著者
徳永 誠 渡邊 進 中根 惟武
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.324-328, 2006-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
4
被引用文献数
1

外来患者170例において待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査を行った。許容できる待ち時間の平均は、受付18分、診察待ち37分、検査23分、計算会計10分、病院滞在時間68分であり、診察待ち、検査、病院滞在時間では、許容時間よりも実際かかった時間の方が長かった。実際かかった時間が許容範囲内であった患者の割合は、診察待ち時間で45%、病院滞在時間で38%であった。満足度でも「診察待ち時間」が最も満足度が低く5段階評価の平均は3.0点であった。外来受診への満足度は、医師の診察への満足度や診察待ち時間への満足度と強い相関があった。外来待ち時間調査の際、患者の考える許容待ち時間と満足度を同時に調査すれば、待ち時間の数字だけでは捉えきれない患者の評価がわかる利点がある。
著者
八並 光信 上迫 道代 小宮山 一樹 正門 由久 里宇 明元 千野 直一 森 毅彦 近藤 咲子 渡邊 進
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.571, 2003

[目的]骨髄移植患者の持久力低下は,リハビリテーションを施行する上で重要な問題である.本研究は,骨髄移植患者用持久力テストの結果を報告する.本邦では,トレッドミルを用いたプロトコルがあるものの,移植前後の持久力低下に関する報告は見あたらない.そこで,我々も予備研究から,以前の報告と同様のプロトコルを検証し,骨髄移植患者の持久力に関する変化を測定したので報告する.[方法]1.運動負荷テストの検証 対象は,平均年齢25.8±3.4歳の健常成人10名(男性5名・女性5名)である.運動負荷テストは,リカベント式エルゴメーターで,毎分10wのランプ負荷法を用いて最高酸素摂取量を求めた.また,骨髄移植患者用の運動負荷プロトコル(トレッドミル歩行を時速2kmからスタートし,3分毎に時速のみ1kmづつ増加させ時速6kmで終了)も行い両者を比較した.2.骨髄移植患者の持久力低下について 対象は,平均年齢33.9±13.9歳の骨髄移植患者10名(男性7名・女性3名)である.移植前後に骨髄移植患者用の運動負荷プロトコルで,トレッドミル歩行を行った.心拍数は,各ステージ終了前の15秒間をテレメーター心電図で記録すると同時にBorgの自覚的運動強度を計測した.[結果]1.運動負荷テストについて エルゴメーターによるランプ負荷法から,各パラメーターのピーク値の平均値は,HR:176.6bpm・VO<SUB>2</SUB>:35.6ml/kgであった.骨髄移植プロトコルによるトレッドミル負荷テストのピーク値の平均値は,HR:114.2bpm・VO2:19.7ml/kgであった.以上の結果から,骨髄移植患者用トレッドミル負荷テストは,最高運動負荷テストの約60%程度の負荷強度であることがわかった.2.骨髄移植患者の持久力について 移植前では,負荷テストの全ステージを全症例がクリアした.移植後は,全ステージを4名がクリアし,6名が途中棄権した.移植前後の負荷終了直後のダブルプロダクト値に差はなかった.ステージ1から3までのHRとBorg値は,有意に移植後の方が高かった.[考察]骨髄移植患者用運動負荷プロトコルは,低強度で安全に施行できるものと考えられた.移植後の持久力低下は顕著であり,特に安静時よりHRの増加が全症例に認め,酸素運搬能や1回拍出量の低下が考えられた.移植前で全ステージをクリアし,移植後にクリア率が減少したことから,移植後の持久力評価として検出力も高いと考えられた.また,臨床上,具体的に歩行スピードを目安として指導できる利点が確認できた.
著者
渡邊 進
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.799-807, 2009-12-18 (Released:2010-01-01)
参考文献数
23
被引用文献数
5 7

Currently, there are more than 53,000 beds in kaifukuki rehabilitation wards throughout Japan. The development of kaifukuki rehabilitation wards is proceeding smoothly in terms of quantity. It is suggested that, with this development, the activities of daily living of patients will significantly improve, leading to an increase in the likelihood of patients returning home when a large unit of daily rehabilitation training is provided via one of these kaifukuki rehabilitation wards. The tasks remaining to be completed for the optimal realization of the kaifukuki rehabilitation wards are to reduce the disparity in the number of beds among prefectures, to realize a mature team approach to the rehabilitation program, to encourage full-time ward physicians of the rehabilitation department to exercise leadership, to enhance subacute medical services, to enhance human resources such as nurses and rehabilitation specialists and to improve the education and training system for the staff. Other major tasks remaining are to strengthen the cooperation between kaifukuki rehabilitation wards and acute hospitals, by which such rehabilitation wards will become capable of actively accepting patients from an early stage, and to establish cooperation between kaifukuki rehabilitation wards and the home care system.
著者
岩下 功平 三宮 克彦 徳永 誠 渡邊 進 野口 大助 中薗 寿人 當利 賢一 當利 綾 大迫 健次 松本 彬 田中 昭成 中井 友里亜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bb1192, 2012

【はじめに】 当院における脳卒中片麻痺患者のクリティカルパスは、入院時のFunctional independence measure(以下FIM)を基に、A~Eの5コースに分類している。各コースはそれぞれアウトカム設定が異なり、A、B、Cコースでは退院時移動手段を歩行獲得に設定している。今回、その中でも歩行獲得困難なCコース(入院時FIM70~89点)に関して、退院時の身体機能から歩行獲得に影響を及ぼしている要因を分析したので報告する。【方法】 対象は、当院の回復期リハビリテーション病棟に入棟した初発の脳卒中片麻痺患者でCコースに該当する79例とした。退院時の実用移動手段が歩行であったものを歩行群、歩行以外であったものを非歩行群に分類した。調査項目は、年齢、性別、退院時Fugl-Meyer Physical Performance Scale(以下FM)とした。FMにおいては、股・膝・足関節の随意運動、下肢の協調性・スピード、バランス、感覚、関節可動域、疼痛の6項目のそれぞれの合計点を用いた。FMの評価尺度は、各小項目が3段階で点数化されており、点数が高いほど正常に近いことを意味する。各項目を歩行群と非歩行群の2群間でMann-WhitneyのU検定及びカイ二乗検定を用いて検討した(P<0.05)。次に歩行群と非歩行群の間で有意差のあった項目を独立変数とし、退院時実用歩行の可否を目的変数としてロジスティック回帰分析(Stepwise)を行った。【説明と同意】 当院の倫理委員会の規定に従って承認を得て実施した。【結果】 年齢、性別において、歩行群は、平均年齢66.5±14.2歳、男性45名女性14名、非歩行群は、平均年齢69.4±12.6歳、男性11名女性9名であり、2群間で有意差は認めなかった。FMは、股・膝・足関節の随意運動(歩行群中央27点最大32点最小11点、非歩行群中央17点最大28点最小8点)、下肢の協調性・スピード(歩行群中央6点最大6点最小2点、非歩行群中央4.5点最大6点最小2点)、バランス(歩行群中央12点最大14点最小6点、非歩行群中央8.5点最大11点最小4点)、感覚(歩行群中央20点最大24点最小8点、非歩行群中央13.5点最大24点最小2点)、関節可動域(歩行群中央44点最大44点最小20点、非歩行群中央41点最大44点最小30点)、疼痛(歩行群中央44点最大44点最小20点、非歩行群中央41.5点最大44点最小38点)の全ての項目で歩行群が有意に高かった(P<0.05)。ロジスティック回帰分析においては、FMバランス(p=0.0051、95%信頼区間1.31-3.82、オッズ比2.10)、感覚(p=0.0071、95%信頼区間1.10-1.63オッズ比1.30)が歩行獲得に有意な関連性があった。【考察】 脳卒中片麻痺患者の歩行獲得の要因は、年齢、性別、発症部位、発症から入院までの期間、麻痺側、在院日数、随意運動、感覚障害、高次脳機能障害、認知機能、バランス機能など多様な報告がある。しかし、歩行獲得に関連する諸因子を抽出することは、その病態の多様性から容易でない。本研究においては、入院時FIMが70~89点の脳卒中片麻痺患者に限定しており、歩行群と非歩行群の年齢、性別において有意差を認めず、影響はない。FMは、股・膝・足関節の随意運動、下肢の協調性・スピード、バランス、感覚、関節可動域、疼痛の全項目で有意に点数が高く、身体機能全般において歩行群の能力が高いことがわかった。また、ロジスティック回帰分析により、歩行獲得にはFMのバランス、感覚との関連が高く、歩行獲得に重要な要因であることが示唆された。望月やBohannonらは、脳卒中片麻痺患者の立位バランスが歩行能力に深く関与していると述べており、本研究においてもバランスが歩行獲得に関連する結果となった。しかし、バランス項目の詳細な内容やその他のバランス評価との関連性については言及できず、今後さらに検討していく必要があると考える。歩行獲得と感覚の関連性においては、諸家の意見は様々であった。臨床の現場においても重度の感覚障害患者は歩行獲得に難渋する印象にあるが、推測の域のため今後、詳細に検討していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 FMは標準化された脳卒中患者の身体機能評価として世界的に使用されており、その評価を用いて歩行獲得に関与する要因を検討することは重要と考える。また、今回の研究においては、入院時FIM70~89点で歩行予後が判断しにくい症例が、歩行獲得を目指す上でFMのバランスと感覚が1つの指標となる可能性がある。