著者
富里 周太 矢田 康人 白石 紗衣 和佐野 浩一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.363-370, 2020-05-20 (Released:2020-06-05)
参考文献数
21

吃音症へのアプローチとして認知行動療法 (CBT) が注目を浴びているが, 本邦からその効果を検討した報告は少ない. 今回われわれは吃音に特化した低強度 CBT によって, 一定の介入を終えた成人吃音の症例について報告する. 対象は吃音外来を受診した成人11症例 (22~47歳, うち2名女性) とした. CBT の治療として, 吃音が社交不安に関連することを教育し, 曝露療法などの社交不安への対処を取り扱った. また言う直前に行ってしまう「リハーサル」について取りあげ,「吃音が生じるかどうか」から注意をそらすことを指導した. 5回のカウンセリングの前後において, 日本語版リーボヴィッツ社交不安尺度 (LSAS-J) と日本語版 Overall Assessment of the Speaker's Experience of Stuttering for Adults(OASES-A) の値は統計学的に有意な改善を示し, 吃音に併存する社交不安や抱える困難が軽快したと考えられた. 改訂版エリクソン・コミュニケーション態度尺度 (S-24) と吃音頻度は改善傾向を認めたものの有意差を認めなかった. CBT は, 吃音に併存する社交不安やクライアントが抱える困難の軽快といった効果があることが示唆された.
著者
平賀 良彦 大石 直樹 小島 敬史 和佐野 浩一郎 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.125-130, 2017 (Released:2019-02-13)
参考文献数
20

側頭骨の放射線骨壊死(ORN)は放射線照射後に生じる晩発性障害の一つで、しばしば治療に難渋する。今回我々は放射線照射後の難治性中耳炎に対し、中耳根本術に側頭筋弁での充填と外耳道閉鎖術を併用した手術(充填型中耳根本術)を施行することで耳漏を停止することができた症例を経験した。症例は74歳、女性。X-17年に頭蓋内軟骨性骨肉腫に対し手術および放射線治療後に難治性の左慢性中耳炎を発症し左難聴は徐々に進行し聾となった。持続する耳漏に対してX年に乳突削開術および鼓室形成術wo型を施行したが耳漏の改善は認めなかった。そこで、X+2年に充填型中耳根本術を施行したところ耳漏を停止することができ、患者のQOLを大きく改善することができた。本術式はORNに伴う難治性中耳炎に有効な術式である可能性が示唆された。
著者
鈴木 法臣 和佐野 浩一郎 川﨑 泰士 行木 英生
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.305-310, 2014 (Released:2015-03-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2

甲状腺癌のうち,高分化癌(濾胞癌,乳頭癌)は予後良好といわれているが,その中にも再発を反復,遠隔転移を来たすことで予後不良の経過をたどる一群が存在する。甲状腺癌の根治性をさらに高め,生存率を向上させるためにはこの予後不良群に対する診療方針の検討が必要と考えられる。当科における過去11年間の甲状腺高分化癌137例を対象として,再発規定因子を検討したところ,術後の病理所見で「静脈浸潤あり」,「頸部外側区域リンパ節転移あり」,「甲状腺被膜外浸潤あり」が再発規定因子になるという結果を得た。再発のリスクが高いと予測される高分化癌症例に対する今後の治療方針の指標作成を目指した。