著者
湯浅 美千代 小川 妙子 石塚 敦子 鈴木 淳子 内村 順子 本田 淳子 本間 ヨシミ
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.73-81, 2006-03

高齢者専門急性期病棟における入院長期化の要因と退院支援の実際を,看護師の視点から明らかにし今後の課題を検討することを目的にフォーカス・グループ・インタビューを実施した。入院期間が長くなる要因として,【退院目標の提示困難】【退院先探索と調整のための時間消費】【入院を長期化させないアプローチ方法の未整備】【家族との退院をめぐるトラブル回避】【居心地のよい病院環境】【鈴木期ケースの退院支援対象からの除外】という6つのカテゴリーが,実施している退院支援の内容として,《退院目標の把握》《適切な退院先の早期探索》《チームアプローチによる適切な退院支援の確保・促進》《医師と患者・家族とのコミュニケーション促進》《病院への依存から自立への促し》という5つのカテゴリーがあげられた。高齢者専門急性期病棟の退院支援の課題として,(1)家族の思いの変化を予測した退院支援を考えていくこと,(2)現在行っている退院支援について看護師たちの経験を集約すること,(3)医療者のコミュニケーション能力を育成すること,(4)終末期にある高齢患者に対し,QOLも含めていかに対応していくかを考えていくこと,(5)病状予測や退院目標設定が困難な患者への退院支援について考えていくこと,が考えられた。
著者
小川 妙子 湯浅 美千代 石塚 敦子 鈴木 淳子 内村 順子 本田 淳子 本間 ヨシミ
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.66-72, 2006-03
被引用文献数
1

高齢者専門病院における長期入院患者の入院長期化の要因を患者,家族,医療,看護要因の4つの視点から事例分析し,看護職者の退院支援の課題を検討した。首都圏の高齢者専門病院の4つの一般病棟に21日以上入院し,研究協力に承諾した33名を対象とした。文献検討により35項目の調査票を自作し,約2ヵ月の調査期間に看護記録と診療記録から患者,家族,看護,医療に関する要因のデータを収集した。その結果,入院長期化の患者要因では,転倒リスクが高く介護認定を受けていない人が過半数であった。家族要因では,約半数が退院意向が不明であった。看護要因では,退院カンファレンスや家族指導の情報記載が少なかった。医療要因ではリハビリテーションの継続が最も多く,医師からの退院理由,時期,退院先の説明に関する記録は20%の事例に限定されていた。要因間の関連から検討した入院長期化のタイプは,【I.家族要因脆弱】【II.要因間調整円滑】【III.退院予測不明医療優先】【IV.医療・家族意向未調整】【V.療養環境退院阻害】の5つが明らかになった。看護職者は,患者の入院長期化の各要因の問題に応じて適切な退院支援をする必要があることが示唆された。
著者
松田 典子 湯浅 美千代 野口 美和子 Matsuda Noriko Yuasa Michiyo Noguchi Miwako マツダ ノリコ ユアサ ミチヨ ノグチ ミワコ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.16-22, 2002-12-30
被引用文献数
2

入院,入所している難聴高齢者の難聴に由来する思いとそれに影響を与えている要因を明らかにし,看護の課題を導くことを目的とし,様々なタイプの施設計8箇所から計42名の65歳以上の難聴者に面接と参加観察を行なった。対象者が表現した難聴に由来する思いについて繰り返し述べているものを「主題」とし,これに主に関連している「環境要因」「個人要因」を比較検討した。その結果,6つのグループが形成され,各グループの「主題」は,【寂しい,つらい】【聞き取れないのは相手や環境が悪い】【難聴の為に不当な対応を受けている】【相手に申し訳ない】【大事な話の時に困る】【難聴でも困らない】であった。「主題」に関連している「個人要因」は会話への価値観であった。さらに,その価値観からくる会話へのニードに対して「環境要因」がどのように満たしているか/いないのかという点で「主題」に影響を与えていた。入院,入所している難聴高齢者に対して,『会話に楽しみを感じているか』『必要な情報は得られているか』『人間関係はうまくいっているか』を把握する看護援助の必要性が示唆された。This study, the purpose of which is the clarification of the state of mind of hearing-impaired elderly patients in hospitals or long-term care settings and related factors in order to direct relevant nursing issues, was carried out by interview and participatory observation at 8 facilities of different types with 42 individuals over the age of 65. Reoccurrent comments by patients regarding the hearing-impaired state of mind were considered as "subjects", while directly related comments were comparatively reviewed as "environmental factors" and "personal factors". As a result, 6 "subject" groups were formed; [lonely, painful], [impaired hearing caused by averse conversation partners or environments], [unreasonable treatment received due to impaired hearing], [remorse for their treatment of conversation partners], [trouble in important conversations] and [no impaired hearing-related trouble]. "Personal factors" related to "subjects" consisted of values related to conversations. Additionally, satisfaction - or the lack thereof -of the need arising from the said value by "environmental factors" affected the original "subjects". The study indicates the need for nursing support extended to hearing-impaired elderly patients in facilities to be fully aware of "enjoyment of the conversation", "provision of sufficient information", and "adequate progress with human relationships".
著者
湯浅 美千代 野口 美和子 桑田 美代子 鈴木 智子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.9-16, 2003-03
被引用文献数
2

本研究の目的は,痴呆症状を有する患者が本来持っている能力を見出す方法を,実践者の経験から明らかにすることである.研究方法は,ある老人病院において痴呆患者のケアを提供している実践者5名(看護師3名を含む)へのインタビューであり,その内容を質的に分析した.その結果,以下の知見が得られた.1.ケアによって,痴呆患者が本来持っている能力の発揮を妨げる場合がある.2.痴呆患者が本来持っている能力を見出す方法として,『見方を変えること』『患者が安心できること』『患者の内面を理解し,その気持ちや思いに気づくこと』『患者のもつ可能性を探ること』があげられ,またその具体的な方法が得られた.3.痴呆患者が本来持っている能力を見出すために基盤となるケア姿勢が必要である.
著者
湯浅 美千代 小川 妙子 石塚 敦子 内村 順子 本田 淳子 武井 テル
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.50-57, 2007-03

本研究は,入院期間の短縮化が図られている高齢者専門病院の認知症専門病棟での入院長期化の要因と退院支援の内容を看護師の視点から明らかにすることである。老人性認知症疾患治療病棟2病棟及び身体合併症対応精神科病棟1病棟の師長,主任,リーダー業務を行うスタッフ計9名を3名3グループとしたグループインタビューを実施し,質的に分析した。インタビュー対象者が認識していた入院長期化の要因は,【治療に伴う退院目標の遷延】【退院先探索・決定,待機のための時間消費】【家族の退院受容困難】【入院を長期化させないアプローチの未整備】という4つのカテゴリーにまとめられた。また,インタビュー対象者からあげられた退院支援の内容は,【退院できる状態にむけての患者のケアと治療の調整】【退院を促進するための他職種との連携】【チームでのアプローチ】【家族との連携を通した退院準備】【看護職間の連携と教育】【退院を念頭にした調整】【家族のパワーを保つ支援】という7つのカテゴリーにまとめられた。今後の退院支援の課題として,患者自身へのアブローチの充実,家族に生じうる心情を予測した入院・治療計画,退院後の治療継続のシステム,認知症高齢者への治療選択を検討するシステムがあげられた。