- 著者
-
藤崎 春代
- 出版者
- 一般社団法人日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.2, pp.99-111, 1995-12-10
本研究では, 3・4・5歳児に対して園生活の流れについて個別面接調査を行い, 一般的出来事表象 (GER) の形成と発達的変化について検討した。すべての子どもに, 登園から降園までの園生活全体の流れを聞く質問 (上位レベルについての質問) を行うとともに, 一部の子どもには, 給食時および昼寝時の流れを問う質問 (下位レベルについての質問) を重ねて行った。分析の結果, まず, 3歳児でも行為を述べる際に主語なしで現在形表現をしており, また時間的順序も一定であるなど, GERを形成していることが確認された。しかしながら, 3歳児においては, 報告行為数は4・5歳児より少なく, 遊びのようにルーティン化の程度の低い活動については, 具体的な遊びの内容や遊び仲間の名前をともなって述べることが多い。また, 上位レベルで述べられなかった行為が下位レベルで報告されるようになるのも, 4歳以降であった。なお, おやつをそのメニュー内容からごはんと呼ぶ子どもがいることからは, 子どもが園以外の場で獲得した知識を汎用していることが示唆された。多くの5歳児は, 日常活動を階層的に報告していたが, そうでない児もいた。報告行為数と構造において個人差がありそうである。