著者
北風 宏明 松下 慎 岡田 紘一 湊 のり子 森 直樹 吉岡 俊昭
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.204-209, 2017-10-20 (Released:2018-10-18)
参考文献数
15

66歳男性.約3カ月前から頻尿と下腹部違和感を自覚したため2015年7月に当科を受診した.膀胱鏡で左側壁~前壁に隆起性病変を認めたため経尿道的切除を施行した.病理結果は印環細胞癌であり精査の結果膀胱原発印環細胞癌,cT3N0M0と診断し膀胱全摘術の方針とした.しかし骨盤壁との癒着が強く膀胱全摘は断念,両側尿管皮膚瘻を造設した.右骨盤壁の生検で癌の浸潤を認めたためpT4N0M0と診断した.術後,2015年8月からTS-1+シスプラチン(CDDP)による化学療法を12コース,16カ月間施行した.投与開始後,腫瘍マーカーは8カ月間低下傾向にあったが,8カ月以降は経時的な上昇を認めた.CT・MRIでは膀胱内腫瘍の増大や遠隔転移・リンパ節転移を疑う所見を認めなかったため,画像上は16カ月間SDであった.化学療法施行中に大きな副作用は認めず,2017年1月現時点では明らかな再発なく経過している.
著者
高田 剛 湊 のり子 山口 唯一郎 古賀 実 菅尾 英木
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.356-361, 2012 (Released:2014-02-07)
参考文献数
21

尿管癌に対する外科的治療は一般的に腎尿管全摘が標準術式とされる.その中でlow stage・low gradeの尿管癌に限り内視鏡的切除が推奨され,EAUガイドライン2012 ver.1における推奨グレードはBである.今回われわれは硬性鏡を用いた経尿道的尿管腫瘍切除および尿管ステント留置術後ピラルビシン膀胱内注入併用療法を実施した低異型度非浸潤性尿管癌3例について報告する.ピラルビシン40 mg/回を週1回で6-8回注入した.3例のうち1例がelective caseであり2例がimperative caseであった.経尿道的尿管腫瘍切除における病理結果はいずれもNon-invasive papillary urothelial carcinoma, low grade(G1>G2),pTa-1であった.結果1例(症例3)において治療後23ヶ月目に膀胱再発を認めたが,全例治療後それぞれ43,32,28ヶ月を経過した現在患側尿管再発なく生存している.本治療法は比較的侵襲が低く,癌再発を予防し,さらには腎機能障害を有する患者に対する血液透析導入を回避可能とする治療法かもしれない.