著者
渡辺 真澄
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

本研究は、失文法や音韻障害のある失語症患者と、意味記憶障害のある意味認知症患者を対象に、文理解・産生における意味、文法、音韻処理の役割を明らかにすることを目的とする。平成27年度は、以下の①~③を行った。①動詞活用課題:若年健常者26人を対象に、漢字または平仮名で呈示した実在動詞と、新造動詞各40語について過去形・ます形の産生課題を実施したが、即時産生と遅延産生を行い、反応潜時の差を活用潜時とした。動詞の活用型(5段活用か否か)は語末モーラの子音とその前の母音で決まり、母音≠/i, e/、かつ子音≠/r/ なら、母音、子音のいずれも5段であることを示し、最も一貫性が高い。母音=/i, e/で子音=/r/ではいずれからも判断できず一貫性が最も低い。そのため辞書の参照が必要となる。母音≠/i, e/で子音=/r/ 、母音=/i, e/で子音≠/r/ なら、一貫性は中間となる。一貫性の低い動詞を表記妥当性が低い平仮名呈示した場合は活用潜時が長く、誤答率も高いことが示され、特に活用型の特定に辞書的知識が必要な語は、辞書の参照が困難となることを見出した。②文完成課題:初年度実施の失語症者1例を対象とした、自他対応動詞(例、閉まる/閉める)および対応のない動詞を含む文の文完成課題では、自他対応のある非対格自動詞の成績が低いことを見出し、平成28年度の国際学会で発表する。課題内容に検討を加え、他の症例にも課題を実施している。③絵・単語干渉課題:失語症では呼称障害が頻発するが、呼称における音声生成過程の解明のため、若年健常者20人を対象に、干渉語を音声呈示し、絵の命名を行う実験を初年度に行い、品詞・意味・連想効果の出現が明らかになった。しかし心像性は一般に名詞で最も高く、動詞、形容詞などで低い傾向がある。そこで心像性をマッチさせると品詞効果は消えることを見出し、現在、日本語の論文にまとめている。