著者
高橋 典明 佐藤 良博 清水 哲男 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.175-178, 2014-08-31 (Released:2015-11-13)
参考文献数
9

肺がんにおける緩和ケアは他のがんと基本的に同じである.ただし,肺がんはがんのなかでも予後が不良で,他のがんよりも疼痛ばかりでなく咳や呼吸困難などの呼吸器症状が伴いやすい.そのため病名告知されるだけでも精神的負担は特に強い.したがって,肺がんにおいて身体的,精神的,社会的およびスピリチュアルな苦痛に対する緩和ケアはきわめて重要であり,早期から緩和ケアを実施することは肺がん患者の延命にもつながる重要な要素である.肺がん終末期の身体的苦痛として呼吸困難の頻度は高く,臨床的に問題となることも多い.呼吸困難の治療は原因病態に対する治療が第一であるが,複数の原因が絡み合い難治性で不可逆的なことも多い.その呼吸困難に対する薬物治療としてモルヒネは第一選択とされ,日本緩和医療学会の「呼吸器症状の緩和に対するガイドライン」でも推奨されている.しかし,その有効性については一定の見解は得られていないのが実情である.そのことを踏まえて,肺がん終末期医療の実情について,呼吸困難に対するモルヒネ投与を例にとって検討し,さらに非がん性呼吸器疾患に対する終末期医療との比較についても述べる.
著者
松本 健 高橋 典明 植松 昭仁 大木 隆史 権 寧博 岩井 和郎 中山 智祥 橋本 修
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.171-178, 2012-09-27 (Released:2013-01-23)
参考文献数
20

症例は38 歳の男性.胸部異常陰影,ぶどう膜炎を指摘され紹介受診した.胸部X線検査にて両側肺門リンパ節腫脹,両中下肺野の小結節陰影を認め,TBLBにて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を証明した.緩やかな血清ACE値上昇と小結節陰影の増加を認めていたが,症状や呼吸機能障害を認めず,経過観察としていた.初診時より5年後に偶発的と思われる肺結核症を発症した.入院にて抗結核薬(INH,RFP,EB,PZA)治療を開始した.結核治療中,一時的に血清ACE値低下を認めたが,抗結核薬治療終了後より肺野病変の増悪と血清ACE値上昇を認めた.結核性病変の進展あるいはサルコイドーシスの活動性上昇を疑い,再度TBLBを行ったが結核菌を認めず,サルコイドーシスに矛盾しない所見であった.現在まで経過観察中であるが,無治療にてサルコイドーシスは寛解状態に至った.これまでに結核治療を契機に寛解状態に至ったサルコイドーシスの報告はなく,非常に稀な例であり,文献的考察を加え報告する.
著者
赤星 俊樹 吉澤 孝之 岩城 基 村上 正人 高橋 典明 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.215-219, 2009-12-28 (Released:2016-10-07)
参考文献数
11

COPDにおける終末期の定義は,明確に示されていない.一般に,終末期とは「疾患の進行に伴う症状に対して治療は可能であるが,原疾患に対しては治療による効果が期待できない状態」と定義され,およそ余命6ヵ月と予測される時期である.COPDの終末期では,高度な呼吸困難や運動耐容能の低下がみられ,医学的のみならず社会的問題をも含有することが多い.本稿では,こうした諸問題と終末期医療や緩和ケアの重要性について述べたい.
著者
須金 紀雄 辻野 一郎 山崎 哲男 高橋 典明 赤柴 恒人 澤田 海彦 堀江 孝至
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.307-313, 2003-08-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
18

目的. cyclosporin Aの溶媒として用いられているCremophor ELのetoposide (VP-16) の抗腫瘍効果増強についてヒト肺癌細胞株を用いて検討した. 方法. 細胞生存率の測定には, ヒト肺腺癌細胞株 (PC-14), ヒト類上皮癌細胞株 (KB), ヒト肺小細胞癌細胞株 (H69) に対してgrowth inhibition assayを行った. さらに, PC-14に対してはinvitro clonogenic assayも行った. 各細胞系における抗腫瘍剤の細胞内蓄積量の差を [3H] VP-16を用いて比較検討した. MDR1 (multidrug resistance) 遺伝子の発現に関するmRNAの測定には, 定量的PCR法を用いた. 結果. PC-14において, in vitro clonogenic assayでCremophorELの濃度が250μg/mlの条件下ではVP-16単剤に対して100倍以上の殺細胞効果増強が認められた. VP-16の細胞内蓄積量はPC-14, A549 (ヒト肺腺癌細胞株) において有意な増加が認められた. また, MDR遺伝子のmRNAの増幅はPC-14, A549において認められなかった. 結論. Cremophor ELは肺腺癌細胞におけるVP-16の殺細胞効果を増強し, これはVP-16の細胞内蓄積量の増加が原因と考えられた. そしてこの現象は, MDR遺伝子の発現に関連したものではないと考えられた.