著者
松本 茜 淺井 智子 石橋 ちなみ 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.65, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】食肉加工品への食塩添加はミオシンの可溶化,ゲル形成能,そしてテクスチャーに大きく影響する。しかし,ソーセージ等とは異なり,低い食塩添加量であるハンバーグにおける食塩の役割は明らかではない。一方,近年,食事の食塩量を減少すること推奨されているが,食塩の有する調理特性を考慮しなければ,嗜好性を損なうこととなる。我々はこれまでに,牛ひき肉と玉ねぎのみのハンバーグにおいて,食塩量の減少がテクスチャーを変化させ,嗜好性を低下させることを明らかとした。本報告では,パン粉の配合が食塩量を減少させたハンバーグのテクスチャーへ及ぼす影響について報告する。【方法】牛ひき肉250gに肉重量の0%,0.5%,0.8%,1.0%のNaClを加え,フードプロセッサーで30秒間混捏した。その後,炒め玉ねぎ37.5gおよびパン粉25gを水25gで湿らせて加えて,さらに30秒間混捏した。セルクル(Ø70mm)で50gずつ成型後,220℃で8分間の加熱を行った。調製したハンバーグの静的粘弾性測定(テクスチャーアナライザーEZ-S,島津),走査電子顕微鏡観察(JSM-5800LM,JEOL),官能評価を行った。【結果】静的粘弾性測定の結果, NaCl濃度に関わらず,パン粉の添加によって硬さは著しく低下した。凝集性はパン粉の添加によって,NaClを添加していない場合に低くなった。官能評価の結果,NaCl濃度に関わらず,パン粉の添加によって軟らかく,脆く,もそもそしたテクスチャーが感じにくいと評価されたが,NaClを加えていないものの総合評価は低かった。走査電子顕微鏡観察では,これらの結果を裏付ける組織構造が観察された。これらのことから,低濃度の食塩添加量であっても,パン粉の配合により,テクスチャーが改善され,嗜好性が向上することが明らかとなった。
著者
淺井 智子 石橋 ちなみ 杉山 寿美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 食肉加工品への食塩添加はミオシンの可溶化およびゲル形成能に関与し,製品のテクスチャー等に大きく影響する。しかし,ソーセージなどとは異なり,低濃度の食塩が添加されるハンバーグにおける食塩添加や添加後の混捏操作の影響は明らかではない。一方,近年食事に含まれる食塩量の減少が推奨されているが,食塩の有する調理特性を考慮しなければ,最終製品の嗜好性を損なう。そこで,本研究では,ハンバーグのテクスチャーに及ぼす食塩添加量,混捏程度の影響を検討した。<b>方法</b> 牛ひき肉300gに肉重量の0%,0.5%,0.8%,1.0%の食塩を加えた。フードプロセッサーで20秒又は80秒間混捏した後,炒め玉ねぎ45gを加え,10秒間混捏した。50gずつセルクル(&Oslash;70mm)で成型後,220℃で8分間の加熱を行った。調製したハンバーグの静的粘弾性測定(テクスチャーアナライザーEZ-S,島津),走査電子顕微鏡観察(JSM-5800LM,JEOL),官能評価を行った。また,食塩添加量の異なる牛ひき肉の動的粘弾性測定(RS6000,Thermo HAAKE)も行った。<b>結果</b> 静的粘弾性測定の結果,混捏90秒では,NaCl濃度が高いほど軟らかくなること,また,混捏30秒と比較して0.5%NaClまでは硬く,0.8%までは凝集性が高いが,それ以上の濃度では混捏時間による影響が小さくなることが示された。また,官能評価の結果,混捏90秒ではNaCl濃度が低い場合に,硬く,もろくないと評価された。走査電子顕微鏡観察では,これらの結果を裏付ける組織構造が観察された。動的粘弾性測定における温度依存測定の結果では,NaClを添加していない場合はG&rsquo;G&rdquo;の上昇開始温度が40℃付近である一方,添加した場合は30℃付近となり,その後の温度上昇に伴うG&rsquo;G&rdquo;の挙動もNaCl濃度によって異なっていた。これらより,低濃度の食塩添加であっても,ハンバーグのテクスチャーや組織構造に違いが生じることが明らかとなった。
著者
淺井 智子 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.20, 2014 (Released:2014-08-29)

【目的】乳化特性を有する卵は油脂を配合しやすく,その加熱ゲルは特有のテクスチャーとなる。我々は,これまでに,乳脂肪クリームを配合したオムレツは脆弱な,菜種油を配合したオムレツはしなるような硬さ(軟らかさ)テクスチャーとなることを確認している。本報告では,これら特有のテクスチャーへの配合油脂の影響について,冷却遠心分離による脂質分画等によって検討した。【方法】オムレツは,卵液(卵黄35gと卵白65g)に,「乳脂肪クリーム30ml」,「菜種油18ml+水12ml」,「水30ml」のいずれかを加え,200℃で攪拌加熱して調製した。分析には,加熱前(10℃)および加熱過程(65℃,75℃),加熱後(80℃)の試料を用いた。試料をストレーナーに通した後,冷却遠心分離による脂質分画を行った。得られた3画分からBligh&Dyer法で脂質抽出を行い,脂肪量,リン脂質中リン量を測定した。また,SDS-PAGEは,Laemmliの方法で行った。【結果】冷却遠心分離による脂質分画の結果,卵黄脂肪は加熱前には中層に,その後は下層に多く分画され,乳脂肪クリームは加熱前後ともに上層に分画された。菜種油を配合したオムレツは,卵黄単独の場合と同様に,加熱後に,下層の脂肪量が多くなり,上層にも多く分画された。乳脂肪クリームを配合したオムレツは,加熱前においても下層の脂肪量が多く,加熱後も上層の脂肪量は少なかった。このことから,加熱により菜種油や乳脂肪クリームが卵たんぱく質に抱合され,乳脂肪クリームでその程度が大きいことが推察された。このことは,脂肪酸組成等の結果からも確認された。SDS-PAGEからは,乳脂肪クリームを配合したオムレツではオボアルブミンの加熱変性の程度が低いことが示唆された。
著者
角田 美紀子 野村 希代子 淺井 智子 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.9, 2014 (Released:2014-08-29)

【目的】和食の美味しさは汁や菜を白飯と組み合わせることで成立し,汁は欠かせない。一方,生活習慣病の増加により食事全体,特に汁の塩分量の減少が求められている。しかし,飯と組み合わせた時の汁の塩味の嗜好性,すなわち食事の美味しさを保つ塩味の範囲に関する検討はなく,実際の食事における「減塩」の許容範囲は明らかでない。我々は,これまでに汁と飯の食べ方や汁の具により,汁物の塩味の嗜好性が影響されることを報告している。本報告では,レモン外皮を加えた汁物の塩味の嗜好性について報告する。【方法】官能評価は,レモン外皮を加えた塩分濃度0.4-0.9%のみそ汁,すまし汁について行った。汁に白飯あるいは桜飯(0.6%塩分)を組み合わせ,「汁の次に飯を食す(汁→飯)」「飯の次に汁を食す(飯→汁)」の場合について,汁物として最も好ましい塩分濃度,汁物として許容できる塩分濃度を選択させた。【結果】レモン外皮を加えた汁の最も好ましい塩分濃度は,レモン外皮を含まない場合と比較して,みそ汁では低濃度側に,すまし汁では高濃度側に移行した。また,すまし汁では,幅広い塩分濃度の汁が許容された。飯と組み合わせて食べた場合は,すまし汁と白飯の組み合わせを除き,最も好ましい塩分濃度は低濃度側にシフトし,低濃度(0.5-0.6%)の汁を許容できるとした者が増加した。これらのことから,レモン外皮を加えた汁物では,汁単独では低い塩分濃度の汁の嗜好性が低くなる場合がある一方で,飯と組み合わせて食べた場合では低い塩分濃度の汁物が許容され,実際の食事における「減塩」へのレモン外皮の活用の可能性が示唆された。