- 著者
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井口 貴文
井口 守丈
手塚 祐司
青野 佑哉
池田 周平
土井 康佑
安 珍守
石井 充
益永 信豊
小川 尚
阿部 充
赤尾 昌治
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.10, pp.1102-1107, 2018-10-15 (Released:2019-12-06)
- 参考文献数
- 10
先天性アンチトロンビンⅢ(AT-Ⅲ)欠損症は比較的稀な常染色体優性の遺伝性疾患である.AT-Ⅲ欠損症においては静脈血栓塞栓症(VTE)が多発することが知られている.VTEの治療には従来からヘパリンが使用されていたが,ヘパリンの抗凝固作用は血中のAT-Ⅲレベルに依存するため,AT-Ⅲ血栓症に伴うVTEに対しては,ヘパリンの単独治療では十分な抗凝固作用が期待できず,AT-Ⅲ製剤の補充が必要とされる.近年,VTEの治療に対しては,ヘパリンに代わって直接型経口抗凝固薬(DOAC)が有効であるとの報告が相次いでなされている.DOACはAT-Ⅲを介さずに抗凝固作用を発揮するため,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対しても効果があると考えられるが,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してDOACが有効であったとの報告は極めて限られている.今回われわれは,AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEの症例に初期からDOACの1つであるリバーロキサバン単剤で加療し,比較的速やかに症状の改善,D-dimerの低下,および画像上の血栓の消退が認められた症例を2例経験した.2例ともその後リバーロキサバンを継続することでVTEの再発なく経過している.AT-Ⅲ欠損症に伴うVTEに対してリバーロキサバンの有効性を示唆する貴重な症例であると考え,ここに報告する.