著者
Yuuki Kou Nobuhisa Yamazaki Yasuto Sakaguchi Hirokazu Tanaka Makoto Sonobe
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.91-94, 2023-04-20 (Released:2023-04-27)
参考文献数
7

Background. Axillary lymphadenopathy after COVID-19 vaccination have been frequently reported in the medical literature. This benign reaction can be confused with metastases of thoracic malignancies. We experienced three lung cancer cases with COVID-19 vaccine-related lymphadenopathy. Case presentations. Three patients were included. One was a pre-operative patient, and the others were post-operative patients. All of them were patients with lung cancer and had been vaccinated for COVID-19. They were found to have swelling of the axial lymph nodes on computed tomography several days after undergoing vaccination for COVID-19. Two patients underwent an axial lymph node biopsy. The results of biopsies and close follow-up revealed that none of them actually had metastasis. Conclusions. Invasive examinations should be avoided, but inappropriate upstaging and downstaging may result in miserable outcomes. We herein report three cases with imaging and pathological characteristics.
著者
櫻井 隆
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.353-357, 2009

ほとんどの人が住み慣れたところではなく,病院という本来医療を提供するはずの場で,人生最期の時を過ごして亡くなっていく.終の住処として入所したはずの施設からも最後には追い出され病院へ救急搬送されてしまう.受け取る病院サイドも緩和ケアの延長線上にある終末期医療への対応が負担となってしまう.病院,医療依存型の往生際ではなく,住み慣れた家であたりまえに過ごして有終の美を飾る,そんな地域での死を支える在宅ケア,地域の看取りの文化を再構築できればいい.あなたもわたしも/仕事が終われば家へかえる/それと同じように/人生という仕事が終わる時は/家にかえろう<br>
著者
田中 桂子
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.131-134, 2011

肺癌患者では,特に疼痛・呼吸困難など難治性の苦痛症状が生じやすく,緩和医療・緩和ケアの果たす役割は大きい.以下の5つのキーワードをもとに緩和医療の現状を概説する.(1)がんになったら緩和ケアも:緩和ケアとは,病気の進行度とは関係なく症状やニーズがあれば提供されるべきものである.(2)がん難民をなくすために:がん専門病院・一般病院,在宅,緩和ケア病棟のどこでも緩和ケアが受けられ,スムーズに選択でき行き来できるような地域のネットワーク作りが重要である.(3)「その人らしさ」を支えるために:終末期において大切なことは人により様々である.インフォームド・コンセントから一歩進んで,インフォームド・チョイスの提供が求められる.(4)緩和ケアを「広げる」・「深める」ために:緩和ケアの均てん化のための研修会やガイドラインの普及,専門化のためのシステム作りが進んでいる.(5)緩和ケアを「つなげる」ために:身体面・精神面・社会面・スピリチュアルな面を含むがん患者のトータルペインには,医師・看護師・薬剤師・栄養士・リハビリ職・心理職・ソーシャルワーカーなど,多職種合同チームによるアプローチが重要である.<br>
著者
間野 博行
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.889-893, 2010

我々は肺腺癌の4~5%において2番染色体短腕内に微小な逆位が生じた結果,新たな癌遺伝子<i>EML4-ALK</i> が生じることを発見した.この逆位により,受容体型チロシンキナーゼALKの細胞内領域が微小管会合タンパクEML4と融合したタンパクが産生されるが,EML4内の二量体化領域によりEML4-ALKは恒常的に二量体化・活性化され肺癌の直接的原因となるのである.<i>EML4-ALK</i> を肺胞上皮特異的に発現するトランスジェニックマウスは生後速やかに両肺に数百個もの肺腺癌を多発発症するが,同マウスにALK酵素活性阻害剤を投与すると肺癌は速やかに消失した.したがって<i>EML4-ALK</i> は同遺伝子陽性肺癌の本質的な発癌原因であり,だからこそその機能を阻害する薬剤は肺癌の全く新しい分子標的療法となることが期待されるのである.既に実際の<i>EML4-ALK</i> 陽性肺癌症例に対するALK酵素活性阻害剤による第I/II相臨床試験も終了し,その目覚ましい治療効果が確認され,現在日本を含む国際第III相臨床試験へと移行している.我々の発見により,今後世界中で何万人・何十万人の肺癌患者の生命予後が大きく変わろうとしている.<br>
著者
肺癌放射線治療計画用のリンパ節部位アトラス作成委員会 小宮山 貴史 板澤 朋子 玉置 幸久 西村 恭昌 中山 優子 伊藤 宏之 大出 泰久 楠本 昌彦 坂井 修二 鈴木 健司 渡辺 裕一 淺村 尚生
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.189-205, 2015
被引用文献数
1

肺癌の放射線治療ではCT画像に基づく三次元放射線治療計画が行われており,リンパ節部位の照射野設定は重要である.現在の肺癌取扱い規約のリンパ節マップはInternational Association for the Study of Lung Cancer(IASLC)mapに準拠したものである.放射線治療計画においては,CTの連続横断像を用いてリンパ節部位を設定する必要がある.そこで,日本肺癌学会と日本放射線腫瘍学会と共同で,肺癌放射線治療計画のためのリンパ節部位のCTアトラスを作成した.
著者
仲田 祐 佐藤 博俊 斉藤 泰紀
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.727-736, 1986

昭和57年~59年の3年間に延べ363,320名の間接レ線読影により82例の原発肺癌, 6例の転移肺癌を発見した.又, 高危険群 (50才以上喫煙指数600以上) の喀疾細胞診により67例の悪性腫瘍を発見し, 原発肺癌は62例であった.尚喀疾細胞診発見肺癌は82.3%がレ線写真無所見であった.<BR>経年実施回数別の肺癌発見率は, 初回10万対比45, 2回目は38, 3回目は15に減少した.切除率は63.6%, 76.1%, 80%と上昇し, 全体で切除例の57%が早期例であった.特に喀疾発見症例は51例中45例が切除され, うち40例 (89%) が早期例であった.
著者
濱中 瑠利香 村上 修司 横瀬 智之 中山 治彦 山田 耕三 岩崎 正之
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.253-258, 2011
被引用文献数
4

<b>背景</b>.Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)症候群は腫瘍随伴症候群の一つとして知られているが,肺癌に合併した報告は稀である.RS3PE症候群様症状で発症し,外科的切除を施行することで症状軽快を認めた肺癌の1例につき報告する.<b>症例</b>.79歳,男性.2009年12月頃から両下肢と足背の浮腫を認め,次第に手指と両手関節の腫脹,手関節と足関節の熱感,疼痛を自覚した.2010年4月に検診の胸部X線写真で左中肺野に腫瘤影を指摘され当院紹介となった.胸部CT画像では左S<sup>4</sup>に40×37 mmの腫瘤を認め,気管支鏡検査にて肺癌と診断された.原発性肺癌に伴うRS3PE症候群の圧痕浮腫を伴った関節炎と診断し,左上葉切除を施行した.術直後より関節症状の速やかな改善を認め,術後8か月経過し無再発生存中である.<b>結論</b>.高齢者に急速に進行する浮腫を伴った関節炎では悪性腫瘍の合併も念頭におき,全身精査を行う必要があると考えられた.<br>
著者
伴 秀利 西村 嘉裕 梁 徳淳 安光 勉
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.712-717, 2011
被引用文献数
1

<b>背景</b>.Solitary fibrous tumor of the pleura(SFTP)は比較的稀な疾患で術前の悪性度評価が困難である.<b>症例</b>.我々の経験した3症例のSFTPのMRI拡散強調画像において,53歳女性の低悪性度のSFTPでは無信号であり,66歳男性の低悪性度だが軽度の細胞増殖を呈したSFTPでは不均一な軽度高信号を認め,84歳男性のmalignant SFTPでは不均一な高信号を呈した.いずれもCTやMRI T1・T2強調画像では明確な差異を認めず,malignant SFTP症例においてはFDG-PETで軽度の集積率増加しか認めなかった.<b>結論</b>.SFTPの悪性度の術前評価にMRI拡散強調画像が有用である可能性が示唆された.<br>
著者
佐藤 輝幸 井上 彰 福原 達朗 榊原 智博 太田 洋充 海老名 雅仁 西條 康夫 貫和 敏博
出版者
The Japan Lung Cancer Society
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.257-261, 2009

<b>背景</b>.上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブは,活性型EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺癌患者に対して著明な抗腫瘍効果をもたらすが,後に生じる耐性化への対策は十分に検討されていない.<b>方法</b>.2004年6月∼2007年6月の間に,当施設で活性型EGFR遺伝子変異陽性と診断され,ゲフィチニブ治療が開始された進行非小細胞肺癌患者を対象に,増悪形式に関連した臨床的特徴をレトロスペクティブに解析した.<b>結果</b>.51例にゲフィチニブ治療が行われ,奏効率,病勢制御率は各々71%(36/51),86%(44/51)であった.病勢制御できた44例のうち,2008年4月末時点で33例に増悪を認め(無増悪生存期間中央値14ヶ月),21例は胸郭内,12例は遠隔臓器での増悪(うち10例は脳転移)であった.脳転移増悪例の過半数では放射線治療とともにゲフィチニブが3ヶ月以上継続され,生存期間中央値は28.2ヶ月と極めて良好であった.耐性遺伝子変異T790Mは全て原発巣近傍から検出された.<b>結論</b>.ゲフィチニブ治療例においては異なる増悪形式が認められ,それぞれの機序をふまえた治療法の開発が望まれる.<br>