著者
深浦 順一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.125, no.3, pp.252-257, 2022-03-20 (Released:2022-04-06)
参考文献数
10

近年の医療・介護・福祉の領域では, 患者・利用者中心のサービス提供が求められ, その実現のために多職種連携が重要視されている. 現在, 言語聴覚療法は医療機関中心から介護保険事業所での提供へ, 入院から地域での提供へと拡大している. このような変化の中における多職種連携の現状と課題について述べる. 言語聴覚士は, 言語聴覚障害と摂食嚥下障害に対して評価, 訓練・指導等を実施している. 医療施設においては,医師, 歯科医師との緊密な連携のもと, 障害によって連携する職種は多岐にわたる. 院外の関係職種との連携も必要となることが多く, 聴覚障害では補聴器・人工内耳関係者, 小児の言語聴覚障害では保育・教育関係者との連携も重要となる. 近年の超高齢社会においては, 言語聴覚療法の提供は地域で介護保険によって提供されることが多くなった. この際には介護支援専門員, 介護福祉士, 訪問介護員との連携が必須である. この地域における多職種連携において, 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会で進められている診療所における言語聴覚士の雇用促進の取り組みは重要である. この取り組みは, 急性期・回復期病棟の言語聴覚士との連携で病院から地域への流れを支えるだけでなく, 教育や福祉を含む多職種連携という横の繋がりを進め, 地域包括ケアシステムを支える大きな力になると考えている. 新型コロナ感染症の拡大は, 外来患者と摂食嚥下障害患者に対する言語聴覚療法の提供に大きな影響を与えた. 本協会では, 多職種連携の質を高めるためには言語聴覚士としての専門性の向上が必要であると考え, 生涯学習事業の推進・充実に努めている. 関連する医学会, 団体の協力も得て, 今後も事業を進めていきたい.
著者
村上 健 深浦 順一 山野 貴史 中川 尚志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.27-31, 2016 (Released:2016-02-23)
参考文献数
20

変声は14歳前後に完了するといわれている.今回,20代で声の高さの異常を他者に指摘されて初めて症状を自覚し,当科を受診した変声障害2症例を経験した.2症例とも第二次性徴を完了しており,喉頭に器質的な異常は認められなかった.話声位は男性の話声位平均値よりも高い数値を示したが,声の高さの異常に対する本人の自覚は低かった.初診時にKayser-Gutzmann法,咳払い,サイレン法により低音域の話声位を誘導後,低音域の持続母音発声から短文まで音声訓練を行い,声に対する自己フィードバックも実施した.訓練は1~2週に1回の頻度で実施した.2例とも訓練初回に話声位を下げることが可能であったが,日常会話への汎化に時間を要した.個性を尊重するなどの学校社会における環境の変化が,本人の自覚を遅らせ,診断の遅れにつながったのではないかと推測した.
著者
村上 健 深浦 順一 山野 貴史 中川 尚志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.27-31, 2016

変声は14歳前後に完了するといわれている.今回,20代で声の高さの異常を他者に指摘されて初めて症状を自覚し,当科を受診した変声障害2症例を経験した.2症例とも第二次性徴を完了しており,喉頭に器質的な異常は認められなかった.話声位は男性の話声位平均値よりも高い数値を示したが,声の高さの異常に対する本人の自覚は低かった.初診時にKayser-Gutzmann法,咳払い,サイレン法により低音域の話声位を誘導後,低音域の持続母音発声から短文まで音声訓練を行い,声に対する自己フィードバックも実施した.訓練は1~2週に1回の頻度で実施した.2例とも訓練初回に話声位を下げることが可能であったが,日常会話への汎化に時間を要した.個性を尊重するなどの学校社会における環境の変化が,本人の自覚を遅らせ,診断の遅れにつながったのではないかと推測した.