- 著者
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渡辺 勇三
雨宮 宏
中村 良治
- 出版者
- 宇宙航空研究開発機構
- 雑誌
- 宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, pp.191-204, 1989-03
昭和61年2月1日22時40分00秒に内之浦から打ち上げられた観測ロケットS-310-16号機に搭載された固定バイアス・ラングミュアプロープによって電離層電子密度の高度分布, および, 波長が3mから300mの電子密度のゆらぎが高精度で測定された。ロケット上昇時の高度74kmから93kmの領域のゆらぎのデータを周波数解析した結果, (1)ゆらぎのスペクトル指数は0.9∿1.8である, (2)ゆらぎの大きさは1∿15%である, (3)ゆらぎの大きさが最大になる高度は88kmであることがわかった。今回, 観測された電離層E層下部領域の電子密度のゆらぎは中性大気乱流の理論で説明することができる。また, プローブがロケットウェイクの端の領域に近づいた時に観測される大きな電子密度ゆらぎの特性が調べられた結果, (1)ロケット上昇時のアンテナ展張直後の低電子密度の領域から現われている, (2)ロケット下降時にはプローブが大小二つの連続した複雑なロケットウェイクの影響を受けている, (3)降下時の低高度領域では電子密度ゆらぎの信号には特にロケットウェイクの影響が認められない様な時でもその周波数解析の結果にはウェイクでの擾乱の特徴が大きく現われることが明らかとなった。ロケット降下時のプローブ観測の結果から電離層のことを検討するのは危険であることがわかる。