著者
池田 志斈 真鍋 求 小川 秀興 稲葉 裕
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, 1990

全国アンケート調査から得られた単純型およおび劣性栄養障害型表皮水疱症患者の身長・体重の値を統計学的に処理し,全国平均の値と比較した.その結果,1)単純型では女性の身長が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い.しかし女性の体重,男性の身長・体重には有意の差を認めない.2)劣性栄養障害型では,男女とも身長・体重が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い,などが示された.本疾患々者の成長発育状態及び栄養状態を把握し,十分な栄養を補給を行うことがなされるならば,本疾患々者の予後が比較的良好となることが期待できるものと思われる.
著者
西井 貴美子 山田 秀和 笹川 征雄 平山 公三 磯ノ上 正明 尾本 晴代 北村 公一 酒谷 省子 巽 祐子 茶之木 美也子 寺尾 祐一 土居 敏明 原田 正 二村 省三 船井 龍彦
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.14, pp.3037-3044, 2009

大阪皮膚科医会は学校における水泳プール授業時のサンスクリーン剤使用の実態調査を大阪府下の公立学校1,200校を対象に実施したが,結果は約3割以上の学校がサンスクリーン剤使用を禁止または不要としていた.禁止の理由として水質汚染の心配が多数をしめたため,2007年夏に大阪府内の公立中学校14校の協力を得てワンシーズン終了後の水質検査を実施し,プール授業開始直後の水質と比較した.結果は文部科学省の学校環境衛生の基準に定められている6項目(pH,濁度,遊離残留塩素,過マンガン酸カリウム消費量,大腸菌,トリハロメタン)のうち濁度,過マンガン酸カリウム消費量,大腸菌,トリハロメタンに関しては基準値からはずれた項目はなかった.遊離残留塩素,pHについてはサンスクリーン剤使用を自由または条件付許可の学校で基準値より低値を示す傾向にあった.統計的検討はサンプル数,各校の条件の違いでむずかしいが,定期的にプール水の残留塩素濃度を測定,管理し,補給水の追加をすれば紫外線の害を予防する目的でサンスクリーン剤を使用することに問題はないと考える.
著者
格谷 敦子 中川 浩一 濱田 稔夫 浅井 芳江 山本 裕子
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.102, no.9, 1992

母親と娘2人の1家族3人に発症したX-linked dominant chondrodysplasia punctataの3例を報告した.娘2人に骨X線像で点状石灰化像,側彎,楔状椎が見られ,低身長,鞍鼻,下肢長差などの骨格異常がある.乳児期に特徴的な線状または流水状の鱗屑,痂皮を伴うび慢性紅斑が見られ,成長と共に消失し,鱗屑を伴う多角形萎縮性局面となった.母親に低身長,左上下肢の短縮,左眼白内障,腕には毛孔性萎縮を認める.父親,兄には異常は認められない.組織像:角層は層状肥厚し,付属器開口部の開大と角栓形成を認める.顆粒層は1~2層で顆粒変性はなく,有棘層は不規則に肥厚している.真皮上層に軽度の小円形細胞浸潤がある.
著者
大山 勝郎 植原 俊夫 野原 稔弘 野村 茂 荒尾 龍喜
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.14, 1986

タバコによる皮膚障害については,タバコ原料工場従事者に皮膚炎が生じた報告例は多いが,タバコ耕作者の報告例は少ない.著者らは,タバコ耕作者にアンケート調査を実施し,150名より回答があった.その結果,タバコにかぶれることを知っている人は多く,タバコによる皮膚炎を起こしたことがあるのは36名で女性に23名と多い.芽がき期や収穫期のタバコに触れる作業が多い時期に多発する.次に,Nicotiana tabacum黄色腫の新鮮葉について,抽出,分離を行った.その結果,TN-1と仮称する化合物が得られ,各種スペクトルにより,化学構造はセンブラン骨格を有するジテルペノイドと判明した.TN-1を用いて,パッチテストを実施し,患者が陽性反応を示し,刺激性よりもアレルギー性皮膚炎が疑わしい.
著者
片山 一朗 横山 明子 松永 剛 横関 博雄 西岡 清
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, 1994

重症の顔面皮膚炎を持つアトピー性皮膚炎患者に対する脱ステロイド外用療法の評価を行った.対象は68名の入院患者とし,亜鉛華軟膏の面包帯療法,ないし白色ワセリン,白色ワセリン亜鉛華軟膏混合軟膏の単純塗布を主体とした治療を行った.3分の1の症例において退院後1年以上顔面の皮膚炎の再燃は見られれなかったが残り3分の2の症例においては一年以内に再燃する傾向が見られ,うち10名では増悪時ステロイドの外用が必要であった.この再燃率は顔面の皮膚炎の持続期間,顔面に対するステロイド軟膏の使用期間と比較的よく相関する傾向が見られたが,血清IgE値,使用ステロイド軟膏の強さ,入院期間との間には特に一定の傾向は見られなかった.今回の検討においては30歳以下の患者が9割以上を占め,その増悪因子も多様であった.なお入院時および経過中,9例に白内障の合併が見られた.
著者
今井 利一
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, 1962

本症の詳細なる記載は,Kuznitzky und Grabisch(1921)の"Uber myxomatose Fibrosarcome dervordere Brustwand",およびDarier and Ferrand(1924)の"Dermatofibromes progressifs et recidivants ou fibrosarcomes de la peau",更にはHoffmann(1925)の"Uver das knollentreibende Fibrosarcom der Haut"(Dermatofibrosarcoma protuberans)の標題の下に発表された論文を以て嚆矢とし,以後一般には"Dermatofibrosarcoma protuberans"乃至"Dermatofibrome von Darier und Ferrand"の名称が汎用されている.しかし,これに相当すると思われる最初の症例報告として,Hoffmann(1925),Senear,Andrews and Wills(1928)らはCoenen(1909)の2例を,Binkley(1939)はNew York Dermatological Societyに供覧したScherwell(1890)の1例を挙げているが,更にJohnston(1901),Taylor(1890)の報告例もこの疾患に該当するものと考えられる.爾後,外国文献には多数の報告例が散見され,Hoffert and Bronx(1952)は文献的に187例を集め記述したが,著者はその後の外国文献に78例を蒐集したので,今日迄に記述されている外国文献は約250例余と推定される.これに比して,本邦における記載は極めて少なく,山﨑(昭13)の2症例を以て嚆矢とし,以後,田中・林(昭15),畑(昭22),渡辺(昭28),前田・藤井(昭29),寺田・山本(昭81),有森(昭81),池田・青木(昭35)の各1例,計9例を見るに過ぎない.著者は最近,本症例の1例を経験したのでその概要を記すと共に,併せて聊かの考察を行つた.
著者
三石 剛
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.5, pp.1009-1014, 2010

近年,ウイルス性疣贅において特徴ある細胞病原性効果(cytopathic effect:CPE)がヒト乳頭腫ウイルス(HPV)感染細胞に見られることから,臨床病理組織像とHPV遺伝子型は相関することが解明された.よってHPV特異的なCPEの形態の違いから,非定型的ウイルス性疣贅の臨床病理組織像を理解することは診断上重要である.本稿では非定型的ウイルス性疣贅であるミルメシア,ブッチャー疣贅,色素性疣贅,Ridged wart・足底表皮様囊腫,点状疣贅,白色小型疣贅とHPV感染症のなかでも非常にまれな遺伝性疾患である疣贅状表皮発育異常症の良性皮疹の臨床病理組織像について紹介した.
著者
中内 洋一 水野 信行
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, 1962

内臓惡性腫瘍が之に伴う皮膚病変によつてはじめて発見される場合の,即ち腫瘍症状に先立つて,之を疑わしぬるに足る皮膚病変の現われることの必ずしも稀でないことは,諸家も記載する所である.此のような場合屡々,内臓惡性腫瘍が根治不能の域に達して居るから,"皮膚病変拠る惡性腫瘍発見"の意義は左程大きくないとも看倣されるかも知れない.然しながらRothmanはその第2例に就いて「若し我々が斯かる皮膚変化が腹部腫瘍との関連に於て生じうるということを知つて居たら……,患者を助ける事は出来なくても,姑息的手術に依つて,目的に適うように治療することが出来たろうに……」と,死の直前まで腫瘍の診断がつかずに死んだ患者の苦痛を救い得なかつたことに遺憾の意を表して居る.たとえ根治手術は不能であつても,手術,放射線,抗癌剤などに依つて癌患者を苦痛から救い,延命を策する道の拓けた今日,内臓惡性腫瘍に伴う皮膚病変を知る事の意義は少しとしない.内臓惡性腫瘍に伴う皮膚病変は近時諸家に依つて注目され,本邦に於ても,上野の黒色表皮腫に関する,また古谷の皮膚筋炎と惡性腫瘍との関係に関する詳細な記載がある.内臓惡性腫瘍の皮膚転移に関しては北村教授他の記載もあるが,之に結節状を呈するものの他,紅斑を主徴とするものがあつて,夙に丹毒様癌腫(Carcinoma erysipelatodes)の名で知られている.近時中村はその1例を報告,また肉腫転移に因つて之と同様の所見を呈するものに就いての吉田の報告がある.著者等の例は,瘙の著しい丘疹紅斑性皮疹を主訴として来院したものであつて,観察中顔面,上肢の浮腫,呼吸困難等を訴え,同時に腹壁に静脈怒脹の見られたことに依つて縦隔洞腫瘍を疑い,レ線検査に依つて肺の原発性惡性腫瘍及び縦隔洞腫瘍の存在を知つたものである.内臓惡性腫瘍に見られる転移以外の皮膚病変については夙にCarriere(1896)の記載する所であるが,綜説的記載は,蓋しRothman(1925)が自家症例3例の記載と共に行つたものを嚆矢とする.そして今日までに数十例の報告がある.Rothmanは之を4範疇に分類し,その1として「中毒性滲出性症状を呈するもの」を置いているが,著者等の例は之に属するものである.近時中村等(1955)は子宮癌の放射線療法中,一過性ではあるが全身に発生する一連の皮膚病変が可成り多く見られることに注意,その22例を蒐集,またそれ等とは別に全身に持久性蕁麻疹様の極めて難治の皮疹が子宮癌の経過中に発生,その剔除によつて急速に改善したものを診,それ等につき詳細に記載して居る.
著者
武藤 美香 河内 繋雄 福澤 正男 斎田 俊明
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, 2000

薬疹におけるリンパ球刺激試験(DLST)の診断的価値について検討した.DLSTが施行された薬疹の報告例812例について,発疹型別,薬剤系統別, 個別薬剤別にDLST陽性率を解析した.全症例におけるDLST陽性率は42%であった.発疹型別では,陽性率は中毒性表皮壊死症型(61%),紅皮症型(52%)で高く,紫斑型(11%),光線過敏症型(21%),固定薬疹型(30%)で低かった.蕁麻疹型でも38%の陽性率が認められた.薬剤系統別では,総合感冒剤(72%),抗結核剤(56%),抗てんかん剤(54%),解熱消炎鎮痛剤(53%)で高く,痛風治療剤(22%),合成抗菌剤,循環器官剤(ともに29%)で低い傾向が認められた.塩酸ミノサイクリン(13例),アリルイソプロビルアセチル尿素(8例)ではDLST陽性例は認められなかった.また,薬剤アレルギー検査法としてのDLSTの特異性を明らかにするために,同意のえられた健常人4名を被験者として,主としてDLST陽性率の高い薬剤についてDLSTを試行し,非特異的陽性反応(偽陽性反応)の有無について検討した.その結果,スパクロ■(クロレラ製剤),パリダーゼオラール■,シオゾール■は高率に偽陽性反応を呈し,PL顆粒■(総合感冒剤),ビオフェルミン■(乳酸菌製剤)も偽陽性反応を呈し得ることが判明した.これらによる薬疹では,DLSTが陽性であっても原因薬剤ではない可能性があるので注意を要する.
著者
野澤 茜 大谷 道輝 松元 美香 杉浦 宗敏 内野 克喜 山村 喜一 江藤 隆史
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.371-373, 2012

保湿剤の先発医薬品と後発医薬品の効果の差を健常人5名で乾燥皮膚モデルを用いて試験を行った.ヘパリノイド製剤のローションとクリームの先発医薬品と後発医薬品を1日2回10日間塗布し,角層中水分量を比較した.その結果,先発医薬品のローションとクリームいずれも後発医薬品に比べ,有意に水分量が増加した.医師は先発医薬品から後発医薬品に切り替えて使用する場合,期待した効果に有意な差が認められることを考慮すべきである.
著者
桑原 一也
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, 1967

周知の如く,軟膏療法は主として基剤が皮膚表面の病巣に作用して皮疹を改善に導く場合と,軟膏に添加した薬剤が健康皮膚を浸透,病巣に到達して始めて皮疹の改善を斉らす場合とがあるが,本研究は申すまでもなく後者に関する研究である.さて,副腎皮質製剤(以下「コ」と略す)に限らず,一般に薬剤を病巣へ運搬する目的で使用する場合,従来最も大きな障壁となつていたのは,薬剤の皮膚吸収に自ずから限界のあることである.従つて,全身投与に比べると,どうしても臨床効果が劣り,殊に表皮に全く損傷のない手掌足底や,その他の部位でも角化肥厚の強い病的皮膚では期待するほどみるべき効果があがらなかつた.このため軟膏療法はせつかく全身療法とはまた異なる幾つかの優れた特徴を持ちながら,ただ表層の病巣を修復することに主点がおかれていた.ところが,最近Carb,Sultzberger & Witten,Scholz,Tyeらが軟膏貼布部位を特殊な方法で密封する,いわゆるoccu-lsive dressing technique(密封療法,以下ODTと略す)を考案してより,かかる病巣へも目的の薬剤が充分到達して臨床効果を発揮でき,しかも全身性の副作用を起さない程度の,甚だ好都合な結果を斉らすことが明らかにされた.ともかくODTは軟膏療法に一大進歩を斉らし,今や各方面に素晴らしい成果を挙げているが,このODTを契機に,最近皮膚吸収に関する研究が再び活発となつて来た.ところで,皮膚吸収の最近における最も大きな進歩といえば,なんといつても,Malkinson & Kirshenbaum,McKenzieら一連の研究であろう.従来,薬剤の皮膚吸収は専らこれが生体に浸透することのみに重点が置かれ,皮膚でそれがどのように,どの程度利用されるかどうかという点については全く考慮が払らわれていなかつた.換言すると,薬剤の皮膚吸収は,極く最近までサルチル酸(以下「サ」と略す)値や14C-labelled 「コ」軟膏の尿中排泄量の測定が優れた検査法とされ,主として,その多寡により良否が云々されていた.ところが,Malkinsonらが独特な器具gas flow cellを考案,放射性「コ」軟膏の皮膚吸収状態を,尿中排泄量を測定するかわりに,皮上に残るいわゆるresidual radioactivityから逆に皮膚吸収状態を推測したところ,ここに多量放射性物質の残る軟膏,つまり吸収の悪い軟膏ほど,臨床効果の優れていることが判り,軟膏の優劣は吸収の良否より,病巣に,活性の形でどの程度残存するかにあることが明らかにされた.また軟膏の皮膚吸収は無制限に行なわれるのでなく,病巣と皮膚表面のそれとの濃度の差,つまり濃度勾配(concentration gradient)と密接な関係のあることが併せて明らかにされた.これと前後してMcKenzieらは各種「コ」軟膏のいわゆるvasoconst-rictor activity(毛細血管収縮能)を測定,この成績を皮疹の臨床効果と比較検討して,吸収の良否と本検査成績とはむしろ負の相関関係にあり,本作用の強い「コ」製剤ほど皮膚からの吸収が遅延し,一方臨床効果はそれだけ優れていることが確認され,かくして,軟膏の皮膚吸収に関する概念はこの数年間にすつかり変貌した.
著者
石 重明 瀧本 玲子 坪井 良治 小川 秀興
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, 1996

糖尿病マウス(db/db)と正常家兎の全層皮膚欠損創モデルを用いて,精製白糖・ポピドンヨード製剤群,白糖を含む基剤群,無処置群の創傷治癒効果を比較検討した.糖尿病マウス(C57BL/KsJ db/db,8週齢)の背部皮膚中央に,直径6mmの全層皮膚欠損創を2個作製し,開放創として毎日1回,5日間薬剤を塗布し、8日目に組織を採取した.正常家兎(2.5kg)は耳介内側に同じ直径の全層皮膚欠損創をそれぞれ4個作製し,術後1回薬剤を塗布して閉鎖創とし,7日目に組織を採取した.創傷治癒の評価は組織標本を光学顕微鏡で観察し,a)再上皮化率(%),b)肉芽組織面積(mm2),c)血管数について定量的に評価した.その結果,糖尿病マウスでは精製白糖・ポピドンヨード製剤群は有意に肉芽組織と血管数を増加させた.白糖を含む基剤群では血管数がわずかに増加したが肉芽組織の量に変化はなかった.正常家兎を用いた家験系では精製白糖・ポピドンヨード製剤群は無処置群に比較し,再上皮化率,肉芽組織面積,血管数のいずれも有意に増加させた.白糖を含む基剤群では精製白糖・ポピドンヨード製剤群と無処置群の中間的な値を示した.今回の実験では精製白糖・ポビドンヨードが通常の皮膚潰瘍だけではなく,糖尿病の皮膚潰瘍にも有効であることが判明し,ポビドンヨードは,殺菌・消毒作用だけではなく,単独ないしは白糖との相互作用により,創傷治癒も促進させる可能性があることが示唆された.
著者
渡邉 裕子 蒲原 毅 佐野 沙織 白田 阿美子 小野田 雅仁 池澤 善郎 相原 道子
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.9, pp.2321-2327, 2012

58歳,男性.25歳時に尋常性乾癬が発症し,33歳時に霧視の自覚と共に非肉芽腫性前部ぶどう膜炎がみられ乾癬性ぶどう膜炎と診断された.シクロスポリン内服で加療されたが治療に難渋し,58歳時に膿疱性乾癬が発症した.シクロスポリンを中止しインフリキシマブを開始後,皮膚症状と共に眼症状の著明な改善が得られた.再発性,難治性の乾癬性ぶどう膜炎に対しインフリキシマブは有効な治療法と考えられた.自験例および本邦における乾癬性ぶどう膜炎のまとめでは,初発症状は,視力低下が最も多く,次いで霧視,充血,眼痛の順に多くみられた.ぶどう膜炎発症時の乾癬の臨床病型は,関節症性乾癬が31例中13例(42%)と最も多く,次いで尋常性乾癬が31例中10例(32%),膿疱性乾癬が31例中7例(23%)であった.乾癬性ぶどう膜炎患者の25例中23例(92%)で関節症状がみられ,23例中22例(96%)でHLA-A2がみられた.ぶどう膜炎に対し皮疹出現の先行例が約90%にみられ,皮疹出現から長期経過後にぶどう膜炎が生じている例が多かった.関節症状とHLA-A2を有する乾癬では,ぶどう膜炎を合併する危険性があり注意が必要と考えられた.
著者
林 美沙 中川 幸延 遠山 知子 平野 亜由子 佐藤 彩子 瀬口 道秀 杉本 麗子 東山 真里
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.1787-1796, 2013

インフリキシマブが奏効した乾癬に伴う難治性ぶどう膜炎の2症例を報告する.54歳,男性.28歳時に乾癬性紅皮症と診断されたが,不十分な治療により皮疹のコントロールは不良であった.38歳時に右眼ぶどう膜炎を,45歳時に左眼ぶどう膜炎を発症した.プレドニゾロンの内服で加療されるも難治であり右眼は失明に至った.2010年乾癬の皮疹,及びぶどう膜炎のコントロールが不良のため,インフリキシマブを開始した.治療開始後より皮疹,及びぶどう膜炎の症状は速やかに改善した.経過中に軽度の眼症状の再燃を認めるも,インフリキシマブを増量することで眼症状は改善した.34歳,女性.19歳時に乾癬を発症し,外用治療にて経過良好であった.2010年,産後より急速に体幹の皮疹の増悪を認め,多発関節炎が出現した.ステロイド軟膏とビタミンD3軟膏の外用,及びメトトレキサートの内服を開始するも難治であり,右眼のぶどう膜炎と視神経炎も発症した.インフリキシマブを開始し,皮疹,関節炎,及びぶどう膜炎は速やかに改善した.経過中に関節症状とぶどう膜炎の再燃を認めたが,インフリキシマブ,及びメトトレキサートを増量することで経過良好である.当院で経験した乾癬に伴うぶどう膜炎5例及び過去の報告症例から,ぶどう膜炎発症の危険因子,及びTNFα阻害剤の有効性につき若干の考察を加えて報告する.乾癬に伴うぶどう膜炎は難治で時に失明に至るため,免疫抑制剤に対し効果が得られない症例には,TNFα阻害剤は有効な治療として考慮すべきである.
著者
桑原 宏始
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, 1970

ランゲルハンス細胞(L細胞)は1868年,Langerhansによつて人表皮内に見出された樹枝状細胞であるが,その後,人健康真皮をはじめ慢性尋麻疹,貨幣状湿疹,紅皮症,尋常性白斑患者の真皮,毛ハV脂腺系,口腔粘膜上皮,子宮腟部上皮,L.S.(Letter Siewe Disease),Pityriasis Rosea,Reticulum Cell Sarcoma,肺および骨の病的組織球,家兎胎児胸腺,幼若マウス脾臓,リンパ節,胎生75日アカゲザルの頭皮などで観察されている.以上の如く,L細胞の分布は広範囲に及び,さらにL細胞の微細構造,組織化学的検索から,L細胞の由来について,最近Mesenchymal cell説が有力視されつつある.しかもHashimoto,Wolff らを中心にHistiocytosis Xに見られるBirbeck顆粒保有細胞との関連からL細胞は組織球系の貪喰細胞であるとする考えが近年有力となりつつある.しかし著者は,電顕的観察結果からみて,本細胞が間葉系由来の細胞であるにしても,単なる組織球とは異なり,胸腺細胞と同様網内系特にLymphoreticularな細胞で,免疫機構に関与しているものと考え,既に2回に亘つて報告した.このリンパ網内系細胞由来説は著者のほか,既にRanvier,Andrew,Bilinghamらにより指摘されている.著者は最近種々の皮膚疾患におけるリンパ節の電顕的観察を行ない,今まで観察できなかつた興味ある所見に遭遇し,L細胞の機能について2~3検討したので,再びその知見をここに報告する.
著者
高橋 久 石井 富夫 田辺 和子 池田 平介 山本 勝義
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, 1975

サリチル酸は経皮吸収率の良い物質として早くからその尿中排泄を指標として経皮吸収の研究に使用せられて来た.その吸収は角層を変性せしめるためとも,経毛嚢的とも言われるが,未だ解明され七いない. 今回ブタの皮膚に 14C 標識サリチル酸を貼布し,液体 scintillation counter と autoradiography によりその皮膚内分布を検討した結果,この物質は経毛嚢的に吸収され易いことが明らかとなった.著者等の一人高橋はかつてサリチル酸等の諸物質と毛髪との親和性について報告し,サリチル酸も相当高度に毛髪と親和性のあることを確認したが,今回のサリチル酸の経毛嚢吸収は,こうした本物質と毛髪との親和性によるものか,或は本物質が毛嚢内の皮脂に溶解するためにおこるものかは今後の検討にまたねばならない.
著者
古江 増隆 山崎 雙次 神保 孝一 土田 哲也 天谷 雅行 田中 俊宏 松永 佳世子 武藤 正彦 森田 栄伸 秋山 真志 相馬 良直 照井 正 真鍋 求
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1795-1809, 2009

[目的]我が国の皮膚科受診患者の皮膚疾患の頻度,性別,年齢分布,気候との関連性などを多施設大規模調査によって明らかにすることを目的とした.[方法]全国の大学病院76施設,病院55施設,診療所59施設(計190施設)において,2007年5月,8月,11月,および2008年2月の各月の第2週目を目安に,その週のいずれか1日を受診した初診・再診を問わず外来,および入院中の患者全てを対象に,「性別」,「年齢」,「診断名」を所定のマークシート調査に記録した.各調査期間における調査協力施設地域の気温,および湿度に関するデータは,気象庁・気象統計情報を使用した.[結果]4回の調査すべてに協力いただいた170施設(大学病院69施設,病院45施設,診療所56施設)から回収した67,448票を解析した.上位20疾患を列挙すると,その他の湿疹,アトピー性皮膚炎,足白癬,蕁麻疹・血管浮腫,爪白癬,ウイルス性疣贅,乾癬,接触皮膚炎,ざ瘡,脂漏性皮膚炎,手湿疹,その他の皮膚良性腫瘍,円形脱毛症,帯状疱疹・疱疹後神経痛,皮膚潰瘍(糖尿病以外),痒疹,粉瘤,尋常性白斑,脂漏性角化症,薬疹・中毒疹の順であり,上位20疾患で皮膚科受診患者の85.34%を占めた.疾患ごとに特徴的な年齢分布を示した.性差が明らかな疾患が存在した.気温や湿度と正負の相関を示す疾患が存在した.[結語]本調査によって21世紀初頭の皮膚科受診患者の実態を明らかにし得た.本調査が今後も定期的に継続されることで,社会皮膚科学的視野にたった皮膚疾患の理解が深まると考えた.
著者
新田 悠紀子
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, 1994

第1子,女児.生下時より左第2肋間に収縮期雑音あり,顔面およびタ至イに環状紅斑を認め,抗核抗体,抗SS-A,SS-B抗体陽性,新生児エリテマトーデスと診断.心雑音は生後4ヵ月で消失し,機能的肺動脈枝狭窄と考えられた.皮疹,抗SS-A,SS-B抗体も生後7ヵ月で消失した.第2子,男児.第1子の3年後に誕生.生下時より第3~4肋間に収縮期雑音あり,顔面およびタ至イに環状紅斑を認め,抗SS-A,SS-B抗体陽性にて新生児エリテマトーデスと診断.心雑音は心エコーにて心室中隔欠損によるものと考えられた.生後1ヵ月後,自然閉鎖した.環状紅斑,抗SS-A,SS-B抗体は8ヵ月後に消失した.母親は,第1子を29歳時,第2子を32歳時に出産.抗核抗体,抗SS-A,SS-B抗体陽性.小唾液腺生検にて導管部に小円形細胞の浸潤を多数認めた.乾燥症状,皮疹ともなく,subclinical Sjogren syndrome(以下SjSと略す)と診断した.
著者
出村 光一 久保 縁
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, 1961

1951年にWilkinsonは,chronic vesicular impetigo of the trunkという表題で,高令の婦人にみられた2症例を報告している.即ち躯幹,大関節屈側面に膿,水疱性の皮疹が群生し,次第に遠心性に拡大して連圏状,或いは不規則地図状になり,皮疹はやがて結痂を形成する.病変はその辺縁部に於て殊に著明である.自覚症状は特記すべきものではなく,全身状態も良好である.組織学的所見としては,角層下に水疱形成があつて,その中に多核白血球を入れる.真皮に軽度の炎症々状をみるが,その他に特記すべき所見は無い.水疱内容の培養を行つて,その1例にStaph. aureusを証明している.治療としてはD.D.S.或いはsulfapyridineが効果的であつたが,再発の傾向があつた.この報告に対してSneddonは,彼が矢張り全く同様の症例を1947年の国際医学会の席上に供覧したが,同席せる皮膚科医諸氏,何れもその診断を附するのに困難を覚えたことであつた,と追加発言した.その後1956年にSneddon and Wilkinsonは,この様な症例を6例集めて観察し,これ等は,在来の分類では,その位置付けが困難である,一つの独立疾患に属するものと見做さるべきであるとなし,そのclinical entityに対してsubcorneal pustular dermatosis(S.P.D.)なる名称を用いて詳細に報告した.かくして独立疾患としての本症の輪廓が次第に明かになるや,その後は相次いで類似症例の報告がみられ,現在に至る迄に欧米では27例,本邦では我々の症例の他に去る1959年9月の東京地方会に於て,横浜警友病院から1例の供覧患者が報告されている.我々の症例も1959年10月の第23回東日本連合地方会,並びに第155回日本皮膚科泌尿器科学会新潟地方会に於いて報告されたものである.
著者
野波 英一郎
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, 1958

著者は皮膚電気生理学的現象一般に就て概説し,此の方面の主な文献を整理したのち,勝木式皮膚直流電気抵抗器を用い,亜鉛―水銀アマルガム電極によつて健常者及び各種皮膚疾患々者に就て皮膚直流電気抵抗を測定した.健常皮膚に於て皮膚電気抵抗発生部位は恐らく表皮透明層乃至顆粒層と考えられ,此の部の連続性が断たれると抵抗は著しく低下する.健常人に於て,室温18~22℃では身体部位的に顔面,腋窩,手掌,足蹠は爾余の諸部位に比し,抵抗値が極めて低く,左右対称部位では抵抗値が殆ど等しい.1日中時刻的には抵抗は昼間に低く,夜間睡眠時に最高,季節的には夏季高温時には温熱性発汗部位の躯幹,四肢の抵抗は低下するが,腋窩,手掌,足蹠の如き所謂精神性発汗部位では殆ど変動せず,身体部位差は消失する.局所加温は抵抗を低下させるが,鬱血は抵抗に影響しない.ピロカルピンは抵抗を低下,アトロピンは上昇させるが,アドレナリンは抵抗に著しい影響を与えない.ヒスタミン及び生理的食塩水膨疹局所の抵抗は高い.各種皮膚疾患の病変部電気抵抗を当該個体の対称健常部及び健常成人の同一部位の夫れと比較するに,湿疹,膿皮症,痒疹,紅皮症,乾癬,エリテマトーデス,水疱症,火傷,多汗症の病変皮膚では抵抗低く,蕁麻疹,鞏皮症,皮膚萎縮,レントゲン皮膚炎,癩,睡眠剤中毒疹,瘢痕の夫れは抵抗高い.発疹の種類との関係では紅斑,丘疹,水疱,糜爛の如く表皮変化を伴うものは抵抗低く,膨疹,皮膚萎縮,瘢痕の如く表皮破壊のないものでは抵抗が高い.一般に病変部は発汗が減退しており,病変部及び対称健常部局所にピロカルピン発汗試験を行うと,対称健常部は著明に発汗し,抵抗が著しく低下するのに対し,病変部は発汗せず,抵抗も変動しない.紅斑,丘疹,水疱,膿疱,糜爛面で抵抗の低いのは,表皮の肉眼的乃至超肉眼的の破壊の存在する為で,膨疹,皮膚萎縮,瘢痕等に抵抗が高いのは表皮の破壊がなく,所謂electrical barrierの連続性が保たれると共に,発汗が減少又は欠如している為と考えられる.癩,睡眠剤中毒疹の抵抗の高値も同様の原因に帰することができる.即ち皮膚電気抵抗は表皮の状態と発汗に大きく支配され,疾患別の特殊性よりも皮疹別に意味を有すると考えられる.而して表皮に破壊のない場合,皮膚電気抵抗の面から病変局所の発汗機能を窺うことが出来ると共に,之等皮膚病変の病勢の状態を知ることが出来る.本論文の要旨は昭和30年4月2日第54回日本皮膚科学会総会,昭和31年5月5日第55回日本皮膚科学会総会並びに昭和31年10月13日第19回日本皮膚科学会東日本連合地方会に於て発表した.