著者
渡部 圭一
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、歴史民俗学的な視点から「頭役帳」の特徴を明らかにすることで、これまで等閑視されてきた宮座組織における長期的な帳簿(記帳史料)に対する研究の進展を図った。
著者
渡部 圭一
出版者
日本生活学会
雑誌
生活学論叢 (ISSN:24332933)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.29-43, 2008-09-30 (Released:2021-03-29)

This paper presents a case study analyzing Miyaza rituals in Ohmi, and discusses the process in which "tennou-jinji (天王神事)", Shinto rituals encompassing a type of Miyaza, and taboos imposed on the "tounin (頭人)", the person in charge of Jinji, continued to exist during the postwar rapid economic growth period. During the post-war period, Jinji did not change in response to new village lifestyles, while ancient features and customs were maintained. For example, Jinji rules still prohibit eating meat, which may be an anachronistic idea for people with modern eating habits. Although it is a common perception that rules for Jinji were strict in the past, current rules have actually become more restrictive. From the perspective of those involved in Jinji over the years, it is evident that they have experienced the contradictions of both change and continuity. Previous studies have indirectly discussed the outside impact of the rapid economic growth. The aim of this paper, therefore, is to suggest "postwar history as experience" as a new standpoint for more close observation of the delicate balance between local continuity and typical social change.
著者
田中 知音 渡部 圭一 Chion TANAKA Keiichi WATANABE
雑誌
人間文化研究 = Journal of Human Cultural Studies
巻号頁・発行日
vol.50, pp.73-108, 2023-03-31

和文要約 白鬚神社(滋賀県高島市鵜川)の沖合に立つ鳥居(湖中大鳥居)は,もともと伝説的な存在であったものが昭和12年(1937)に建造され,現在では琵琶湖を代表する観光スポットとして注目を集めている。しかしながら,これまでの琵琶湖観光の歴史的研究では,この湖中大鳥居が何のために建造されたかについて論じられてこなかった。 本論文では,観光客の土産物として大量に制作された絵はがきに基づき,湖中大鳥居の建設の意義を明らかにすることを目的とする。まず白鬚神社を含む絵はがきセットの内容構成の類型とその歴史的背景を検討し,つぎに白鬚神社において被写体として選ばれる光景の特徴,およびそこでの湖中大鳥居の位置付けを分析した。 その結果,白鬚神社をめぐる⽛まなざし⽜に幾度かの変転があったことが明らかになった。白鬚神社は近世から広域の信仰圏を有する著名な神社であったが,近代になると,大正年間に琵琶湖を汽船で周遊する湖上遊覧が活発化したことで,神社の沖を通過する観光船から眺める神社というまったく新しい属性が生み出されたことが,湖中大鳥居を出現させた動機であった。 湖中大鳥居は,当初から⽛沖からの眺め⽜の一部であり,沖の観光船に対して見せるものとして造られたものであったと考えられる。言い換えると,湖中大鳥居が⽛沖からの眺め⽜というまなざしを生み出したというより,船上からのまなざしのなかに湖中大鳥居の美しい朱の彩りが埋め込まれたのである。
著者
石本 敏也 及川 高 渡部 圭一
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、民俗文化を当事者に種々の負担を強いるコストとして把握し、そのコストとモチベーションという観点から実態を捉え直すと共に、その調整過程を明らかにしようとするものである。対象地域は、東北、関東、中部、近畿と広く設定し、その事例も民俗文化財や世界遺産として登録された内容をも含み、民俗学・宗教学・歴史学の知見を生かし横断的な解明を試みる。継承された民俗文化の再評価については、文化資源や観光の文脈で注目されてきた視角であるが、それが時に当事者にとっては重い負担となることは従来重視されてきたとは言いがたい。本研究は、まずは民俗文化が当事者においてこうした重いコストであり得ることを改めて強調し、その上でコストを引き受けることの有意性を明らかにし、民俗文化の再評価における新たな知見を加えようとするものである。本年度は二回の打ち合わせ会議、研究会を開催し、設定した対象地域内における民俗文化の実態とそのコストについての意見交換を行うと共に、コストを核に据えた研究方法の深化と課題について討論した。また、メンバー各自の調査地域における調査研究を遂行し、関連する資料の発掘・蓄積を行うと共に、日本民俗学会における発表を通し個々の研究成果を公表した。加えて、年末に行った研究報告会において個々の成果を共有した。本年度の成果として、共著における民俗継承に関する研究論文を寄稿し、新たな知見を学会に提供することができた。