著者
清原 悠
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.205-223, 2013 (Released:2014-09-30)
参考文献数
38

本稿の目的は, 1966年から81年にかけて展開した横浜新貨物線反対運動を事例に, 住民運動がいかなる地域環境において立ち上がってくるかを, 人口動態, 保守/革新の両者の地縁組織のあり方, 居住環境の整備のされ方から検討することである. そのなかで明らかにしたことは, 住民運動という概念は運動の当事者によって自らの運動を名指すべく使われた語彙であり, 他の社会運動概念と異なり分析概念ではなく当事者概念であったという点である. 住民運動という概念の最も早い使用は60年代の横浜であり, 当時の横浜は人口流入が激しく, 住民たちは政治的志向において保守から革新まで含んでおり, このなかで運動を構成していくためには, 保守/革新からは距離をおいた運動表象が必要であったのである. また, 住民運動概念は革新側が新住民を自らの政治的資源として動員するべく使用し始めたのであるが, 革新自治体であった横浜市と対立した横浜新貨物線反対運動がそれを内在的に批判し, 換骨奪胎して革新勢力から自立した運動を展開するものとして転用したものであった. そして, 革新側から自立した運動を展開できたか否かは地域環境の整備のあり方に関係があり, 大規模団地造営がなされた地区においては, そこに目を付けた革新勢力によって事前に革新勢力の地域ネットワークが構成されており, このような地区が後に反対運動から離脱することになった点を明らかにした.
著者
清原 悠
出版者
ソシオロゴス編集委員会
雑誌
書評ソシオロゴス (ISSN:18829414)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-38, 2012 (Released:2018-03-06)
参考文献数
55
著者
清原 悠
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.205-223, 2013

本稿の目的は, 1966年から81年にかけて展開した横浜新貨物線反対運動を事例に, 住民運動がいかなる地域環境において立ち上がってくるかを, 人口動態, 保守/革新の両者の地縁組織のあり方, 居住環境の整備のされ方から検討することである. そのなかで明らかにしたことは, 住民運動という概念は運動の当事者によって自らの運動を名指すべく使われた語彙であり, 他の社会運動概念と異なり分析概念ではなく当事者概念であったという点である. 住民運動という概念の最も早い使用は60年代の横浜であり, 当時の横浜は人口流入が激しく, 住民たちは政治的志向において保守から革新まで含んでおり, このなかで運動を構成していくためには, 保守/革新からは距離をおいた運動表象が必要であったのである. また, 住民運動概念は革新側が新住民を自らの政治的資源として動員するべく使用し始めたのであるが, 革新自治体であった横浜市と対立した横浜新貨物線反対運動がそれを内在的に批判し, 換骨奪胎して革新勢力から自立した運動を展開するものとして転用したものであった. そして, 革新側から自立した運動を展開できたか否かは地域環境の整備のあり方に関係があり, 大規模団地造営がなされた地区においては, そこに目を付けた革新勢力によって事前に革新勢力の地域ネットワークが構成されており, このような地区が後に反対運動から離脱することになった点を明らかにした.
著者
竹田 恵子 清原 悠 吉良 智子
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.219-241, 2023-03-30

In this paper, we reveal the situation of education on gender/sexuality at Japanese art universities based on both qualitative and quantitative research.We conducted qualitative research from April to December 2021. We had 10 participants, including 5 students and 5 educators, affiliated with 5 universities. In our quantitative research, we found that the situation of gender consciousness varied greatly across universities. At the most enlightened universities, students do not feel a gender gap; however, some students revealed there were sexual assaults and sexual harassment at a few universities. At all the universities we investigated, gender education was not a compulsory subject and was fragmented. Some participants suggested that there was a gap in gender consciousness between male and female students. And an educator suggested that there was a high degree of homosociality between male educators and male students. Almost all participants do not know or use the harassment-prevention system at their universities, or otherwise answered that they cannot trust such systems provided by universities.We then conducted quantitative research from December 2021 to May 2022 at 8 universities and the number of valid responses was 161. Unfortunately, the proportion of male students who answered the quantitative research was too small (18 responses),even though the proportion of male students in fine art is about 30%. This suggests that some male students avoid gender-related issues.In our quantitative research, the data says the circumstance of creation for students is relatively good. On the other hand, the willingness to take gender/sexuality-related courses is generally quite high, with 77%(gender-related courses)and 80.7%(sexuality-related courses)of the respondents answering either “very much” or “fairly much” to the question of whether they would be willing to take such courses. However, the level of knowledge related to gender/sexuality was not high except for a few subjects. More than 50% of students say they cannot trust the harassment-prevention system in their universities. Moreover, more than 50% of students do not know about this system.Through this survey, we can fully recognize the need for gender/sexuality education, especially the need to open gender/sexuality-related courses, and the need for awareness-raising for harassment prevention.本稿では、2020~2021年度に実施した美術大学におけるジェンダー/セクシュアリティ教育の実態調査の概要と結果を示す。近年、芸術分野におけるハラスメントや、ジェンダー・ギャップが問題となり、統計的手法を用いた調査を行おうとする動きが高まっている(竹田2019;表現の現場調査団2022)。美術教育に関する先行研究においても、そもそも女性に対する美術教育は「良妻賢母教育」の一環として行われ、男子学生のカリキュラムにはない「手芸」的要素が含まれていたことが指摘されている(山崎2010)。戦後には国立の美術大学にも女性が入学できるようになり一見平等が達成されたかのようであるが、教員数・学生数のジェンダー比や、美術館に収蔵されている作品の作者、美術館の館長のジェンダー比などを確認すると、そうではないことがわかる(竹田2019)。本稿ではこの実態をさらに詳しく明らかにするために、質的手法、量的手法の両面から調査を行った。質的調査(インタビュー調査)は2020年4月から12月にかけて行った。量的調査(アンケート調査)は電子化し、2021年12月9日から2022年5月31日に実施された。最終的な有効回答数は161である。なお、学校基本調査の美術専攻において3割程度存在する男子学生であるが、量的調査に回答した男子学生の割合は18名(11.2%)で非常に少ない。このことから、男子学生のなかにジェンダーやセクシュアリティに関する事柄に対する忌避意識が存在する可能性がある。結果をつぎから示す。芸術創造環境は質的調査では、大学ごとあるいは大学内の学部・学科ごとにかなり異なることが示唆されたものの、量的調査ではおおむね良好であるという結果となった。また、質的調査においては男子学生と女子学生のジェンダーに対する意識の差、男子学生と男性教員とのホモソーシャルが指摘された。量的調査・質的調査の結果からハラスメント相談室やハラスメント防止ガイドラインの存在の認知度および信頼度に関しては改善の余地があると考えられる。ジェンダー/セクシュアリティ関連科目の有無についてシラバスを検索したところ、多い大学は49少ない大学は9という結果であった。さらにそれらの科目は必修ではないため、受講生の興味によっては、知識獲得水準に格差が出てしまう。実際、ジェンダー/セクシュアリティ関連知識のレベルは一部を除き高いとは言えない。一方ジェンダー/セクシュアリティ関連科目の受講への意欲は「とても思う」「まあ思う」をあわせて77%(ジェンダー関連科目)80.7%(セクシュアリティ関連科目)とかなり高い。またクロス集計の結果から、大学の友人・知人間での「ジェンダーの話題」と「セクシュアリティの話題が出る群の方が、ジェンダー/セクシュアリティの授業を受講したいと考える傾向が有意に高いこと、また「ジェンダーの話題」と「セクシュアリティの話題」の回答の傾向が似通っていることが確認できた。大学におけるジェンダー/セクシュアリティの話題の経験に応え得るものとして、ジェンダー/セクシュアリティ教育への需要が存在することを示す結果と言えよう。本調査を通してジェンダー/セクシュアリティ教育、特にジェンダー/セクシュアリティ関連科目開講および必修化の必要性、ハラスメント予防啓発の必要性が十分に認識できる結果となった。