著者
金森 悟 甲斐 裕子 山口 大輔 辻 大士 渡邉 良太 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-141, (Released:2022-06-30)
参考文献数
23

目的 高齢者の中には運動行動に関心が低くても,健康の保持・増進に必要な歩行時間(1日30分以上)を満たしている者が存在する。しかし,そのような集団の特性は明らかになっていない。そこで,本研究では,運動行動の変容ステージ別に,1日30分以上の歩行を行っている高齢者の特性を明らかにすることとした。方法 本研究は2019年度に日本老年学的評価研究(JAGES)が行った自記式郵送法調査を用いた横断研究である。対象者は24都道府県62市町村在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者45,939人とした。調査項目は1日の歩行時間,運動行動(1回20分以上で週1回以上)の変容ステージ,身体活動の関連要因(人口統計・生物学的要因8項目,心理・認知・情緒的要因3項目,行動要因8項目,社会文化的要因40項目,環境要因3項目)とした。分析は変容ステージで3群に層別し(①前熟考期,②熟考期・準備期,③実行期・維持期),目的変数を1日30分以上の歩行の有無,説明変数を身体活動の関連要因,調整変数を人口統計・生物学的要因全8項目としたポアソン回帰分析とした。結果 調査への回答者24,146人(回収率52.6%)のうち,分析に必要な項目に欠損がある者,介護・介助が必要な者を除いた18,464人を分析対象とした。前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみ,1日30分以上の歩行ありと有意な関連が認められた要因は,人口統計・生物学的要因3項目(配偶者あり,負の関連では年齢80歳以上,および手段的日常生活動作非自立),行動要因2項目(外出頻度週1回以上,テレビやインターネットでのスポーツ観戦あり),社会文化的要因6項目(手段的サポートの提供あり,友人と会う頻度が週1回以上,町内会参加,互酬性高い,趣味が読書,負の関連では趣味が囲碁)であった。結論 高齢者において,前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみで1日30分以上の歩行と関連が認められたのは,人口統計・生物学的要因,行動要因,社会文化的要因の中の11項目であった。変容ステージの低い層でも1日30分以上の歩行を促すには,身体活動を前面に出さず,人とのつながりなどを促進することが有用である可能性が示された。
著者
阿部 紀之 井手 一茂 渡邉 良太 辻 大士 斉藤 雅茂 近藤 克則
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.24-35, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
49
被引用文献数
1

目的:社会的フレイルはリスク因子として重要だが,評価法が統一されていない.本研究の目的は専門家の評価による内容的妥当性のある社会的フレイルの要素を明らかにすることである.方法:PubMedで検索し入手した社会的フレイル関連26論文から抽出した要素のうち,7名中5名以上の評価者が4条件(負のアウトカム予知因子,可逆性,加齢変化,客観性)を満たすと評価した要素を抽出し分類した.結果:4条件を満たす要素は経済的状況(①経済的困難),居住形態(②独居),社会的サポート(③生活サポート者の有無,④社会的サポート授受),社会的ネットワーク(⑤誰かと話す機会,⑥友人に会いに行く,⑦家族や近隣者との接触),社会的活動・参加(⑧外出頻度,⑨社会交流,⑩社会活動,⑪社会との接触)の5分類11要素が抽出された.結論:先行研究で用いられている社会的フレイル22要素のうち,内容的妥当性が示唆された要素は11要素であった.