著者
滝口 雄太
出版者
東洋大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.77-89, 2017

Levine & McCornack(1991)は、他者に対する疑惑について、状況的な要因と個人特性の要因に分類し、疑い深さの特性を測定するための尺度(Generalized CommunicativeSuspicion; GCS)を考案した。本研究の目的は、先行研究であるLevine & McCornackが考案したGCSの日本語版を作成し、その信頼性を検討することであった。日本の大学生102名を対象に質問紙調査を実施した結果から、先行研究と異なる因子構造が採用された。すなわち、1次元モデルを想定する先行研究と異なり、「正直-不正直」因子と「信用-不信用」因子の2つの因子からなる2次元モデルが確認された。最後に、本研究で得られた結果とアメリカでの研究知見との相違点について考察がなされ、新しい尺度の作成の検討に関して議論がなされた。Levine & McCornack (1991) categorized the suspicion towards others as the factors associated with particular situation or those associated with individual traits. Moreover, they developed the scale referred to as Generalized Communicative Suspicion (GCS) to measure the extent that he/she suspects others regardless of the any situations. The purpose of this study was to translate GCS scale into Japanese and assess the reliability of the produced scale. In present study, 102 undergraduate students responded this scale. The result of questionnaire survey showed the different factor structure from originated structure. While previous model premised one-dimensional model, this result was showed the two-dimensional model consisted of two factors on the suspicion that were "honestdishonest" factor and "trust-distrust" factor. Finally, the differences between American and Japanese the perception of suspicion are considered and the potential for new scale are discussed.
著者
滝口 雄太
出版者
東洋大学大学院
雑誌
東洋大学大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
巻号頁・発行日
no.55, pp.31-49, 2019-03

特殊詐欺における被害は非常に問題視されており,効果的な対策が早急に求められている。被害者の大半が高齢者であり,被害を食い止めていくためには,なぜ被害に遭ってしまうのかを正確に理解する必要がある。そこで,本研究では,高齢者を対象にして,高齢者を取り巻く環境,心理的要因,そして,詐欺対策として役立つ知識の獲得状況について探索的に把握し,被害の遭いやすさの見積もり(脆弱性の認知)への影響を明らかにすることを目的とした。高齢者施設に通う99名に質問紙調査を実施した。単純集計を行った結果,「オレオレ詐欺」は広く認知されていたが,他の詐欺や犯行手口はあまり知られていなかったことが示された。また,脆弱性の認知に関して,8割の高齢者が被害には遭わないだろうと考えていることも明らかになった。さらに,騙されてしまうことの要因のひとつとして,疑い深さを比較したところ,脆弱性の高い男性は他者に対する疑い深さが高かった。最後に,脆弱性の認知を従属変数とした重回帰分析を行った結果,女性の高齢者においてのみ,家族の有無と年齢が影響を及ぼしていた。すなわち,家族がいると,脆弱性が有意に低くなるが,年齢が高まると脆弱性は高くなる傾向が見られた。しかし,一般的疑わしさ尺度の下位因子はいずれも有意な影響を及ぼしてはいなかった。