著者
藤盛 寿一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.117-119, 2020 (Released:2020-02-27)
参考文献数
17
被引用文献数
2

近年cell-based assay(CBA)法の導入により,抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(myelin oligodendrocyte glycoprotein; MOG)抗体が陽性となる炎症性脱髄疾患のスペクトラムが明らかになってきた.この抗MOG抗体関連疾患群の中には視神経脊髄炎関連疾患,視神経炎,脊髄炎,非典型的多発性硬化症,自己免疫性脳炎などが含まれる.このうち抗MOG抗体陽性皮質性脳炎は,痙攣発作を主要症候の一つとし,片側型もしくは両側前頭葉内側型の特徴的な大脳皮質病変を頭部MRI・FLAIR画像にて認める.急性期にはステロイドパルス療法や抗てんかん薬を使用し,慢性期には再発予防目的に免疫抑制薬を用いることを考慮する必要がある.
著者
藤盛 寿一 遠藤 俊毅 田澤 泰 中村 起也 渡辺 みか 冨永 悌二
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.495-500, 2011 (Released:2011-09-27)
参考文献数
10

脊髄出血にて発症した脊髄海綿状血管腫の2例を経験した.症例1は72歳の男性で左下肢近位筋の筋力低下,左第2~3腰髄(L)領域の感覚障害および左膝蓋腱反射の亢進を認めた.MRIにて第11胸椎(Th)レベル傍正中左側の海綿状血管腫および第9-10胸椎レベルの脊髄出血を認めた.39病日目に血管腫摘出術が施行され神経症状の回復は良好であった.症例2は65歳の女性で,上腕内側,側胸部,背部の体動時の痛みを左側優位に認めたが他覚的神経学的異常を認めなかった.MRIでは第1胸椎レベル傍正中左側の海綿状血管腫および第6頸椎(C)から第4胸椎(Th)レベルの脊髄出血を認めた.疼痛は半減したが残存した.他覚的異常に乏しいことから経過観察の上,再出血を認める場合には積極的に手術を検討する方針とした.脊髄海綿状血管腫は稀な疾患で,脊髄出血により急性発症する場合があり,個々の症例に応じた治療方針決定が重要となる.
著者
阿部 達也 橋本 貴尚 小林 隆夫 人見 秀昭 海老名 雅仁 藤盛 寿一 阿見 由梨 早川 幸子 藤村 茂
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.625-630, 2015 (Released:2016-09-16)
参考文献数
19

〔目的〕病院職員に対する結核曝露のリスクを,インターフェロンγ遊離試験(IGRA)の陽性率を指標として後ろ向きに比較した。その際,「病院環境曝露」を結核曝露のリスクとして仮定した。〔対象〕2010年12月から2012年4月の間にIGRAを行った職員870人を,病院環境曝露の有無により以下の群に分けて解析した。非曝露群は雇用時に測定を行った新入職者161人,曝露群は接触者健診受診者を含む既職者709人であった。〔方法〕IGRAはクォンティフェロンTBゴールド®3Gを用い,非曝露群を対照として,曝露群における陽性オッズ比(OR)をロジスティック回帰分析で求めた。〔結果〕全体として陽性率は6.7%で,2群間の陽性率(1.9% vs 7.8%)には有意差を認めた(P=0.005)。さらに,非曝露群を対照とし,性別,勤続年数,喫煙歴,および飲酒歴で調整した曝露群の陽性OR(95%信頼区間)は4.1(1.4-17.6)(P=0.007)であった。〔結論〕病院の職場環境ヘの曝露はその年数にかかわらず結核感染の潜在的なリスクとなっている可能性が示唆された。