584 0 0 0 OA ウバザメの幼魚

著者
伊澤 邦彦 柴田 輝和
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.237-245, 1993-08-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
21

三重県和具のサワラ刺網で1977年5月4日, 特異な形状の吻を持っ全長2.6mの雌のウバザメ1頭が捕獲された.脊椎骨椎体に形成された石灰化輪紋の数から生後6ヵ月以内の, その年の1月頃に生まれた幼魚と推定され, 腹面に溝を備えた長く湾曲した吻はウバザメの幼魚形態と考えられた。この吻の幼魚形態は急速に変化して生後1年 (全長4m) でほぼ消失すると推定された.吻は神経頭蓋の3本の吻軟骨によって支持されており, 生後1年以内に起こる吻の急激な形態変化は吻軟骨の相対成長によって引き起こされると考えられた.吻の幼魚形態は胎児期から誕生後の幼魚期にかけての摂食に関わり, 母胎内では卵食性に関係して, 誕生後の若い幼魚にとっては不十分であろうと考えられる遊泳摂餌能力を補償する口域の拡大あるいは流体力学的な意味で摂食に関与するものと考えられる.
著者
陰山 敏昭 澤 邦彦 若尾 義人 武藤 眞 渡辺 俊文 宮田 雄吉 下山 和哲 鈴木 立雄 高橋 貢
出版者
日本獣医循環器学会
雑誌
動物の循環器
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.65-70, 1993

犬の僧帽弁閉鎖不全症 (MR) は小型犬に多く認められる傾向にある。そこで本邦で飼育頭数の多いマルチーズのMRの発生状況について疫学的検討を行った。対象は1986年1月より1991年1月の5年間に来院したマルチーズのうち, 生存例392例と死亡例68例の計460症例について検討を加えた。診断方法は聴診において僧帽弁口部に最強点を有する収縮期逆流性雑音の聴取された症例に対して, 単純X線検査あるいは断層心エコーでMRを診断した。その結果, 症例数に雌雄差は認められなかった。聴診上, 収縮期逆流性雑音が聴取された症例は全症例の23.5%であり, 心雑音症例の97%がMRと診断された。MR症例における雌雄比は1 : 1.4と雄に多く発生する傾向が認められた。年齢との関係に関しては, 心雑音が最初に指摘された年齢は5歳齢が最も早かったが, 最多聴取年齢は9歳であった。また, 死因に関しては, 心不全で死亡した割合は雄では54%, 雌では32%であり, 心不全で死亡する割合も雄の方が高い傾向が認められた。
著者
中野 大三郎 伊澤 邦彦
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.235-241, 1996-09-30
被引用文献数
4

三重県伊賀盆地の上野市大谷と大山田村甲野の2地点で1988年から1991年に, カワニナを採集し, 母貝の殻高と胚数の関係及び殻高25-30 mmの母貝を用い保育嚢にみられる胚の発育段階による胚構成の季節変化から生殖周期, 保育期間, 年産仔数を検討した。年による生殖周期の基本パターンには大きな相違は認められなかった。夏には発生初期の胚が保育嚢に多く認められ, 1腹の平均胚数は大谷では約1000個, 甲野では約700個と最大を示し, 夏以降秋まで産仔による減少を続ける。越冬した胚は春に産出し, この季節の胚数は最小となり, 大谷及び甲野ともに約250個であった。卵は4月下旬から10月中旬までの長期間にわたり保育嚢に継続して供給され, 4月下旬から8月下旬までに供給された卵は6月下旬から10月中旬に稚貝となり産出されると推定された。8月下旬以降の供給された卵は越冬し, 翌春の4月以降6月までに稚貝となり産出されると推定された。温暖期の4月から10月の胚の成長速度に相違がないと仮定した場合, 再生産力として1母貝当り大谷で1550個/年から2100個/年, 甲野で約1200個/年が見積られた。