著者
湯尾 明
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症 (ISSN:03894290)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.307-318, 1996-09-10 (Released:2010-04-12)
参考文献数
26

New method for isolation of human monocytes without adhesion process by using centrifugal elutriator has been recently established, and the effects of inflammatory cytokines such as TNF and MCAF on suspended monocytes were investigated. Both cytokines did not induce or only minimally induced superoxide release in human monocytes, but potently primed monocytes for enhanced release of superoxide upon stimulation with subsequent agonists, and these two cytokines primed monocytes in an additive manner. TNF induced minimal effects on intracellular signaling pathways, whereas MCAF rapidly induced intracellular signalings such as pH changes in a similar manner with FMLP.To clarify interaction between monocytes and endothelial cells during inflammatory responses, double chamber in vitro migration assay system was established. Both monocytes and endothelium produced several inflammatory cytokines such as TNF, IL 1, MCAF, and GM-CSF into the apical but not basilar side of the endothelial cell monolayer during monocyte adhesion to and transmigration through endothelial cells. Thus, monocyte chemoattractant such as MCAF released into the apical side could inhibit monocyte transendothelial migration, suggesting possible in vivo selfregulatory system of inflammation.In regard to the signal transduction in human monocytes, tyrosine kinases and their substrates are of particular importance, and several signaling molecules such as MAP kinase, STAT 5, and vav product have been identified. Although the signaling pathways utilized by soluble inflammatory stimuli such as cytokines and chemotactic factors have been substantially clarified, those utilized by adhesive stimuli are still largely unknown particularly in human phagocytes, and awaits much further investigation.
著者
湯尾 明
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.231-238, 1999-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
37

ヒトの好中球は外部からの刺激に反応して活性酸素を産生し放出するが, まず最初に産生される活性酸素はスーパー・オキシドである. この反応は, 好中球の細胞膜で行われ, 細胞内のNADPHから電子を受け取って細胞外の酸素に受け渡す電子伝達系であり, NADPHオキシダーゼとも呼ばれている. この反応にかかわる酵素は7種類の蛋白からなる複合体であり, その構成要素はそれぞれgp91Phox, p22Phox, Rap1A, p47Phox, p67Phox, p40Phox, Rac1/2と呼ばれている. これらの分子の間での結合様式などが詳細に研究されてきた. また, 細胞膜上の受容体からこれらの活性酸素産生系に至る細胞内刺激伝達においてはMAPキナーゼファミリーのp38が重要な役割を果たすと考えられている. 一方, 様々のサイトカインは好中球の活性酸素産生を直接惹起するよりもむしろ, 他の刺激物質による活性酸素産生を増強する作用(プライミング)を有し生理的にも重要であるが, その機序に関してはほとんど解明されておらず今後の重要な研究課題である.
著者
矢崎 義雄 栗原 裕基 小室 一成 湯尾 明 山崎 力 塩島 一朗 本田 浩章
出版者
国立国際医療センター(研究所)
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1997

心臓の発生に必須な転写因子Csxは、成人においても心臓に発現しており、その成人心における役割が注目されている。我々は、Csxの成人心における役割を知るために、Csxを過剰発現するトランスジェニックマウス(Csx Tg)とホメオドメインのロイシンをプロリンに変えドミナントネガティブとして働くCsx(LP)を過剰発現するトランスジェニックマウス(Csx LP Tg)を作成した。成熟Csx Tgの心臓においては心臓特異的な遺伝子であるANP、ミオシン軽鎖、CARPなどの発現が亢進しており、Csxが出生後の心臓においても心臓特異的遺伝子の発現に関与していることが示唆された。一方Csx LP Tg心は組織学的に心筋の変性を示していた。以上のことより、Csxは成人心において心臓に発現している遺伝子の発現を調節していると同時に、心筋細胞の保護に働いており、Csxの機能が低下することにより、心筋障害が生じることが示唆された。本研究によって、エンドセリン-1(et-1)によるG蛋白を介したシグナルが、神経堤細胞から血管平滑筋への分化機構に、bHLH型核転写因子であるdHAND,eHAND、ホメオボックス遺伝子Goosecoidの発現誘導を介して関与していることが明らかになった。その発現部位から、ET-1は上皮-間葉相互作用を介して働いていると考えられる。さらに、CATCH22の原因遺伝子の候補遺伝子として同定されている細胞内ユビキチン化関連蛋白UFD1Lとの間に、「ET-1→ET-A受容体→dHAND→UFD1」というシグナル伝達経路の存在が示唆された。一方、我々は、アドレノメデュリン(AM)のノックアウトマウスにより、AMもET-1同様、胎生期の血管発生および胎生期循環に関与していることを見出し、ET-1とAMと二つの血管内皮由来ペプチドが血管形成に重要な役割を果たすことを明らかにした。