著者
浦野 真弥 太宰 久美子 加藤 研太
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.85-97, 2022 (Released:2022-04-01)
参考文献数
23

柔軟剤等の使用に伴う健康被害の訴えが増加していると国民生活センターなどが報告しているが, これらの使用に伴う揮発性有機化合物(VOC)の挙動に関する情報は少ない。本研究では, 繊維質の違い, 製品成分の違い, 繰り返し使用時および使用停止時の揮発成分挙動を把握することを目的とした洗濯試験を実施し, 洗濯中および洗濯後の衣類からの揮発成分を吸着材に捕集してGC/MSの全イオンクロマトグラム(TIC)分析を行った。さらに検出されたピークのマススペクトルから物質を推定し, 確度の高い物質について, 沸点や蒸気圧, オクタノール水分配係数と揮発挙動の関係について解析した。繊維質について, ポリエステルで疎水性物質の揮発量が多くなり, 綿で親水性物質の揮発量が多くなる傾向を示し, 揮発成分組成が変わることが示された。また, これらは洗濯中の揮発成分組成とも異なっていた。ポリエステル繊維で柔軟剤等を繰り返し使用した場合の揮発成分挙動を調べた結果からは, 沸点および極性基の有無との関連が示唆され, 高沸点, 疎水性化合物ほど繰り返し使用時に揮発濃度が上昇していくことが示された。また, 本研究の範囲においては, 製品の使用を停止した後, 数回の洗濯で揮発濃度が大きく低下することが示され, 適当な頻度での使用停止が臭気質の変化や揮発量の増加抑制に効果的である可能性が示された。
著者
酒井 伸一 出口 晋吾 浦野 真弥 高月 紘 惠 和子
出版者
Japan Society for Environmental Chemistry
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.379-390, 1999-06-18 (Released:2010-05-31)
参考文献数
33
被引用文献数
5 5

ダイオキシン対策を考え, その効果を把握し, ダイオキシン類の環境動態を検討するためには過去からのダイオキシン類の蓄積状態や発生源の変遷を知ることは重要である。本研究では, 琵琶湖および大阪湾で採取した底質コアを用いてダイオキシン類の歴史トレンド解析を行った。その結果, 琵琶底質では19世紀半ばの底質層にダイオキシン類の存在が認められ, その後, 20世紀後半に濃度が大きく増加している。そして, 1980年前後に観察されたピークから現在は若干の減少あるいは横這いの傾向が続いていることが示された。異性体や同族体の変化や主成分分析から底質ダイオキシン類の主要な汚染源は燃焼由来のPCDDs/DFsに加え, 除草剤CNPやPCP中に含まれていたPCDDs/DFsの影響があると考えられた。
著者
浦野 真弥 浦野 紘平
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.383-391, 2015-09-30 (Released:2016-08-01)
参考文献数
38

PCB含有安定器の処理が進んでいない原因等を検討するため,まず,届出数の経年変化情報を収集し,都道府県別の人口と届出数との関係を指数関数で近似し,7道県が周辺の他県に比べて届出数が推算値より特に少なく,九州・沖縄地区は全体に届出数が推算値より少ないこと等を明らかにした。その上で,中間貯蔵・環境安全事業(株)が示している安定器処理計画と処理費用を解析し,1個あたりの処理費が8.4万円程度となること,都道府県ごとの処理経費を推算し,全数処理には5,000億円以上の経費を要すること,さらに,東京都内の安定器保管数情報から,数億円から数十億円の処理経費を要する保管者が多いことなどを示した。また,(独)環境再生保全機構の公開情報等から,中小企業補助制度の継続が困難になる可能性が高いことを明らかにした。これらから,社会負担が極めて大きいために期限内の処理が難しくなり,長期保管による漏洩・紛失や不適正処理の増加が懸念されることを明らかにした。さらに,国が安全性を確保できる安定器の解体方法を示して型式によらない解体の認定制度を導入するか,低濃度PCB廃棄物の焼却無害化処理施設において,認定(許可)されたPCB処理量の範囲内での安定器の処理を認めることで,処理経費を1/20~1/3程度まで低減可能であることを示した。