- 著者
-
松山 さと子
- 出版者
- 国立国際医療センター(研究所)
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
ヒトiPS細胞は、京都大学由来株(253G1)、国立成育医療センター由来株(#40)を用いて検討した。分化誘導のプロトコールは、内胚葉分化、肝細胞初期分化、肝細胞成熟の3段階からなる分化誘導法で、一貫して単層平面培養で、無血清・無フィーダー法である。すなわち、動物由来成分の排除が達成され形態観察などが容易な優れた分化誘導系である。分化の過程で、様々の肝細胞マーカー(αフェトプロテイン、アルブミン、α-1アンチトリプシン(AAT)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、トリプトファン2,3ジオキシゲナーゼ(TDO2)、シトクロムP450(Cyp3A4))が培養期間依存的に遺伝子発現していることが確認できた。次に、分化の過程を蛋白レベルで検討した。その結果、αフェトプロテイン、アルブミン、肝酵素(AAT)はヒト肝(癌)細胞株(HepaRG、HepG2、HC)と同等に誘導された。遺伝子発現レベル、蛋白レベルでの肝細胞分化が確認されたので、最後に、成熟肝細胞機能の検討を行った。ICG取込能、グリコーゲン産生能、シトクロムC代謝活性のいずれの機能も分化細胞において十分に認められた。これらの3種類の成熟肝機能においても、ヒトiPS由来肝細胞はヒト肝(癌)細胞株(HepaRG、HepG2、HC)と同等、もしくはそれ以上であった。本報告での実績に基づいて、ヒトES細胞から肝細胞を分化誘導する研究計画を機関内倫理委員会にはかり、文部科学省に届け出て、ヒトES細胞を使用する研究も次年度に開始する予定である。