへの支援ニーズが高くなり,それに応じて,支援対象児個人の行動レベルから,関係性と意味レベルを志向する支援の必要性が高くなり,それに応えうる研究課題に取り組むことと,支援実践の必要性を指摘した。巡回相談における主訴から研究課題を立ち上げる例として,「場面の切り替えが難しい」を取り上げ,その構造を分析して仮説的なモデルを提示した。このモデルにおいて,子どもが遊びなどの活動の終了時点で気持ちに区切りが入ることが切り替えにおいて決定的に重要な点であり,単に行動レベルで行動を移行するような保育への支援に疑問を呈した。場面の切り替えの原型は,3項関係にあり,子どもが対象に出会った時の私的な認識や感情体験を対象化して,それを他者と共有することとして理解する必要があることを指摘した。その際,保育者から子どもへの言葉かけが,子どもの時間に区切りを入れて,物語を創りだす。また,保育支援においては,発達において何を価値とするかが問われ,発達心理学の研究者は,価値について自覚的に研究に取り組むことが豊かな保育実践に寄与できることを指摘した。