著者
八並 光信 渡辺 進 上迫 道代 小宮山 一樹 高橋 友理子 石川 愛子 里宇 明元 森 毅彦 近藤 咲子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.267-272, 2005 (Released:2006-02-14)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究の目的は,無菌室という閉鎖環境で治療を要する造血幹細胞移植患者に対して,運動耐容能と移植前後の下肢伸展筋力(変化率)の関連性について検討することである。対象は,造血幹細胞移植を受け,移植前後で運動負荷テストを施行できた40名である。なお,無菌室内の訓練は,主に柔軟体操と立位での筋力強化を行った。移植前の運動負荷テストの完遂率は100%であったが,移植後は57.5%へ低下した。移植後の負荷テストの結果から,対象を完遂群と非完遂群に分け従属変数とし,年齢・性別・体重変化率・前処置のTBIの有無・無菌室滞在期間・下肢筋力変化率を独立変数として判別分析を行った。その結果,下肢伸展筋力の貢献度が最も大きかった。したがって,有酸素運動が困難な無菌室内において,下肢筋力を維持することによって,運動耐容能の低下を遅延させることが示唆された。
著者
八並 光信 上迫 道代 小宮山 一樹 正門 由久 里宇 明元 千野 直一 森 毅彦 近藤 咲子 渡邊 進
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.571, 2003

[目的]骨髄移植患者の持久力低下は,リハビリテーションを施行する上で重要な問題である.本研究は,骨髄移植患者用持久力テストの結果を報告する.本邦では,トレッドミルを用いたプロトコルがあるものの,移植前後の持久力低下に関する報告は見あたらない.そこで,我々も予備研究から,以前の報告と同様のプロトコルを検証し,骨髄移植患者の持久力に関する変化を測定したので報告する.[方法]1.運動負荷テストの検証 対象は,平均年齢25.8±3.4歳の健常成人10名(男性5名・女性5名)である.運動負荷テストは,リカベント式エルゴメーターで,毎分10wのランプ負荷法を用いて最高酸素摂取量を求めた.また,骨髄移植患者用の運動負荷プロトコル(トレッドミル歩行を時速2kmからスタートし,3分毎に時速のみ1kmづつ増加させ時速6kmで終了)も行い両者を比較した.2.骨髄移植患者の持久力低下について 対象は,平均年齢33.9±13.9歳の骨髄移植患者10名(男性7名・女性3名)である.移植前後に骨髄移植患者用の運動負荷プロトコルで,トレッドミル歩行を行った.心拍数は,各ステージ終了前の15秒間をテレメーター心電図で記録すると同時にBorgの自覚的運動強度を計測した.[結果]1.運動負荷テストについて エルゴメーターによるランプ負荷法から,各パラメーターのピーク値の平均値は,HR:176.6bpm・VO<SUB>2</SUB>:35.6ml/kgであった.骨髄移植プロトコルによるトレッドミル負荷テストのピーク値の平均値は,HR:114.2bpm・VO2:19.7ml/kgであった.以上の結果から,骨髄移植患者用トレッドミル負荷テストは,最高運動負荷テストの約60%程度の負荷強度であることがわかった.2.骨髄移植患者の持久力について 移植前では,負荷テストの全ステージを全症例がクリアした.移植後は,全ステージを4名がクリアし,6名が途中棄権した.移植前後の負荷終了直後のダブルプロダクト値に差はなかった.ステージ1から3までのHRとBorg値は,有意に移植後の方が高かった.[考察]骨髄移植患者用運動負荷プロトコルは,低強度で安全に施行できるものと考えられた.移植後の持久力低下は顕著であり,特に安静時よりHRの増加が全症例に認め,酸素運搬能や1回拍出量の低下が考えられた.移植前で全ステージをクリアし,移植後にクリア率が減少したことから,移植後の持久力評価として検出力も高いと考えられた.また,臨床上,具体的に歩行スピードを目安として指導できる利点が確認できた.
著者
"八並 光信 渡辺 進 上迫 道代 小宮山 一樹 高橋 友理子 石川 愛子 里宇 明元"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.227-235, 2005
被引用文献数
1

"本研究の目的は,造血幹細胞移植患者の無菌室治療期間中に生じる廃用症候群に対して,理学療法の頻度による効果の違いを検討することにある.対象は,2002年1月より2003年12月までの患者57名中,重度のGVHDおよび早期死亡を除いた34名であった.理学療法評価は,移植患者の握力・下肢伸展筋力・運動耐容能について無菌室入室前後(移植前後)で行った.理学療法は,理学療法士のデモンストレーションに従って,患者が自覚的運動強度で「きつい」と感じる強度で,ストレッチングおよび筋力増強訓練を15分から20分間行った.この他,理学療法士の非監視下で行う自主訓練は毎日行った.理学療法士のデモンストレーションに従って患者が行った理学療法頻度の違いにより,隔日群(16名)と毎日群(18名)の2群に分けた. 移植前後の筋力の変化率に対する,訓練頻度の違いによるに効果は認められなかった,運動耐容能の変化率に対する効果は,運動耐容時間を除き認められなかった.移植前後の筋力・運動耐容能の変化率を従属変数,性別・年齢・入院から移植までの期間・無菌室期間・訓練頻度を独立変数として重回帰分析を行った.筋力の変化率に関しては,無菌室滞在期間が寄与していた.しかし,運動耐容能の変化率は,この回帰モデルで説明できなかった. 我々は,今後も,移植治療中の廃用症候群を抑制できる理学療法システムについて検討していきたい."
著者
八並 光信 渡辺 進 上迫 道代 小宮山 一樹 高橋 友理子 石川 愛子 里宇 明元"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.227-235, 2005
被引用文献数
1

本研究の目的は,造血幹細胞移植患者の無菌室治療期間中に生じる廃用症候群に対して,理学療法の頻度による効果の違いを検討することにある.対象は,2002年1月より2003年12月までの患者57名中,重度のGVHDおよび早期死亡を除いた34名であった.理学療法評価は,移植患者の握力・下肢伸展筋力・運動耐容能について無菌室入室前後(移植前後)で行った.理学療法は,理学療法士のデモンストレーションに従って,患者が自覚的運動強度で「きつい」と感じる強度で,ストレッチングおよび筋力増強訓練を15分から20分間行った.この他,理学療法士の非監視下で行う自主訓練は毎日行った.理学療法士のデモンストレーションに従って患者が行った理学療法頻度の違いにより,隔日群(16名)と毎日群(18名)の2群に分けた. 移植前後の筋力の変化率に対する,訓練頻度の違いによるに効果は認められなかった,運動耐容能の変化率に対する効果は,運動耐容時間を除き認められなかった.移植前後の筋力・運動耐容能の変化率を従属変数,性別・年齢・入院から移植までの期間・無菌室期間・訓練頻度を独立変数として重回帰分析を行った.筋力の変化率に関しては,無菌室滞在期間が寄与していた.しかし,運動耐容能の変化率は,この回帰モデルで説明できなかった. 我々は,今後も,移植治療中の廃用症候群を抑制できる理学療法システムについて検討していきたい.