- 著者
-
滝口 雄太
- 出版者
- 東洋大学大学院
- 雑誌
- 東洋大学大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
- 巻号頁・発行日
- no.55, pp.31-49, 2019-03
特殊詐欺における被害は非常に問題視されており,効果的な対策が早急に求められている。被害者の大半が高齢者であり,被害を食い止めていくためには,なぜ被害に遭ってしまうのかを正確に理解する必要がある。そこで,本研究では,高齢者を対象にして,高齢者を取り巻く環境,心理的要因,そして,詐欺対策として役立つ知識の獲得状況について探索的に把握し,被害の遭いやすさの見積もり(脆弱性の認知)への影響を明らかにすることを目的とした。高齢者施設に通う99名に質問紙調査を実施した。単純集計を行った結果,「オレオレ詐欺」は広く認知されていたが,他の詐欺や犯行手口はあまり知られていなかったことが示された。また,脆弱性の認知に関して,8割の高齢者が被害には遭わないだろうと考えていることも明らかになった。さらに,騙されてしまうことの要因のひとつとして,疑い深さを比較したところ,脆弱性の高い男性は他者に対する疑い深さが高かった。最後に,脆弱性の認知を従属変数とした重回帰分析を行った結果,女性の高齢者においてのみ,家族の有無と年齢が影響を及ぼしていた。すなわち,家族がいると,脆弱性が有意に低くなるが,年齢が高まると脆弱性は高くなる傾向が見られた。しかし,一般的疑わしさ尺度の下位因子はいずれも有意な影響を及ぼしてはいなかった。