著者
赤川 学 出口 剛司 宮本 直美 新島 典子 柄本 三代子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究は、猫に関する社会学的知見を共同研究のなかで蓄積し、「猫社会学」を創設することを目的とする。近年、猫と人間の関わりは他の動物やペットよりも深化している。本研究は、そうした関係の深化が、現代社会のマクロな社会構造の変容によって生起していると想定し、そのミクロなプロセスを、家族、感情、文化、社会運動などの諸側面に即して記述し、文明史的な社会理論によって解釈する。そのために、(A)猫を飼った経験がある人や保護猫活動当事者へのインタビュー調査、(B)猫好きな人の社会的・心理的特性や活動のアンケート調査、(C)猫ブームに関する言説のテキストマイニング、(D)上記データの理論的解釈を実施する。
著者
出口 剛司
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.16-28, 2010 (Released:2020-03-09)

『権力の批判』、『承認をめぐる闘争』、『正義の他者』といった主要な著作の翻訳が刊行される中、アクセル・ホネットの承認論が社会学理論の分野でも注目を集めている。しかし、ホネット自身の社会批判の内実については、かならずしも明確にされていない。それに対して本稿では、ホネットの著作の再構成を通して、その批判理論としての特徴と可能性の中心を明らかにすることをめざす。ホネットは「学以前のレヴェルにある解放の審級」という視座に立つことによって、フランクフルト学派の批判理論の伝統の中に自身を位置づけると同時に、語用論的形式主義に流れるハーバーマスとの距離化をはかっている。本稿ではまず、ホルクハイマーの問題関心に遡って批判理論の特徴を確認しつつ、そのコンテクストに第一世代、第二世代のハーバーマス、第三世代のホネットそれぞれの社会理論を位置付ける。つづいて、ホネットが「自己実現」の可能性の条件としての承認の「形式」に注目することによって、一方で内容ある善き生というコンセプトを堅持した批判理論を構築し、他方で特定の伝統的内容に依拠した価値の実体化を回避しようとした点を確認する。さらに「資本主義的近代化のパラドックス」というコンセプトのもとで進められているホネットとハルトマンのネオリベラリズム批判を取り上げる。そこで、ヘーゲルに由来する三つの承認形式を四つの承認領域として立体的に再構築することによって、ネオリベラリズムにおける承認構造の変化とその問題性を批判する視座を手にすることができた点を明らかにする。
著者
出口 剛司
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.422-439, 2011-03-31 (Released:2013-03-01)
参考文献数
28

これまで精神分析は,社会批判のための有力な理論装置として社会学に導入されてきた.しかし現在,社会の心理学化や心理学主義に対する批判的論調が強まる中で,心理学の1つである精神分析も,その有効性およびイデオロギー性に対する再審要求にさらされている.それに対し本稿は,批判理論における精神分析受容を再構成することによって,社会批判に対し精神分析がもつ可能性を明らかにすることをめざす.一方,現代社会学では個人化論や新しい個人主義に関する議論に注目が集まっている.しかしその場合,個人の内部で働く心理的メカニズムや,それに対する批判的分析の方法については必ずしも明らかにされていない.そうした中で,受容史という一種の歴史的アプローチをとる本稿は,精神分析に対する再審要求に応えつつ,また社会と個人の緊張関係に留意しつつ,個人の側から社会批判を展開する精神分析の可能性を具体的な歴史的過程の中で展望することを可能にする.具体的に批判理論の精神分析受容時期は,1930年代のナチズム台頭期(個人の危機),50年代,60年代以降の大衆社会状況(個人の終焉),90年代から2000年代以降のネオリベラリズムの時代(新しい個人主義)という3つに分けられるが,本稿もこの分類にしたがって精神分析の批判的潜勢力を明らかにしていく.その際,とくにA. ホネットの対象関係論による精神分析の刷新とその成果に注目する.
著者
景井 充 大谷 いづみ 中井 美樹 天田 城介 崎山 治男 出口 剛司 中里 裕美
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

長きにわたって日本社会の基盤であり続けてきた、日本独特の<社会的なるもの>が、1990年代後半に始まった新自由主義的な社会変革によって、急速に喪われつつある。このことを、社会階層やライフスタイルの変化、「心理主義」の広範な浸透、ケアの個人化、生命倫理に関わる言説の変化に着目して、理論的および実証的に明らかにした。また、そうした状況を踏まえて、今後新たな社会的連帯を再構築するための基本的方向性を検討した。
著者
赤堀 三郎 出口 剛司 飯島 祐介 堀内 進之介 河合 恭平 磯 直樹
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、今日勃興しつつある信用スコアサービス、およびその基礎にある与信管理技術に関し、受容意向という側面に着目し、社会学の立場からこの種の対象を総合的に扱うための枠組を構築しようとするものである。すなわち、第一に、信用スコアに関するデータを収集・整理し、国内外の社会学研究者や他分野の研究者のさらなる探究に資するデータベースを作成し、公開する。第二に、信用スコアの受容意向に関する実態調査を行い、結果を公表する。第三に、上記データベースと調査結果の分析および考察を通じ、「信用スコアの社会学」を確立し、与信管理技術を代表例とする新技術の社会的影響という広範なテーマを扱える社会学理論の創造をはかる。
著者
出口 剛司
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.422-439, 2011

これまで精神分析は,社会批判のための有力な理論装置として社会学に導入されてきた.しかし現在,社会の心理学化や心理学主義に対する批判的論調が強まる中で,心理学の1つである精神分析も,その有効性およびイデオロギー性に対する再審要求にさらされている.それに対し本稿は,批判理論における精神分析受容を再構成することによって,社会批判に対し精神分析がもつ可能性を明らかにすることをめざす.一方,現代社会学では個人化論や新しい個人主義に関する議論に注目が集まっている.しかしその場合,個人の内部で働く心理的メカニズムや,それに対する批判的分析の方法については必ずしも明らかにされていない.そうした中で,受容史という一種の歴史的アプローチをとる本稿は,精神分析に対する再審要求に応えつつ,また社会と個人の緊張関係に留意しつつ,個人の側から社会批判を展開する精神分析の可能性を具体的な歴史的過程の中で展望することを可能にする.具体的に批判理論の精神分析受容時期は,1930年代のナチズム台頭期(個人の危機),50年代,60年代以降の大衆社会状況(個人の終焉),90年代から2000年代以降のネオリベラリズムの時代(新しい個人主義)という3つに分けられるが,本稿もこの分類にしたがって精神分析の批判的潜勢力を明らかにしていく.その際,とくにA. ホネットの対象関係論による精神分析の刷新とその成果に注目する.
著者
出口 剛司 赤堀 三郎 飯島 祐介 伊藤 賢一 渡會 知子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、社会学の公共性を実現する条件を理論及び学説史の研究によって明らかにすることにある。上記課題を実現するために五つの論点の考察した。1.ヴェーバー「価値自由」テーゼの批判的継承、2.批判的社会理論とN.ルーマンの社会システム論の再検討、3.ドイツにおける国法学、公共性研究とフランスの中間集団論との比較、4.ドイツにおける社会理論と法学の関係についての考察、5.ネット時代の個人化と社会的連帯の変容の解明である。その結果、理論が自己の正当化実践を行うことを通して、また社会的現実を別様に記述することにより、政策課題を設定=再設定することで通して、社会学の公共性が実現しうるという結論を得た。
著者
出口 剛司
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

エーリッヒ・フロム(Erich Fromm, 1900-1980)の分析的社会心理学(Socialpsychology)は、おもにファシズム、大衆社会批判を目的とした権威主義研究、「父親なき社会」(ミッチャーリッヒ)、「ナルシシズムの時代」(ラッシュ)という言葉とともに、社会的権威の崩壊が指摘された1960年代後半以降に展開された破壊性・ナルシシズム研究に大別することができる。本研究の課題は、とくに後期の破壊性・ナルシシズム研究に照準を定め、思想史的、社会史的位置を確定しつつ、その現代的意義を探ることにあった。後期フロムにおける破壊性・ナルシシズム研究は、社会現象としてのニヒリズム及び思想運動としてのニヒリズム双方を射程におさめつつ、それらに対して提出された社会心理学的応答と位置づけることができる。思想的に見れば、人間学的観点から定義された人間的本質(human essence)としての実存的二分性(existential dichotomy)の概念は、ハイデガーによるヒューマニズム批判に対する彼独自の回答として位置づけられ、ポジティヴな「生の技法(art of living)」を構想する準拠点ともなっている。またフロムは、ニヒリズム的状況が生み出す病理現象をネクロフィリア、ナルシシズム、サディズム等の一連の社会心理学的概念を用いることによって、その生成メカニズムを理論的、経験的に把握することができたといえる。フロムがこのように思想的、現実的にニヒリズムと積極的に対決した時期は、まさに現代におけるポストモダン的状況が広まり始めた60年代後半から70年代にかけてのことであり、フロム社会心理学は、その意味で現代社会に噴出するさまざまな暴力現象を解明するための社会学的理論枠組みをわれわれに提供とするものと結論づけることができる。
著者
佐藤 健二 赤川 学 出口 剛司 祐成 保志 東 由美子 米村 千代 中筋 由紀子 野上 元 宮本 直美 佐藤 雅浩 武田 俊輔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は日本の社会学の調査史における従来の方法を再検討し、新たな方法論的枠組みを提出することにある。社会学史は伝統的に近代社会に対する理論を寄せ集めたものに過ぎず、フィールドワークや質問紙調査などを通じた経験的な観察がどんな社会認識を生みだしてきたかは無視されてきた。この研究は、ことばだけでなくモノや空間やメディアによって認識される社会を含む、新たな理論的・方法論的枠組みを提出する。さらに、新たなコンピュータ技術や映像メディアをデータの収集・整理のプロセスで使いこなす方法論的な枠組みをも展望する。こうした試みは、社会学の研究および教育に大きな貢献をなすであろう。
著者
リム ボン 東 自由里 大津留 智恵子 出口 剛司 吉田 友彦 轟 博志 デイビッド ウィリス 坂本 利子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究プロジェクトの成果は、主として、次の5つの点である。(1)NYのロワーイースト・サイド・マンハッタンで開花した文化力と地域再生力の本質を追跡した。とりわけ、歴史的建造物の保全と再生、さらにはこれらを活用した市民教育支援事業に熱心に取り組んでいるテネメント・ミュージアムやエルドリッジ・ストリート・ミュージアムの取材を重ね、それらの組織的基盤となっているNPOの役割を明らかにした。テネメント・ミュージアムは、近年新たな移民として渡米してきた人々に対する積極的な人権啓発と生活支援に関する教育事業を実施しているのであるが、同時に、地域の歴史的形成過程等の教育プログラムも実践している。(2)ミネソタ州における、アメリカで最も大きなモン系コミュニティの現状と政策の先進性を明らかにした。マジョリティとマイノリティの軋轢の原因をなすはずの「差異」を、むしろ積極的な社会資源として積極的に受け入れ、マジョリティによる一方的な押し付けではない多文化的市民像の構築を行った。(3)フランクフルトにおけるユダヤ文化の再生過程を分析し、その積極的な可能性を明らかにした。とりわけ、フランクフルトのヴェストエンド地区を舞台に展開しているユダヤ文化再生過程を分析することによって、多文化主義時代におけるマイノリティの可能性を明らかにしている。(4)大阪市生野区の御幸通り商店街(旧猪飼野地区)と東京都新宿大久保地区のコリアタウンをフィールドに、日本社会におけるコリアン・コミュニティの浸透状況と存在意義を考察し、さらには今後の可能性をも提唱した。(5)同和地区において過去40年の間に、隣保館、診療所、体育館、学習センター、公衆浴場、歴史資料館などの社会資本ストックが既に形成され、これら施設郡を有機的に活用するシステムを開発し、都市の魅力アップに貢献する拠点地区となり得ることを解明した。