著者
出口 剛司 赤堀 三郎 飯島 祐介 伊藤 賢一 渡會 知子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、社会学の公共性を実現する条件を理論及び学説史の研究によって明らかにすることにある。上記課題を実現するために五つの論点の考察した。1.ヴェーバー「価値自由」テーゼの批判的継承、2.批判的社会理論とN.ルーマンの社会システム論の再検討、3.ドイツにおける国法学、公共性研究とフランスの中間集団論との比較、4.ドイツにおける社会理論と法学の関係についての考察、5.ネット時代の個人化と社会的連帯の変容の解明である。その結果、理論が自己の正当化実践を行うことを通して、また社会的現実を別様に記述することにより、政策課題を設定=再設定することで通して、社会学の公共性が実現しうるという結論を得た。
著者
渡會 知子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.600-614, 2006-12-31

本稿では, 相互作用過程における「排除」の問題が, しばしば問題の存否そのものを争点とせざるをえない点に注目し, そのような排除問題の特質を生み出す論理的構造を, ルーマンの「包摂/排除」論を応用することによって解明する.<BR>相互作用過程における排除を分析することの困難は, 対面的な排除が, 必ずしも露骨な加害行為や言語的暴力を伴うわけではないということにある.すなわち, 実証主義的に観察可能な行為の事実性にのみ基づくならば, 排除という経験のリアリティに迫りがたく, 他方, その経験を個人的な認識の問題に還元するなら, 排除の社会的側面を捉えにくい.<BR>本稿では, N.ルーマンによる「包摂/排除」の定義を, 「パーソン」, 「理解」, 「ダブル・コンティンジェンシー」の諸概念とともに検討していく.それによって, コミュニケーションの成立を基底で支える「意味をめぐる包摂/排除」という関係に焦点を当てる.相互作用システムをこの次元で捉えることにより, 包摂と排除が単純な二項対立図式では捉えられないこと, また, 包摂は必ずしも排除の解決を意味せず, むしろ問題は包摂の在り方を主題化することで解決が図られるべきであることを指摘したい.<BR>