- 著者
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柴坂 寿子
倉持 清美
- 出版者
- 日本質的心理学会
- 雑誌
- 質的心理学研究
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.1, pp.96-116, 2009
幼稚園のお弁当時間に子どもたちが協同で行った定型的な共有ルーティンについて,仲間文化の形成・変化の視点から検討した。幼稚園のクラス集団を入園から卒園まで 2 年間にわたって縦断観察し,ルーティンの形成過程,特徴,2 年間の意味・機能の変化について分析した。入園 8 週目,子どもたちはお弁当時間に「~の人,手ー挙げてー」「はーい」という共有ルーティンを行うようになった。ルーティンは保育者と子どもたちでの質問-応答形式を取り入れて形成されたと推測された。ルーティンでは唱和や同時挙手が起こり,興奮を伴った。またルーティンはしばしば続けて繰り返され,大きな仲間活動となることもあった。年少前半ではお弁当時間あたりに起こるルーティンの頻度が高く,お弁当の中身と子どもの様々な個人属性の両方が話題にされ,この仲間活動への参加と自己呈示がルーティンの重要な意味と考えられた。年少後半以降はお弁当の中身を話題とすることが多く,仲間活動への参加や自己呈示の他に,その場での会話ややりとり,個別の人間関係を調整する方略として利用されることが多いと考えられた。