著者
阿部 達也 橋本 貴尚 小林 隆夫 人見 秀昭 海老名 雅仁 藤盛 寿一 阿見 由梨 早川 幸子 藤村 茂
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.625-630, 2015 (Released:2016-09-16)
参考文献数
19

〔目的〕病院職員に対する結核曝露のリスクを,インターフェロンγ遊離試験(IGRA)の陽性率を指標として後ろ向きに比較した。その際,「病院環境曝露」を結核曝露のリスクとして仮定した。〔対象〕2010年12月から2012年4月の間にIGRAを行った職員870人を,病院環境曝露の有無により以下の群に分けて解析した。非曝露群は雇用時に測定を行った新入職者161人,曝露群は接触者健診受診者を含む既職者709人であった。〔方法〕IGRAはクォンティフェロンTBゴールド®3Gを用い,非曝露群を対照として,曝露群における陽性オッズ比(OR)をロジスティック回帰分析で求めた。〔結果〕全体として陽性率は6.7%で,2群間の陽性率(1.9% vs 7.8%)には有意差を認めた(P=0.005)。さらに,非曝露群を対照とし,性別,勤続年数,喫煙歴,および飲酒歴で調整した曝露群の陽性OR(95%信頼区間)は4.1(1.4-17.6)(P=0.007)であった。〔結論〕病院の職場環境ヘの曝露はその年数にかかわらず結核感染の潜在的なリスクとなっている可能性が示唆された。
著者
佐藤 輝幸 井上 彰 福原 達朗 榊原 智博 太田 洋充 海老名 雅仁 西條 康夫 貫和 敏博
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.257-261, 2009

<b>背景</b>.上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブは,活性型EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺癌患者に対して著明な抗腫瘍効果をもたらすが,後に生じる耐性化への対策は十分に検討されていない.<b>方法</b>.2004年6月∼2007年6月の間に,当施設で活性型EGFR遺伝子変異陽性と診断され,ゲフィチニブ治療が開始された進行非小細胞肺癌患者を対象に,増悪形式に関連した臨床的特徴をレトロスペクティブに解析した.<b>結果</b>.51例にゲフィチニブ治療が行われ,奏効率,病勢制御率は各々71%(36/51),86%(44/51)であった.病勢制御できた44例のうち,2008年4月末時点で33例に増悪を認め(無増悪生存期間中央値14ヶ月),21例は胸郭内,12例は遠隔臓器での増悪(うち10例は脳転移)であった.脳転移増悪例の過半数では放射線治療とともにゲフィチニブが3ヶ月以上継続され,生存期間中央値は28.2ヶ月と極めて良好であった.耐性遺伝子変異T790Mは全て原発巣近傍から検出された.<b>結論</b>.ゲフィチニブ治療例においては異なる増悪形式が認められ,それぞれの機序をふまえた治療法の開発が望まれる.<br>