著者
宮本 一平 清水 哲男 日鼻 涼 神野 優介 藤原 大士 淺井 康夫 權 寧博
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.387-391, 2022-09-25 (Released:2022-10-08)
参考文献数
10

背景.気管支動脈蔓状血管腫は気管支動脈の拡張・蛇行を特徴とした血管の形態異常であり,喀血の鑑別疾患に挙げられる稀な疾患である.喀血をきたす肺疾患として,肺結核症や気管支拡張症,肺癌などは頻度の高い疾患であるがその原因が明らかでない場合,特発性肺出血と診断されることが多い.症例.59歳男性が喀血を主訴に来院した.胸部CTで右肺にすりガラス陰影を認め,気管支鏡検査では右B3入口部に凝血塊を認めた.気管支動脈造影(bronchial arteriography:BAG)で右気管支動脈上枝に血管異常を認め,気管支動脈蔓状血管腫と診断し気管支動脈塞栓術(bronchial artery embolization:BAE)を施行した.その後血痰は消失し現在まで再発なく経過している.本症例は今回の発症の19年前に左気管支動脈蔓状血管腫に対しBAEを行っていた.前回のBAGでは右気管支動脈に異常血管は認めず,二次性気管支動脈蔓状血管腫と診断した.二次性の原因としては炎症や腫瘤は認めず,喫煙が蔓状血管腫の成因に関係している可能性がある.結論.重喫煙者の特発性喀血症では,二次性気管支動脈蔓状血管腫の発症も鑑別に挙げ,BAGの施行を検討すべきである.禁煙管理で喀血再発の有無をフォローアップすることが今後の外来診療において重要となる.
著者
高橋 典明 佐藤 良博 清水 哲男 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.175-178, 2014-08-31 (Released:2015-11-13)
参考文献数
9

肺がんにおける緩和ケアは他のがんと基本的に同じである.ただし,肺がんはがんのなかでも予後が不良で,他のがんよりも疼痛ばかりでなく咳や呼吸困難などの呼吸器症状が伴いやすい.そのため病名告知されるだけでも精神的負担は特に強い.したがって,肺がんにおいて身体的,精神的,社会的およびスピリチュアルな苦痛に対する緩和ケアはきわめて重要であり,早期から緩和ケアを実施することは肺がん患者の延命にもつながる重要な要素である.肺がん終末期の身体的苦痛として呼吸困難の頻度は高く,臨床的に問題となることも多い.呼吸困難の治療は原因病態に対する治療が第一であるが,複数の原因が絡み合い難治性で不可逆的なことも多い.その呼吸困難に対する薬物治療としてモルヒネは第一選択とされ,日本緩和医療学会の「呼吸器症状の緩和に対するガイドライン」でも推奨されている.しかし,その有効性については一定の見解は得られていないのが実情である.そのことを踏まえて,肺がん終末期医療の実情について,呼吸困難に対するモルヒネ投与を例にとって検討し,さらに非がん性呼吸器疾患に対する終末期医療との比較についても述べる.
著者
田沼 英樹 出口 弘 清水 哲男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.63-63, 2005-04-15
被引用文献数
3

私たちはエージェントベースシミュレーションのための新たなプラットフォームとしてSOARS(Spot Oriented Agent Role Simulator)という言語を開発した.SOARS は当初,病院内でのSARS院内感染シミュレーションを行うための記述言語として開発された.病院内では医師,看護師,患者など様々な役割を持つ人々がそれぞれのルールに応じて複雑な社会的行動を行い,相互に影響を与えあう.これらの人々を自律的なエージェントと見なし,そこに協調,対立,あるいは無自覚の感染などの相互作用を入れることにより,一種の複雑系が構成される.そこで,このようなルール行動を抽象化したモデルを定義し,スクリプト言語として表現することにより,シンプルかつ柔軟にシミュレーションを記述することができる.SOARS 言語処理系の実装にはJava 言語を利用し,リフレクションを用いることにより柔軟な言語の拡張を可能にしている.そして,スクリプトのみで表現することが困難な処理については,Java のクラスを直接利用することができる.現在,SOARS の処理系は各エージェントについての処理を逐次的に行うが,言語モデル自体は処理の逐次性を仮定していない.将来的には別の処理系で並列分散処理が行える可能性があり,あるいは新たな並列処理アーキテクチャのパラダイムとして発展する可能性を秘めている.本発表ではSOARS モデル概念,スクリプト文法,処理系の実装,およびシミュレーション結果の実例について説明を行う.We developed a new language for agent-based simulation platform named SOARS (Spot Oriented Agent Role Simulator). At first, SOARS is developed for a simulation of SARS infection in a hospital. In hospital, there are various persons who play each role such as doctor, nurse and patient. They act complex social behavior as their own rules and interact with each other. We regard the persons as autonomous agents with interaction like cooperation, opposition, or unaware infection. And they construct a kind of complex system. We abstract the model of agents' rule actions and represent them as script language, and then we can describe simulations simple and flexible. We implement SOARS in Java language and enable functional expansion by Java reflection feature. Also, processes which are difficult to describe only by script language can be implemented in reinforcement by external Java classes. At present, SOARS implementation processes agents one by one, but the language model does not assume consecutiveness of the processes. In the future, other implementation can be parallel and distributed, and may provide a new paradigm of parallel processing architecture. In this presentation, we explain SOARS modeling concept, grammar of script language, detail of implementation, and example of simulation.