著者
渡邊 あや
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.27-38, 2020 (Released:2021-07-01)

本稿の目的は、フィンランドにおける「市民の育成」を担う学校のあり様と、そこで育むことが目指されている資質・能力について、教育政策と教育課程基準の分析から明らかにすることにより、北欧市民社会の担い手を育む教育の在り方を考えることにアプローチすることにある。その結果、フィンランドの「総合制学校モデル」が、時代の挑戦を受けながらも、今なお引き継がれ、重視されていること、教育課程基準が、社会の多様性を前提としていること、平等や社会的公正、民主主義といった概念を変わらず重視しつつ、新たな潮流・課題を取り込んでいることが明らかになった。さらに、日本と比較した場合の特徴として、民主主義や参加といった概念が、「行動すること」や「影響を与えること」までを含むものであることを指摘した。
著者
石田 祥代 松田 弥花 本所 恵 渡邊 あや 是永 かな子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.37-51, 2021 (Released:2022-07-03)

本稿では、文献調査と聞き取り調査を通して、スウェーデンの義務教育からの移行支援およびインクルーシブ教育の構造を明らかにする。スウェーデンでは、義務教育後の進路の選択肢は、後期中等教育機関としての高校・知的障害高等部・聴覚障害高等部・肢体不自由高等部があり、セーフティネットとしての若年者支援プログラムとリカレント教育としての社会教育機関も受け皿として存在する。移行支援では、キャリアカウンセラーと特別教育家が連携し、最適な学習環境の視点からの進路選択、進学希望先への見学促進、教育的支援の情報伝達を行っている。後期中等教育におけるインクルーシブ教育システムを支えるのは子ども健康チーム、対応プログラム、高校の入門プログラムであった。特徴としては、途切れのない障害児教育システム、前期・後期中等教育間の接続、移民の子どもへの教育的支援、学習を保障する生涯教育システムが挙げられた。
著者
石田 祥代 是永 かな子 本所 恵 渡邊 あや 松田 弥花
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.39-52, 2020 (Released:2021-07-01)

本稿は、フィンランドの義務教育から後期中等教育への移行とその支援について、インクルーシブ教育の観点から明らかにすることを目的とする。文献調査と聞き取り調査を実施した結果、①義務教育段階の特別な教育的支援として三段階支援のシステムがあること、②同様の支援システムが後期中等教育においても整備されつつあること、③義務教育修了後、特別な教育的ニーズのある生徒は、基礎学校10年生、高校、職業学校、ヴァルマ、テルマから進路選択を行っていること、④基礎学校における移行支援として、キャリアカウンセラーと特別支援教育教員による進路相談、進学先との調整、学校訪問同行などが行われていることが明らかになった。一方、今後の課題として、①高校・職業学校における進学後のフォローアップ体制の不備、②退学問題への対応の強化、③授業での教育内容調整や直接的支援の必要性、などが示唆された。
著者
大森 不二雄 牧 貴愛 江川 良裕 北村 士朗 渡邊 あや
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.47-58, 2009-12-01

This article describes a project for developing a work-based learning module called 'University-Corporate Partnership Learning' in a Master's degree programme, and explores its general implications for postgraduate education for professionals in the dialogue between practical and academic knowledge. The project is part of the government-funded initiative by Kumamoto University's Graduate School of Instructional Systems, which has been selected and funded by Japan's Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology as one of the good practices in postgraduate education. This graduate school is the first in Japan to provide postgraduate degree programmes for training e-learning professionals in both the corporate and education sectors. The pilot practice of the module ran from November 2008 to March 2009, with the module's official launch as a formal part of the Master's degree programme to be from October 2009 to March 2010. Based on a description of the project and formative evaluations of the pilot practice, the article examines the possibilities and conditions for successful postgraduate education for professionals in the dialogue between practical and academic knowledge.