著者
宮崎 泰広 種村 純 伊藤 絵里子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.20-27, 2013-03-31 (Released:2014-04-02)
参考文献数
20

新造語を呈した失語症者の呼称課題における反応を分析し, 新造語の出現機序について検討した。初回評価時の呼称課題にて, 新造語がその他の発話症状に比べもっとも多く出現した失語症 10 例を対象とした。初回評価時と発症1 ヵ月後の再評価時における呼称課題の反応を継時的に分析した。その結果は, 新造語の減少に伴い, 音韻性錯語の出現が増加した者は3 例, 無関連性錯語の出現が増加した者は3 例, 意味性錯語の出現が増加した者は2 例, 音韻性錯語と語性錯語の出現がともに増加した者は2 例であった。新造語の減少に伴い他の錯語が増加し, 症例により経過的に種々の錯語タイプに分かれた。これは言語処理の障害過程を反映している可能性を示し, 新造語は音韻レベル, 意味・語彙レベル, その複合的な障害により生じることが示唆された。
著者
長谷川 恒雄 岸 久博 重野 幸次 種村 純 楠 正 木船 義久 吉田 道弘
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.638-646, 1984 (Released:2006-08-04)
参考文献数
3
被引用文献数
31 27

Factor and scalogram analyses were carried out on data obtained from 313 aphasic patients whose clinical state was evaluated by the Standard Language Test of Aphasia (SLTA). This report describes the results of scalogram analysis following up the previous report which dealt with the results of factor analysis, and proposes a rating scale which determines over all severity of aphasic patients.    Guttman's scalogram analysis was performed in various ways on the SLTA items in order to construct a simple and practical scale. The 26 items were classified into three item-groups based on the results of the factor analysis which was reported in the previous report : group A consisting of items with high factor loadings on the 1 st factor (writing), group B consisting of items related to the 2 nd factor (speech) and group C related to the 3 rd factor (comprehension). Four compound items were constructed in group A and three each in groups B and C, and these compound items were analyzed separately. The analysis reveals that they are sufficiently unidimensional for scale construction. A rating scale with total scores of A, B and C was proposed for overall assessment of aphasia.
著者
種村 純
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.312-319, 2008-09-30 (Released:2009-10-27)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

遂行機能とは活動を計画し,周囲の人々と調整して社会的問題を解決していくことに関係し,その障害は前頭前野を中心とした脳損傷により出現する。関連障害としてaction disorganization syndrome があり,多くのステップを含む課題に困難を示す。遂行機能の評価法として,構造化されていない,手がかりもない課題,流暢性検査,概念形成検査などが用いられる。ワーキングメモリの研究法である2 重課題を遂行機能障害者に適用し,2 つの課題を単独で行う場合に比べ両課題を同時に行うと課題の遂行時間が延長する。遂行機能の治療では,複雑な活動の実行,特定の場面への適応方法,問題の解決法などを教育する。携帯情報端末(PDA)を用いて,実際場面で目標活動に含まれるステップを表示することもできる。遂行機能障害者の評価・治療成績を見ると,注意,記憶などの障害を併せ持ち,注意や記憶の訓練の後に遂行機能の訓練が行われていた。
著者
種村 純
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-7, 2006 (Released:2007-04-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

認知神経心理学的アプローチでは,一般認知理論を基礎に据えることによって演繹的に症候や治療方法を検討することができる。本稿では,失語症治療における音韻的,意味的,さらに統語的側面の障害を特異的に検出する課題の成績を検討し,それぞれの分野の治療方法を紹介した。
著者
三村 將 佐野 洋子 立石 雅子 種村 純
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.42-52, 2010-03-31 (Released:2011-05-11)
参考文献数
8
被引用文献数
5 2

わが国の失語症言語治療研究を総覧した。エビデンスレベルを評価したところ,無作為条件配置研究は見いだされず,後ろ向きの対象者を統制した研究が 1,統制が行われていない臨床連続例の検討が 35 見いだされた。さらに,効果サイズを算出できる 20 研究について評価したところ,多くの研究において高いレベルの効果が認められた。本邦の失語症言語治療の研究では,実際に高い言語治療成果を挙げているが,科学的に高い水準のエビデンスを挙げ得ていない,と評価された。
著者
種村 純 椿原 彰夫
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.110-119, 2006 (Released:2006-04-28)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

Communication disorders following traumatic brain injuries are different from those caused by aphasia. These disorders are classified into formal and semantic problems of utterances, and ego-centric and disinhibited remarks. These problems are analyzed by discourse analysis and pragmatics, but standardized assessment methods have not been developed. Among the neuropsychological symptoms, the executive functions, especially planning, monitoring, abstraction skill, inhibition, and attention, and visual perception are associated with these communication disorders. Development of appropriate therapy methods for treating these problems is needed.
著者
出田 和泉 種村 純 岸本 寿男
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 : 日本高次脳機能障害学会誌 = Higher brain function research (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.404-415, 2008-12-31

アマチュア尺八奏者でピアノの訓練経験もあったKM は,五線譜および尺八譜の読み書きが可能な二楽譜使用者であった。くも膜下出血後尺八譜の読み書き障害は軽度だったが,五線譜の読み書き能力は顕著に障害され,既知のメロディーを聴いて書譜する課題や音読課題では,五線譜と尺八譜の成績が乖離した。楽曲を正確に記譜する五線譜に対し,尺八譜は楽器の操作法を仮名文字で表記する奏法譜である。西洋音楽と異なり邦楽には,演奏する前にリズムを付けて音名を唱える「唱譜」という口伝の習得様式が存在するため,楽譜は唱譜によって暗記した演奏法を記憶から再生するための補助手段として用いられる。既知のメロディーの書譜,音読課題で尺八譜が五線譜よりも成績が良かったのは,唱譜で覚えた記憶から正答を引きだした可能性が考えられた。このような尺八譜の特異性が楽譜の読み書き課題において成績の乖離に関与したと考えられた。
著者
種村 純
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.409-417, 2012

高次脳機能障害に伴って生じる言語コミュニケーション障害者,すなわち失語症者および認知コミュニケーション障害者に対する医療と福祉の間のギャップとその対策に焦点を当てた.多くのコミュニケーション障害者はリハビリテーションによって日常生活活動(ADL)は自立するが,就労は困難である.コミュニケーション障害者は就労を強く求めるが,職業生活で要求されるコミュニケーション能力を回復することは難しい.コミュニケーション障害者は孤独,意志決定や活動の制限,役割の変化などを経験する.失語症者の社会参加を促すためにはコミュニケーションによって失語症者の心理社会的ニーズを満たそうとする働きかけが重要である.集団での会話訓練や会話パートナーによって生活場面でのコミュニケーション活動を促す.慢性期の失語症者が集い,安全に社会活動を行う場として,失語症友の会が全国で展開されている.障害者福祉制度の面では失語症の身体障害者手帳および障害者年金の等級が低く,中年世代の就労できない失語症者への生活保障が不十分であることが指摘されている.外傷性脳損傷などによって広範囲の脳損傷を受けた場合には記憶その他の認知機能が障害され,認知機能の障害の結果として話す内容を上手く組み立てることができなくなり,会話での受け答えに齟齬が生じる.また説明が回りくどく,聞き手の立場に立って説明することができない.こうした障害を認知コミュニケーション障害と呼ぶ.この障害ではコミュニケーションの問題を媒介として攻撃行動や抑うつなど重大な社会的行動障害が出現する.認知コミュニケーション障害に対する介入としては,会話相手が協力的なコミュニケーションスタイルを示すことによって反社会的なコミュニケーション態度を改善したり,集団での生活技能訓練を行ったりする.社会的行動障害を伴う場合にはその家族に大きな介護負担が生じる.社会的アプローチとして高次脳機能障害支援普及事業が進められている.各県の支援拠点機関には支援コーディネーターが配置され,原因疾患の治療,リハビリテーション,生活支援,就労支援,就学支援,当事者団体による支援ネットワークが構成されている.本事業は障害者自立支援法の地域生活事業のうち,都道府県が行う専門的相談支援事業に位置づけられている.
著者
前島 伸一郎 種村 純 重野 幸次 長谷川 恒雄 馬場 尊 今津 有美子 梶原 敏夫 土肥 信之
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.123-130, 1992-02-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
22
被引用文献数
3 5

言語訓練をうけることができなかった脳血管障害による失語症患者30例を対象に,失語症状の自然経過を経時的に評価し,年齢,性,原因疾患,失語症タイプ等との関係を検討した,言語理解は,健忘型で3ヵ月まで改善を認め,他のタイプでは6ヵ月以降にも改善を認めた.発話は,健忘型で3ヵ月まで,表出型,受容型では6ヵ月以降にも改善を認めた.表出-受容型は初期よりほとんど改善を認めなかった.書字は表出-受容型を除くすべてのタイプで3~6ヵ月以降にも改善を認めたが,表出-受容型では初期より改善を認めなかった.重度の失語症では,非訓練例は訓練例のような改善を認めないため,体系的な言語訓練が必要と思われた.
著者
爲季 周平 阿部 泰昌 山田 裕子 林 司央子 種村 純
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.348-355, 2009-09-30 (Released:2010-10-01)
参考文献数
11

Action disorganization syndrome (以下ADS) を呈した脳梁離断症候群の一例を経験し,ADS の出現機序と関連領域について検討した。ADS は日常的生活の順序を多く含む動作において,使用対象の誤り,順序過程の誤り,省略,質的誤り,空間的誤りを示し目的行為が障害される。ADS は目的行為の概念は保たれるが contention scheduling system におけるスキーマの表象が誤ったり省略されたりし,さらにその誤って表象されたスキーマを supervisory attention system によって訂正できない結果,そのまま誤って表象された行為が出現する。本症例は脳梁膝から,左上・中前頭回にかけて損傷されており,過去の報告例では左右どちらか一方,または両側の上・中前頭回が損傷されていた。ADS は左右両側の広範な前頭葉領域内の損傷によって生じる可能性が考えられ,左右の上・中前頭回を結ぶ交連線維の損傷により,脳内における情報の統合障害や錯綜,注意機能や抑制機能の低下が加わることで生じると考えられた。