著者
伊藤 賢一
出版者
群馬大学
雑誌
群馬大学社会情報学部研究論集 (ISSN:13468812)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.193-210, 2005-03-31

本論文はウルリッヒ・ペックのリスク社会論(1986)の可能性を探るものである。最初に、導入として、2001年に日本で起こった「BSEパニック」について描写し、Beckが15年前に提案したリスク社会のあらゆる特徴をこの「パニック」が示していることを指摘している。次に、リスク社会論の土台となっている近代化論のロジックと射程を検討している。本論文はこのことを通じて彼の理論がもつ可能性を提示するものである。リスク社会においては、欠乏ではなくて不安こそが人々の間に連帯を生むというアイディアが基本になっている。
著者
伊藤 賢一
出版者
群馬大学社会情報学部
雑誌
群馬大学社会情報学部研究論集 (ISSN:13468812)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.27-37, 2009

G.Ritzerは脱魔術化された世界に住む人々を再魔術化する消費の大聖堂が存在すると主張している。この議論は、なぜ人々がファストフード・レストランのような合理化されたサービスシステムに魅了されるのかを説明しようとするもので、一種の消費社会論とよべるものである。彼の議論はいくつかの重要な指摘にもかかわらず、誤った前提に基づいている。さらに、消費者の主体性の欠如を問題視するタイプの消費社会論が直面せざるを得ない問題にも直面している。本論文は、Ritzerの議論がどこで誤ったかを明らかにするとともに、消費社会論を論じる際の基準を設定するやり方について考察するものである。
著者
出口 剛司 赤堀 三郎 飯島 祐介 伊藤 賢一 渡會 知子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、社会学の公共性を実現する条件を理論及び学説史の研究によって明らかにすることにある。上記課題を実現するために五つの論点の考察した。1.ヴェーバー「価値自由」テーゼの批判的継承、2.批判的社会理論とN.ルーマンの社会システム論の再検討、3.ドイツにおける国法学、公共性研究とフランスの中間集団論との比較、4.ドイツにおける社会理論と法学の関係についての考察、5.ネット時代の個人化と社会的連帯の変容の解明である。その結果、理論が自己の正当化実践を行うことを通して、また社会的現実を別様に記述することにより、政策課題を設定=再設定することで通して、社会学の公共性が実現しうるという結論を得た。
著者
数土 直紀 赤川 学 富山 慶典 盛山 和夫 金井 雅之 伊藤 賢一 樽本 英樹
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本プロジェクトは、期間中に合計12回の研究会を学習院大学において開催した。また、研究会での成果を、海外を含む各種学会・会議において発表報告をした。研究会での報告内容は、次の通りである。(1)「ウォルト・ディズニーの思想」、(2)"Evolution of Social Influence Networks in Unanimous Opinion Formation"、(3)「Social Capital概念の適用可能性」、(4)「階層意識上の性-権力」、(5)「Dunkan WattsのSmall Worldシミュレーションを応用して」、(6)"Independence of Protestantism and Capitalism"、(7)「規範性のメタ理論的考察」、(8)「『社会構造のモデル樽築』」、(9)"Evolution of Distributive Justice in Social Influence Networks"、(10)「政治的権力の正当性からの独立性」、(11)「後期ハーバーマスの展開の体系的分析」、(12)「都市型公共空間における不関与の規範の形成」、(13)「損害賠償額が上昇するメカニズム」、(14)「シミュレーションということ:く社会>の理解/記述/創出」、(15)「構成主義と構成されざる現実」、(16)「利他的な行為者はゲームをどうみているか」、(17)"Escape from Free-riders"、(18)「倫理的判断の不偏性」、(19)「ロマンティック・ラブの日本的受容〜『主婦の友』に見る「愛」と「恋愛」の変遷〜」、(20)「社会移動表における非対角セルの分析」、(21)「社会運動への動員における紐帯の効果」、(22)「メディアと「信頼」」。最終年度は、プロジェクト期間中に参加者が議論を基にした論文を収録し、計13本、約280ページの報告書を作成した。
著者
伊藤 賢一
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的に掲げた「公共空間の希薄化と個人化傾向を説明する統一的な理論モデルを構築すること」は、十分完成した形には至らなかったものの、ある程度中心的なアイディアを示すことができたと考える。中核となるアイディアはBeck(1986)らが提示しているものと殆ど同型であるが、Beckらが必ずしも結びつけて論じなかった地域コミュニティの変容や、新しいメディアの浸透、消費行動の変化なども、さまざまな社会制度やしくみの組織化にともなう「意図せざる結果」として描くことができるのではないか、というものである。これは、現在起こっている社会変動の一面を捉えるだけでなく、多くの社会理論が指摘している傾向性をまとめあげ、現代社会が直面している大きな社会変動の意味を見通す成果になりうると考える。