著者
望月 優作 佐藤 洋 佐野 誠 早乙女 雅夫 漆田 毅 加藤 秀樹 林 秀晴 伊東 宏晃 金山 尚裕
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.1302-1306, 2013 (Released:2014-10-28)
参考文献数
9

37歳の女性. 第 2子を正常分娩後 4日目に意識を消失し, 救急外来を受診した. 血圧40/ -mmHg, 心拍数126/分, チアノーゼを認めショック状態であった. 心電図上は, 完全右脚ブロック, 左側胸部誘導中心のST上昇を示し, 胸部X線では肺水腫を認めた. 心エコー上は, 前壁中隔から側壁にかけて広範な低収縮であった. 緊急冠動脈造影にて左冠動脈主幹部より左前下行枝, 回旋枝にかけての解離を認めた. 主幹部から回旋枝にベアメタルステントを留置したが, 前下行枝の血流は確保されなかった. 緊急冠動脈バイパス術を予定したが, 血行動態の悪化により施行されなかった. 最大CK値は17,742 IU/Lと広範な梗塞であり, 大動脈内バルーンパンピング, カテコラミンの投与によりショックから離脱した. 第61病日に施行した冠動脈造影では, 左前下行枝は再開通し, 解離は自然修復されていた. 妊娠に関連した急性心筋梗塞は非常に稀であるが, 最近の妊婦の高齢化により増加している. 特に, 産褥期は冠動脈解離に注意する必要がある.