著者
藤崎 春代
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.99-111, 1995-12-10

本研究では, 3・4・5歳児に対して園生活の流れについて個別面接調査を行い, 一般的出来事表象 (GER) の形成と発達的変化について検討した。すべての子どもに, 登園から降園までの園生活全体の流れを聞く質問 (上位レベルについての質問) を行うとともに, 一部の子どもには, 給食時および昼寝時の流れを問う質問 (下位レベルについての質問) を重ねて行った。分析の結果, まず, 3歳児でも行為を述べる際に主語なしで現在形表現をしており, また時間的順序も一定であるなど, GERを形成していることが確認された。しかしながら, 3歳児においては, 報告行為数は4・5歳児より少なく, 遊びのようにルーティン化の程度の低い活動については, 具体的な遊びの内容や遊び仲間の名前をともなって述べることが多い。また, 上位レベルで述べられなかった行為が下位レベルで報告されるようになるのも, 4歳以降であった。なお, おやつをそのメニュー内容からごはんと呼ぶ子どもがいることからは, 子どもが園以外の場で獲得した知識を汎用していることが示唆された。多くの5歳児は, 日常活動を階層的に報告していたが, そうでない児もいた。報告行為数と構造において個人差がありそうである。
著者
佐藤 昌子 木村 あやの 藤崎 春代
出版者
昭和女子大学
雑誌
昭和女子大学生活心理研究所紀要 (ISSN:18800548)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.25-38, 2010-03-31

An important function of the Counseling Room affiliated with the Showa Women`s University is training graduate students in clinical psychology. Graduate student interns in this institute, supported by clinical psychologist, assess and counsel clients varying from children to the elderly. In the Counseling Room, the use of the Wechsler Intelligence Scale(WISC and WAIS) for assessment has continued to increase and currently accounts for nearly 40% of all cases in 2009.The results of WISC tests performed on 30 participants (aged 6 to 16 years) between April 2006 and June 2009 are reported and the contribution of using the scales to the education of clinical psychologists is discussed.
著者
藤崎 春代
出版者
昭和女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

幼児の園生活理解の発達過程をとらえるために、幼稚園の3歳児クラス入園直前から卒園までの3年余りの間に、保護者を対象として8回の質問紙調査と2回の日誌調査を実施した。結果、子どもが家庭でみせる様子は、時期により異なること、個人差があることがわかった。また、保護者は子どもの様子の意味を推測してさまざまな対応をすると同時に、心配したり安心したりと感情が揺れ動いており、子どもが家庭に持ち込む園生活に保護者自身が巻き込まれていることが示唆された。
著者
藤崎 春代 木原 久美子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.133-145, 2005-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
37
被引用文献数
2 1

本論文は, 統合保育への支援の一貫として企画・運営した研修実践を, 協働による互恵性をキーワードとして分析した。研修実践は実践報告と実践交流から成り立つが, 報告準備段階から保育者と相談員 (心理の専門家) の協働作業が始まり, 一連の協働を通して, 次のようなふりかえりと互恵的な学びが行われることが分かった。第1は, 準備段階で, 相談員が保育者の保育意図や悩みに注目してその明確化を求めることにより, 保育者は保育意図や転換点をふりかえった。そのふりかえりを複数の立場の保育者間で行うことにより, 保育者は自分の立場に特化した専門性を意識化した。相談員も巡回相談活動が保育にどのように活かされたかを学んだ。第2は, 実践報告をテキストとした実践交流により, 異なる園の保育者同士の間でふりかえりの重要性への気づきがなされ, ふりかえりのモデル伝達がなされた。この保育者のふりかえり作業に立ち会うことにより, 心理の専門家をはじめ他専門家も保育者との連携を模索することを促された。最後に, 心理の専門家の研修への貢献を, 相談員としての側面と心理学研究者としての側面との2側面から考察した。
著者
百瀬 良/越智 眞理子/佐藤 昌子/松永 しのぶ/藤崎 春代 越智 眞理子 佐藤 昌子
出版者
昭和女子大学
雑誌
昭和女子大学生活心理研究所紀要 (ISSN:18800548)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.81-93, 2014-03-31

In 2010, we inaugurated a developmental counseling room as a part of a regional project to support children with developmental disorders. Part 1 of this study examined individual consultations and Part 2, Parent Training conducted in this counseling room. Results of Part 1 indicated that the goal of individual consultations were to accept the awareness and anxieties of such children's caretakers, provide psychological education and assistance based on assessment results, and refer clients to other specialized institutions and regional support programs. Future tasks are (1) improving the accuracy of assessments by using test batteries matched to the children's age and stage of development, and (2) gathering up-to-date information on systems and institutions available to care for such children. Part 2 of this study indicated that Parent Training met parent's needs to learn methods of coping with their children, to ease their sense of isolation, and for psychological support. It is suggested that the future task of Part 2 of this program is to respond to the need for longitudinal care as children mature. In conclusion, results indicated the need to combine individual consultations matched to a child's developmental stage and characteristics, and Parent Training that benefits from mutual interactions.
著者
藤崎 春代
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.221-231, 1998-12-15

本研究では, 1日および1週間単位での日課が異なる2園(幼稚園と保育園)に所属する4・5歳クラス児に対して, 園生活の流れについて個別面接調査を行い, 多様な出来事についてどのような一般的出来事表象(GER)を形成しているのかについて検討した。すべての子どもに, 「いつも園では何をするか?」と園生活全体の流れを聞く質問を行うとともに, 幼稚園の一部の子どもには「今日は何をしたのか?」, 残りの子どもには「*曜日は何をするか?」という質問を行った。分析の結果, まず, 行為を述べる際に主語無しで現在形表現をしており, 時間的順序も一定であるなど, 幼児が園生活GERを形成していろことが確認された。しかしながら, 幼椎園児の特徴として, 子どもが共通に述べる行為数は少なく, これは幼稚園生活において生活習憤的活動が少ないことによると思われた。多様性の表象の仕方については, GERとしてではなくエピソード的に記憶する, 多様性を園生活GERの変化項としてとらえる, 条件により園生活GERを形成し分ける, の3タイプが検討された。